中国当局は知識人の言論統制を強めている。中国の著名法学者で、名門・清華大学の許章潤教授(57)はこのほど当局を批判したため、停職処分を受けた。また、四川省にある重慶師範大学は、学生からの密告を受けて、同大の唐雲副教授(56)について、授業中に「国家の名誉を害した言論があった」として、唐氏の懲戒処分を決めた。
米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)3月30日付によると、中国国内インターネットに、重慶師範大学の内部資料が投稿された。内部資料によると、同校は、唐雲副教授の2月25日の授業で「国家の名誉を害した」の発言が、「政治的規律に違反し、学校の教職員および学生に良くない影響を与えた」とし、3月20日付で教員資格の停止と降任処分を決定した。中国官製メディアの工人日報は、3月28日の関連報道で、事実であることを確認したという。
重慶師範大学が唐氏の懲戒処分を決定した後、中国ソーシャルメディアの微信では、唐氏が書き込んだとみられる文章が転載された。唐氏は、すべての学生が「イエスを裏切ったユダではない」と学生を慮(おもんばか)った。
四川省出身の作家で人権活動家の譚作人氏はVOAの取材に対して、中国の大学は学生に、教授らの言動を監視し密告するよう奨励していると批判し、「文化大革命の再来だ」と述べた。
唐雲副教授は、ここ数年、言論統制を強めた重慶師範大学で処分を受けた2人目の教職員だ。同校の対外経済貿易学院の譚松副教授は2017年7月、大学側に解職された。譚副教授は当時1950年代、四川省東部で行われた土地改革などについて調査していた。大学側は、副教授が同調査を通じて中国共産党政権の「偉大な」歴史を覆す可能性があると警戒した。
いっぽう、清華大学の許章潤教授は3月下旬、中国指導部を批判したため、大学側から授業や研究活動などすべての職務を禁じられたうえ、当局から調査を受けている。許教授は近年、インターネット上で評論記事を掲載し、講演を行い、中国共産党政権は「全体主義だ」「文化大革命を再開した」などと中国当局を非難した。
VOAの報道によると、中国当局は、改革派の知識人への締め付けを強めただけではなく、当局を支持する左派学者への言論統制をも強化している。江蘇省南京市の国家安全当局は3月21日、北京大学マルクス主義学院の元講師で、毛左(毛沢東思想を掲げる極左派)ウェブサイト「紅色参考」の編集者を務める柴暁明氏に対して、「国家政権転覆」の疑いがあるとして、監視を始めた。
また、過去2年間で、浙江伝媒学院の趙思運教授、貴州師範大学の楊紹政教授、北京建築大学の許伝青副教授、北京師範大学の史傑鵬副教授なども、授業中の発言、またはインターネット上での言論によって、中国当局から解雇や停職などの処分を言い渡された。
中国教育部(文部科学省に相当)の陳宝生部長は過去、教育システムは共産主義イデオロギーの最前線だと述べたことがある。
許章潤教授に対して、多くの知識人は実名で応援を送った。同じ清華大の勞東燕教授は、「次の被害者はあなたかもしれない」と許教授への応援を呼びかけた。許教授の友人で同大の郭於華教授は、「このまま共産党政権に順従していれば、亡国する」と危機感をあらわにした。
(翻訳編集・張哲)
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