香港中文大学で警察が催涙弾2356発 狙いは「国際ネットハブ」との分析も

2019/11/13
更新: 2019/11/13

11月12日夜、香港警察機動隊は香港名門の中文大学に侵入し、2356発の催涙弾とゴム弾を学生たちに向けて発射した。現地報道によると、少なくとも100人が負傷した。専門家は、警察の目的は大学生の逮捕ではなく、同大学本館にある香港インターネット・エクスチェンジ(Hong Kong Internet eXchange、以下 HKIX)を掌握するためであり、香港のインターネットを遮断する狙いがあると推測する。

香港の警察は12日午前7時から、中文大学のキャンパスに通じる2号橋で、抗議者たちと対峙した。午後3時頃、校内に侵入しようとする警察を阻止するため、学生たちは運動用具などでバリケードを設置した。警察はゴム弾と催涙弾を放ち、学生たちは火炎瓶やブロック片を道路に投げた。

11月12日、香港中文大学に通じる2号橋で、バリケードを設置し、警察機動隊の進入を防ごうとする学生たち(GettyImages)

香港メディア・丘品新聞によると、警察は少なくとも12日夜に2356発の催涙弾を発射した。学生たちに加勢するため、大勢の市民がキャンパスへ水や物資を運び入れた。また警察車両のキャンパス進入を阻止するために、市民は自家用車をキャンパスを囲むように駐車した。

煙幕に包まれたキャンパスは、まるで紛争地帯のようだと多くのネットユーザーが書き込んだ。また、香港警察はなぜ、中文大学に侵入しようとするのか、多くの疑問を引き起こした。

台湾の李忠憲・成功大学教授は12日、SNSで、警察の攻撃目標はHKIXだと書き込んだ。2011年の中文大学の報告書によれば、香港のネット情報の99%以上を同センターで処理している。

李教授は「香港のインターネットが規制され、多くの情報が伝わらなくなれば情報戦争になる。誰がインターネットの権利を掌握することになるのか」と警告を発した。

大学本館には90年頃、香港国際ネットワーク交換センター(HKIX)が設られ、香港のインターネット拠点になった。ここでは、中国本土が情報封鎖しているグーグル(Google)やフェイスブック(Facebook)、ヤフー(Yahoo!)、マイクロソフト(Microsoft)など、200以上の国際的なインターネット企業がHKIXを利用して接続している。

公式情報によると、HKIXは商用サービスプロバイダ、研究、教育を含む国際ネットワークにサービスを提供している。アジア太平洋地域における最大級のインターネット・ハブの一つとして広く認識されているという。

中文大学の卒業生で香港の時事評論家・黃世澤氏は12日、「中文大学を守ろう!HKIXを守ろう!」と題する声明を発表した。黄氏は、HKIXは香港通信網の基幹システムであり、台湾の中華電信、日本のNTTやKDDI、マカオのiAdvantageのサブシステムを担うという。もし、香港当局が本館を占拠すれば、インターネットの完全な封鎖もありうるという。

このため黄氏は「ITに係わる人は、学生たちを守り、HKIXを守らなければならない」と広く訴えている。

11月11日以後、中国共産党の重要会議である第19期中央委員会第4回全体会議(4中全会)の議論を受け、香港政府は民主派の抗議者に対する鎮圧の強硬レベルを上げた。以後、丸腰の青年に対して近距離で発砲して重傷を負わせたり、裁判所の令状なくショッピングモール、キリスト教会、大学敷地内などに進入して、民主派の市民を逮捕している。6月の中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案反対デモに端を発する民主派運動で、警察は約3000人の市民を逮捕した。

香港政府および警察による、市民に対する横暴な振る舞いに、国際的な批判の声が上がっている。米議会テッド・クルーズ議員は12日、「香港の警察による平和抗議者への暴力行為は恥ずべきことだ。私は、暴政に反対し、自由を支持する人々を続けて支援する」と書いた。

英上院議員はケンブリッジ大学ウルフソン・カレッジ(Wolfson College)に対して、林鄭月娥・行政長官の名誉顧問の資格の停止を求める公開書簡を送った。議員たちは、林鄭長官が抗議者を「民衆の敵」と表現したことに対して、「無能で粗暴さの表れだ」と批判した。

中国本土で数年間、軟禁状態にあった後、支援者の助けにより米国へ亡命した盲目の人権弁護士・陳光誠氏は12日、SNSで、香港西湾河で交通警察が丸腰の青年を銃撃した事件について、オランダ・ハーグの国際司法裁判所へ申し立てて、香港政府と警察による戦争犯罪を問う意向であることを明らかにした。

(翻訳編集・佐渡道世)