中国の習近平国家主席がこのほど、香港の抗議者を一段と厳しく取り締まる姿勢を示した。これ以降、中国最高指導部の高官と中国軍の香港駐留部隊に動きが見られたほか、広東省広州市警察は17日、「対テロ演習」を実施した。評論家は、中国当局が香港市民への武力鎮圧に備えて準備を進めているとの見方を示した。
習主席は14日、訪問先のブラジルで香港市民の抗議デモを「暴力的犯罪行為」とし、「暴力と混乱の制止と秩序の回復が現在、最も差し迫った任務である」と香港当局の対応を評価した。
香港・マカオ政策を担当する中国共産党ナンバー7の韓正氏は15日、香港に近い広東省深セン市に入った。香港紙・明報によれば、党中央政治局常務委員兼国務院常務副首相の韓正氏は深セン市で、「香港での暴乱」をテーマにした重要会議を主催した。会議に、中国当局の公安部、国家安全部、統一戦線工作部の部長(大臣格)など重要閣僚が出席した。「デモ発生以来、韓氏が深セン入りしたのはこれで6回目」という。
情報筋は明報に対して、習主席が海外で国内問題を言及するのは極めて異例だと指摘した。「習氏は国家指導者として国際社会に、今後の香港問題の対応で『根回し』している」との見方を示した。
いっぽう、中国軍の香港駐留部隊が16日、デモ隊が残した障害物の撤去作業に「自発的に」参加した。
17日午前、中国広東省広州市警察は、「反テロ・社会維持対策のための演習」を実施した。警察の対テロチームなど、1000人以上の警官が参加した。同省深セン市の警察当局は8月6日、テロリストを取り締まる演習を行った。テロリスト役の警官は、黒服・マスク・ヘルメットなどを着用して香港デモ参加者に扮した。
時事評論家の李林一氏は、中国軍の駐留部隊が香港市内に現れたことや広州市警察の反テロ演習について、「中国当局が、香港政府に抗議者をさらに取り締まるように圧力をかけている」との見解を示した。「香港政府が対応できなければ、『中国がやる』と示唆したのではないか」
ただ同氏は、中国共産党政権が直ちに武力鎮圧に踏み切る可能性は低いと指摘した。
「1989年天安門事件をみると、人民日報が同年4月26日に『旗幟鮮明に動乱に反対せよ』という社説、いわゆる四・二六社説を発表して、6月に入ってから当局が学生への武力鎮圧を実行した」
李氏は、人民日報や国営新華社通信などの官製メディアの現在の論調は、「まだ四・二六社説ほど厳しいものではない。『暴力と混乱の制止と秩序の回復が最も差し迫った任務だ』にとどまっている」と述べた。
(記者・張頓、翻訳編集・張哲)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。