フィリピン国防総省は、国内で急増する中国のオンラインカジノ労働者の影響を調べているなか、数千人の中国軍兵士がフィリピンに潜入しているとの報告を受け、調査している。
フィリピン軍のフェリモン・サントス・ジュニア司令官は3月5日、記者向けの文書で、国防総省の情報調査員が複数の政府機関と協力して、中国軍の潜入任務に関する情報を確認していると述べた。
上院の国家防衛と安全保障委員会で、委員長を務めるパンフィロ・ラクソン上院議員は信頼できる情報筋からの話と前置きして、中国軍兵士2000~3000人が、フィリピンで「潜伏任務」にあたっていると述べた。この軍事上の任務は通常、侵攻する予定の地域で情報収集を行うために展開する前方作戦とされる。
ラクソン議員は、潜伏任務について、国防総省に調査するよう希望すると述べた。
フィリピン憲法によると、議会の承認を得なければ外国軍隊による国内活動は許可されない。フィリピンは、日本およびオーストラリアと軍事協定を結んでいる。フィリピン政府は2020年2月に米国との「訪問米軍に関する地位協定」の破棄を決めた。
フィリピン議会では、複数の上院議員が、フィリピンのオフショア・ゲーミング事業者(POGO)をめぐる違法行為の調査を開始した。フィリピン政府はゲーミング産業やカジノの振興を奨励するためPOGOに特別労働ビザを発行した。現在は、犯罪の温床になっているとして、規制傾向にある。
フィリピン政府の記録によると、約20万人の中国人がフィリピンで働いており、その大部分はPOGOや、中国人を対象としたその他のオンラインカジノに勤めている。議員たちは、ゲーミング業に関与が疑われる誘拐、人身売買、売春、現金の持ち込みなど、多数の違法行為を問題視している。
5日には、リチャード・ゴードン上院議員が、西マニラのパラニャーケ市で、中国のPOGO労働者の集団の不審な行動について住民が不満を訴える映像を公表した。住民たちは、中国系の新しい移民は射撃場を建設し、体格の良い若者が出入りしており、軍人ではないかと心配が広がってるという。
ゴードン議員は、不安を抱える住民のために、フィリピン軍副参謀長に対して、実態調査を求めた。
3月はじめ、警察はマカティ市で中国人を殺害した容疑で拘束した2人の中国人POGO労働者が、中国人民解放軍に所属していることを明らかにした。
フィリピンメディア「ラップラー」の取材に答えた匿名の軍関係者は、ラクソン上院議員の主張は考えにくいとはしながらも、目立たない規模で中国軍兵士が活動している可能性は否定できないとした。「恐らく何百人ほどの単位で、ビジネス分野やメディア関係、学術界、観光業のような合法的な手法を隠れ蓑にしているかもしれない」と語った。
フィリピン移民局によると、2019年12月~2020年2月までで、中国本土から約53万8000人がフィリピンに入国した。移民局職員は3月6日、上院委員会に出席し、POGO労働者として多数流入していると述べた。フィリピンの外国人労働者は、観光ビザで入国し、後にPOGO特別ビザなどの就労ビザに切り替えるという。
フィリピンの安全保障問題を伝える非政府組織(NGO)「フィリピン防衛フォーラム」は2019年9月、約2万人の中国人POGO労働者を抱えるオンラインギャンブル事業商業地区が、フィリピン海軍、司令部、空軍基地から約3キロの場所にあることは問題だと指摘した。同NGOは軍関係者の話として、スパイ目的の可能性もあることや、「テロ攻撃を仕掛けようとすれば、十分にその射程内だ」とのコメントを伝えている。
(翻訳編集・佐渡道世)
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