米、中国高官のビザ発給を規制 最高指導部を含む数百人が対象か

2020/06/30
更新: 2020/06/30

米国務省は6月26日、香港の高度な自治を脅かし、香港市民の人権を侵害する中国共産党政権の現職、または前職の高官(current and former CCP officials)に対して、ビザの発給を制限すると発表した。対象者は、中国当局の高官だけではなく、その親族も含まれる。

米国務院の声明は、「中国政府の高官」ではなく、「中国共産党の高官」と明白に指したのは異例だ。トランプ米政権が、香港国家安全維持法の法整備を急ぐ中国共産党政権に制裁を科す決心の強さを反映した。ただ、米国務省は、制裁対象者について、具体的に言及しなかった。

米政府の入国禁止対象にされる中国当局の高官は以下の各機関のトップとみる。

共産党中央香港マカオ工作協調小組 

共産党中央香港マカオ工作協調小組は、中国共産党の香港・マカオ政策を主管する最高機関だ。党と国務院(内閣に相当)の複数の部門のトップが同小組のメンバーを務めている。香港国家安全維持法の制定を主導した。

中国最高指導部、共産党中央政治局常務委員会の常務委員である韓正氏(党内序列7位、国務院副総理を兼任)は2018年4月以降、同小組の組長を務めている。

副組長には、趙克志氏(党中央委員会委員、党中央政法委員会副書記、国務委員兼公安省長官)がいるほか、夏宝龍氏(全国政治協商会議副主席、国務院香港マカオ弁公室主任)が常務副組長を担任している。

同小組の他のメンバー:

李希氏(党中央政治局委員、広東省党委員会書記)

楊潔篪氏(党中央政治局委員、党中央外事工作委員会弁公室主任)

尤権氏(党中央書記処書記、党中央統一戦線省長官)

王毅氏(党中央委員会委員、国務委員兼外相)

張暁明氏(党中央委員会委員、国務院香港マカオ弁公室副主任、広東省・香港・マカオ大湾区建設指導小組メンバー)

駱恵寧氏(党中央委員会委員、国務院香港マカオ弁公室副主任、中央政府駐香港連絡弁公室主任、広東省・香港・マカオ大湾区建設指導小組メンバー)

傅自応氏(党中央委員会補欠委員、国務院香港マカオ弁公室副主任、中央政府駐マカオ連絡弁公室主任、広東省・香港・マカオ大湾区建設指導小組メンバー)

馬興瑞氏(党中央委員会委員、広東省党委員会副書記兼省長)

一方、同小組の元組長には、曽慶紅・元国家副主席(2003年7月~07年10月まで)、習近平国家主席(2007年10月~12年11月まで)、張徳江・元全国人民代表大会常務委員会委員長(2012年11月~2018年4月まで)がいる。

共産党中央香港マカオ工作協調小組の傘下機関は、国務院香港マカオ弁公室である。夏宝龍氏は今年2月に、弁公室のトップに就任した。これまで、廖暉氏、王光亜氏、張暁明氏は同弁公室のトップを務めたことがある。

中央政府駐香港連絡弁公室

同弁公室は中国共産党の香港出先機関。昨年、香港市民に強く反対された逃亡者の中国本土への移送を可能にする「逃亡犯条例」改正案の法整備にも深く関わった。

弁公室の構成は、主任1人(駱恵寧氏)、副主任6人(陳冬氏、楊建平氏、仇鴻氏、盧新寧氏、譚鉄牛氏、何靖氏)、事務局長1人(文宏武氏)

また、弁公室には傘下22の部署、弁公庁と情報センターが設けられており、200人以上の職員がいる。弁公室のトップや各部署の責任者のほかに、2000年以降、弁公室の主任や副主任の職に就いた人も、米政府の制裁対象に認定される可能性がある。

全国人民代表大会香港基本法委員会

全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会の傘下部門、香港特別行政区基本法委員会は、香港国家安全維持法の草案を制定し、審議を担当している。香港の憲法にあたる基本法の下では、同委員会には香港国家安全維持法を制定する権限がない。

現在のメンバー12人(通称、第5期香港基本法委員会)の任期は2018年6月~2023年6月までとされている。主任は沈春耀氏、副主任は譚恵珠氏と張勇氏。委員は、劉乃強氏、陳冬氏、陳弘毅氏、武増市、莫樹聯氏、黄玉山氏、黄柳権氏、梁美芬氏と韓大元氏。

第4期香港基本法委員会(主任は李飛氏)は2016年、共産党の指示の下で、香港基本法第104条について積極的な解釈を行った。これを受けて、同年、香港立法会(議会)の就任宣誓の際、反体制の発言をした民主派議員2人の資格がはく奪された。

全人代常務委員会

全人代常務委員会は、香港国家安全維持法の審議と採択を担当している。委員長は、党内序列3位の栗戦書・党中央政治局常務委員会委員だ。

また、副委員長は14人、事務局長1人、委員が100人以上いるため、計175人が米政府のビザ制限対象になる可能性がある。

全国政治協商会議香港マカオ台湾華僑委員会

党内序列4位で全国政治協商会議(政協)主席を務める汪洋氏も、米政府の制裁リスクに載せられる可能性がある。政協の傘下組織、香港マカオ台湾華僑委員会も、香港国家安全維持法の導入を推し進めている。現在、政協の副主席24人のうち、前香港特別行政区長官の董建華氏と梁振英氏が含まれている。また、政協の中に、香港出身の委員が少なくとも18人いる。

香港マカオ台湾華僑委員会は、主任1人(朱小丹氏)、副主任11人(于迅氏ら)、委員52人から構成されている。

香港国家安全維持法の導入をめぐって、前述の政府機関が関わっているほかに、外交部(外務省)駐香港特派員公署も、香港に働きかけている。中国外務省は1997年に香港の駐在機関として、公署を設置した。

香港問題で、中国最高指導者、習近平党総書記兼国家主席より下の各レベルの官僚まで米政府の制裁対象になりうる。一部の高官の妻と子どもなどが米国に定住し、留学しているため、米国務省のビザ発給制限は中国当局、特に資産を米国に移転した高官に大打撃を与えるとみる。米政府に次ぎ、米の同盟国も同様の制裁を発動することを予想する。

(文・楊威、翻訳編集・張哲)