世界最大のジャーナリスト団体の調査によると、中国共産党政権は対外プロパガンダを世界的に広めるために、「大規模かつ洗練された、長期的な」メディア浸透工作である大対外宣伝計画(大外宣、大プロパガンダ)を展開している。
ブリュッセル拠点の国際ジャーナリスト連盟(IFJ)は6月23日、58の国と地域にあるIFJ登録メディアを対象に、中国当局の影響力についてアンケート調査を行った。回答者の3分の2が、中国は自国のメディアで「目に見える存在感」を生み出していると回答した。
IFJ団体は、北京はまた、無力で抑圧政策を取っているラテンアメリカなどの発展途上国のジャーナリストをターゲットにする「明確な兆候」があると指摘する。
中国共産党のプロパガンダは、巨大経済圏構想「一帯一路」について好意的に報道されるように働きかけている。中国は海外メディアの特派員やジャーナリストに、国内名門大学で10カ月間の「ジャーナリズム研修」を提供してきた。北京市の高級住宅地に滞在させ、取材費をあてがうが、取材地域は当局が限定し、当局者の同行が必要となる。
アンケートによれば、現地視察は2週間から10カ月に及ぶことがある。
例えば、中国当局の人権侵害の疑惑を報じられている新疆ウイグル自治区では、中国共産党の主張を「上書き」するために、イスラム教国の中国大使館は、ジャーナリストのための取材旅行を企画し、新疆の経済的な成功を宣伝するように奨励した。ウイグル族ら少数民族のムスリム住民は、共産党政権によって激しい迫害を受けている。推定100万~200万人が強制収容所に送られ、信仰の放棄を強要されている。
IFJによると、オーストラリアでは2016年以降、有力メディアのジャーナリスト数十人が中国政府の費用で中国に渡航している。ミャンマーの場合は、回答した9人のジャーナリストはそれぞれ、少なくとも2回のスポンサー付き中国渡航に参加しており、最多では9回もこうした招待訪問を受け入れていた。
IFJは海外メディアを使った中国共産党のプロパガンダ戦略を「船を借りて大海原へ」と呼んでいる。海外メディアプラットフォームのなかで「偽装」して、自分たちの主張範囲を内部で拡大させている。
IFJのアンケート調査に回答者の半分は、記者たちが中国について「良い話」を書くように企画された中国旅行に参加したことがある。また、回答者の36%は、中国の事業体との協力協定に署名するよう求められていた。
中国はまた、海外の通信事業(メディア)企業を買収したり、海外で大規模な共同メディア・ベンチャーを設立したりすることで、宣伝インフラへの直接的な支配を進めている。
怪しげな協定
IFJの調査によると、アジア太平洋、アフリカ、欧州の地域の中で、少なくとも8カ国の記者組合が、中国の国営事業との間で何らかの協力覚書に署名している。これには多くの場合、秘密保持契約が含まれており、そのため透明性に欠けるとIFJは指摘する。協定の中には、中国政府が主催するイベントへの参加を組合に義務づけているものもある。
フィリピンでは、同国国営メディアを監督する大統領通信事務局の職員が、数カ月間の「研修」のために中国を訪れている。同局は2019年、中国の政府機関である国営ラジオテレビ管理局とMOU(基本合意書)契約を締結した。
このようなパートナーシップ契約は、記者たちの書き方にインパクトを与えている。回答したフィリピンのジャーナリストは、「大統領通信事務局のスタッフの今の書き方は、新華社や中国の国営メディアがどのように記事を書いているかを見本にしている」と述べ、「これはプロパガンダだと言える」と付け加えた。
IFJによると、政権はますます「船を買ったり、船を作ったり」して、国家が承認したコンテンツを海外メディアに拡散させている。中国の国営企業は近年、少なくとも9カ国でメディアを買収したり、合弁会社を設立したりしている。
例えば、中国の電子商取引大手アリババは、インドネシア語やヒンディー語、インドの15の地域言語でニュースを配信する「UCニュース」というアプリを所有している。アリババ創業者のジャック・マー氏は、香港に本社を置く英字新聞社サウスチャイナ・モーニング・ポストを買収するにあたり、「読者に中国を理解してもらうための公正な機会を提供したい」と述べた。
中国国営メディアのチャンネルが入った衛星テレビのパッケージがアフリカ全土に設置され、販売されており、国営プロパガンダの手が拡大している。
こうした影響力の拡大を懸念して、米トランプ政権は最近、中国国営メディアを外国代理人登録法(FARA)に基づき、外国政府の代理人と位置付け、活動の幅を抑制している。
(Eva Fu/翻訳編集・佐渡道世)
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