中国の宗教を監視する組織や国内の牧師によると、北京や河南省など複数のキリスト教会で、十字架の破壊、聖書の焼却処分、教会の閉鎖が相次ぎ起きているという。信仰を強制的に放棄させる、共産党政権による「世俗化」運動が一層激しさを増している。
サンフランシスコ拠点の中国キリスト教団体「華人基督徒公義団契」ジョナサン・リュウ氏は9月10日、台湾メディア・台湾国際放送のインタビューに応え、中国国内では近年、7000もの十字架が取り下げられたと述べた。この数字は、国内の牧師による調査に基づいているという。
中国政府は9月10日、宗教統制をさらに強化するとのガイドラインを発表した。中国官製メディア・環球時報によると、ネット上での宗教宣伝は、現地の宗教担当局が許可した場合のみと限定した。また、政府政策や共産党の先導に反対するなど、「暴動に発展するような」オンラインでの宗教宣伝を禁じた。
共産党政権下の中国では、党以外の理念や信条を持つことが厳しく制限されている。キリスト教の礼拝は、政府が公認した教会でのみ許可される。また、こうした教会は党への忠誠を第一に掲げ、賛美歌よりも党歌の合唱、聖書朗読よりも党の規律を先に読み上げることを命じられている。
「共産党は信者たちを『ピンクのクリスチャン』に変えてしまった」とリュウ氏は表現する。ピンクは中国のスラングで、共産主義を象徴する「紅色」に染まり、党を啓蒙(けいもう)する思想や人物を比喩する。
中国人権団体チャイナ・エイドのボブ・フー氏は9月8日、AP通信の取材に対して、河南省中部と北京で当局による教会の閉鎖が相次ぎ、弾圧が「深刻にエスカレートしている」と述べた。
「国際社会は、宗教と信念の自由に対するこの露骨な弾圧に対して、警告しなければならない」と電子メールで回答した。
フー氏によると、中国のキリスト教信者は宗教活動を縮小させざるを得なくなっているという。中国のインターネットでは、聖書を燃やす映像や、キリスト教信仰を放棄するとの念書の束がうつる映像が出回っている。
クリスチャン・ポストによると、山東省のあるカトリック教会は9月11日、約70人もの警察官により取り壊された。この模様を撮影した信者らによる動画には、ブルドーザーで建物を破壊する様子、がれきと化した祭壇、腰掛、礼拝用の道具などが映っている。
当局によると、取り壊しの理由は「新たな住宅用地と鉄道駅の建設計画のため」だが、教会側は、敷地は半年前に政府の使用許可が下りていると主張している。
ワシントン拠点のキリスト教保護組織・国際クリスチャン・コンサーンは、中国の複数の地域で近年、商業用地や住宅用地の開発計画を名目に、教会の立つ土地の強制収用が行われていると指摘した。
北京最大の教会も閉鎖 牧師の個人財産も押収
北京で最大のキリスト教会「シオン教会」もまた閉鎖されている。同組織は北京に6つの教会を運営する。AP通信によると9月9日、地方公務員や警官ら約60人がバス、警察車両、消防車両と共に訪れ、教会の閉鎖を命じたという。
AP通信の電話取材に答えたシオン教会のエズラ・ジン・ミンリ牧師によると、教会は4月以降、当局の要求である施設の監視カメラ設置を拒んできた。以後、宗教施設として政府公認が下りないなどの圧力は強まり、閉鎖の危機にさらされてきたという。さらに当局は、教会の資産および牧師の個人資産の凍結を宣言した。
4月、中国政府は、すべてのインターネット商取引サイトで、聖書の販売を禁止した。「教会を封鎖しても、対立が激しくなるだけで、信仰は広がり続ける」とジン牧師はAP通信に述べた。
中国では、公認協会に集うことなく、隠された施設や個人宅に設置された、いわゆる「地下教会」「家庭教会」と呼ばれる場所に集う。こうした信者は中国国内に数百万人いるとされる。
国際人権監視NGOフリーダム・ハウスによる、中国の宗教統制に関するレポートによると、中国国内のプロテスタントは6000~8000万人、カトリックは1200万人で、非公認教会への参加者はそれぞれの半数を占める。
(編集・佐渡道世)
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