中共ウイルス(Covid-19)感染症による影響が続くなか、中国人民解放軍による南シナ海の軍事的影響力を拡張しようとする行動は続いている。米軍もまた、中国が軍事拠点化する南シナ海の諸島地域を航行しており、緊張が高まっている。
人民解放軍は3月10日、南シナ海で海軍と空軍の合同演習を行った。サウスチャイナ・モーニング・ポスト3月29日付は、解放日報の報道を引用して、この軍事演習は、水上艦艇の助けを借りて外国潜水艇を捜索し、敵機を領空外に追い出し、さらにはミサイルで撃墜して、中国軍艦への攻撃を阻止したという。
中国政府系メディア・環球時報は今回の演習について、この地域で航行する米軍への反応だと報じた。
いっぽう、同じ日に、日本の横須賀に司令部を置く米海軍第7艦隊も南シナ海で行動している。米海軍は、主力部隊である第15駆逐隊に配属されたバーク級誘導ミサイル駆逐艦USSマッキャンベルを南シナ海へ派遣し、中国が軍事基地化を強化している西沙諸島周辺を航行した。米海軍が自由航行のために南シナ海を通過したのは今年で2回目。
人民解放軍の報道官は12日、「中国領土に侵入したアメリカ海軍軍艦に対して、中国海軍航空機と軍艦を派遣し、駆逐した」と発表した。USSマッキャンベルを含む米軍全体の行動の追跡と監視を行ったという。
米海軍は19日、原子力空母セオドア・ルーズベルトと空母打撃群、および強襲揚陸艦アメリカの水陸両用即応群は、南シナ海での機動訓練の実施を公表した。これらはフィリピン東部海域へ移動し、演習プログラムのなかで、ミサイル駆逐艦バリーと別のミサイル巡洋艦シローがスタンダード2中距離ミサイルを発射した。
環球時報は、中国当局者の話として、米軍が南シナ海で軍事演習を続けるならば、艦艇に対して電磁パルス攻撃を行うことも辞さない、との威嚇の意味を込めた発言を伝えている。
電磁パルス攻撃とは、核爆発などにより瞬時に強力な電磁波を発生させ、電子機器に過負荷をかけ、誤作動させたり破壊したりするもの。国防総省は2017年作成の報告書で、中国軍は電磁パルス攻撃に特化した核弾頭を製造していると指摘しており、警戒している技術のひとつ。
太平洋地域での米国と中国の緊張は高まっている。米海軍によると2月17日、米国P-8Aポセイドン海洋哨戒機がグアムの西約611キロメートルの公海上で、中国海軍の駆逐艦からレーザー照射を受けたという。 当時、P-8Aは国際ルールに基づき国際空域を飛行していた。いっぽう、中国は、米国が国際法上の自由航行権を不当に行使したと主張している。
こうした米中両国による南シナ海地域での軍事プレゼンスの主張の継続について、台湾のアナリストは、米中は互いの腹を探っているが、どちらも実際の軍事衝突を引き起こしたくないので、双方とも慎重になっているとした。米軍が、ミサイル発射を南シナ海ではなくフィリピン海で行ったことをその証左としている。
中国の軍事アナリストは、米海軍が南シナ海地域で実弾射撃訓練を行うならば、人民解放軍もさらなる軍事演習を行う可能性があると見ている。
米国とフィリピンは3月27日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、5月に計画していた最大規模の合同軍事演習「バリカタン」を中止すると発表している。
(翻訳編集・佐渡道世)
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