印鉄鋼業界、中国製品輸入増を懸念しセーフガード発動を要請

2019/05/15
更新: 2019/05/15

[ニューデリー 14日 ロイター] – インドの鉄鋼業界はインド政府に対し、鉄鋼輸入製品に対し緊急輸入制限(セーフガード)として最大で25%の関税を発動するよう要請した。米中貿易摩擦の激化で米国が中国製の鉄鋼製品に追加関税をかけたため、中国製の安い鉄鋼製品がインド市場にあふれるとの懸念が強まったため。政府関係者3人と業界関係者4人が明らかにした。

JSWスチール、スチール・オーソリティー・オブ・インディア(SAIL)<SAIL.NS>、タタ・スチール<TISC.NS>、ジンダル・スチール・アンド・パワー(JSPL)<JSTL.NS>の鉄鋼4社は4月、政府関係者に会い、セーフガード発動を要請した。この4社の生産能力はインドの総鉄鋼生産量の45%強に当たる。会合ではクマル鉄鋼相が、インドの鉄鋼業界は世界的な過剰生産の脅威にさらされており、3─4年放置すれば状況を改善するのは難しくなるとして、驚異的な輸入への対策を早期に講じる必要があると強調した。

事情に詳しい政府筋は「中国は(鉄鋼で)過剰生産状態にあり、ベトナムやカンボジアなどの迂回ルートでインドに流れ込んでくるとの懸念がある」と指摘した。

インドは鉄鋼生産量で世界2位だが、今年3月末までの1年間では輸入超に転じた。高品質製品の生産ができず、より安価で輸出する中国や日本、韓国に顧客を奪われたためだ。

JSWスチールの共同マネジメントディレクター、セシャギリ・ラオ氏は「インド政府にとっては、できるだけ早く25%のセーフガードを発動するのが重要だ」と強調した。

鉄鋼省やSAIL、タタ、JSPLはいずれもロイターの取材要請に対応しなかった。

インド鉄鋼協会のアルナブ・クマル・ハズラ副事務局長は「行き場を失った鉄鋼製品がすでに流入している」と述べ、セーフガード発動を議論する十分な理由になると強調した。

インドは2015─17年にも鉄鋼製品に対しセーフガードを発動しており、日本が世界貿易機関(WTO)協定に違反する可能性があるとしてWTOに提訴していた。

Reuters