中国とのデカップリングは自由を守るため必須=豪国際戦略家

2020/07/14
更新: 2020/07/14

オーストラリアの国際戦略家は、近い将来、世界が冷戦時代のような自由主義圏と共産主義圏の2ブロックに分断される可能性が高いため、各国は中国への依存度を低減し、より強い対応力を構築する必要があると同国議会の質疑応答で述べた。

政策研究組織コグノセンティ(Cognoscenti Group)のアラン・デュポン(Alan Dupont)氏は7月2日、豪州議会の外務・防衛・貿易合同常任委員会で、米中間の経済的・政治的緊張の高まり(特に貿易戦争、台湾、南シナ海)について、世界経済の「デカップリング」を加速させ、2つの地政学的ブロックの形成を見ることになるだろうと述べている。

国際問題の専門家であるデュポン氏は、中国ブロックには、ロシア、イラン、北朝鮮、中央アジア、中東、アフリカ、南米などの地域の「権威主義的」なブロックを主導する可能性が高いと述べた。

もう一つの米国ブロックには、北米、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、アフリカの一部の民主主義国が含まれることになるだろう。デュポン氏は、オーストラリアは「確実に」米国に味方するだろうと指摘した。

デュポン氏は、貿易関係は「第二次冷戦、つまり現在進行中の冷戦においては流動的」だと述べた。貿易が各国政治ブロック内に限定されていた初代冷戦(1947-1991年)に比べれば、「分裂を超えた多くの動き」がある。

しかし、分裂が起これば、国が米中の各陣営を「またぐ」可能性は低く、いっぽうのブロックに依存することになると指摘している。

「分裂が定着し、硬直化すればするほど、各国が貿易の自由な選択ができなくなり、両陣営に留まり続けるだろう」とし、「どちらの陣営に所属するかは、各国が戦略的な決断をしなければならない時期が来るだろう」と述べた。

委員会では、中共ウイルス(新型コロナウイルス、COVID-19 )がオーストラリアの外交、防衛、貿易に与える影響のほか、サプライチェーンの脆弱性と国際貿易関係に関連する問題が議論された。

デュポン氏はオーストラリアに対し、サプライチェーンの脆弱性を調査するよう求めた。「私の見解では、さまざまな重要技術や商品を中国に依存していること自体が、安全保障上の大きな負債となっており、これを修正しなければならない」と述べた。

4月、スコット・モリソン首相が、中共ウイルスの由来の調査が必要と主張したのち、北京は脅迫的な貿易制裁を始めた。中国共産党政権は、オーストラリア産大麦の輸入に 80%相当の関税を課し、牛肉の輸入禁止、中国国内の発電所にオーストラリア産石炭を買わないように勧告するなどした。

モリソン首相は7月10日、中国共産党が香港の国家安全維持法を成立させたことを受けて、香港との容疑者引渡し条約の停止や香港市民へのオーストラリア滞在ビザの拡大を決定した。これに対して、中国外務省は「内政干渉」「すべての責任はオーストラリアが負うことになるだろう」とさらなる制裁措置をちらつかせた。

こうした背景から、オーストラリアの政治家たちはデカップリングの拡大と中国市場への依存度の低減を求めている。

デュポン氏はオーストラリア議会に提出した調査報告書で、中国共産党はすでにデカップリングの形を取ってきたと主張している。

提出文書には次のように記されている。「中国は長年にわたり、慎重に依存関係を回避し、保護的な貿易障壁を作り、レアアースや医薬品から先進的な製造業に至るまでの経済の戦略的分野を支配する態勢を整えることによって、デカップリングの形をとってきた」

デュポン氏は、中国共産党の行動に対して「十分に反発を受けていない」と述べ、事実上、中国共産党の行動を放置することを許していると述べた。

デュポン氏は、オーストラリアに対し、自国の「脆弱性」を真剣に見つめ、短期的・長期的にどのようにして迅速に是正できるかを検討するよう求めた。

「多額の投資が必要になる。つまり、ある程度の効率性を失うだろう。効率性の損失と柔軟な対応能力を得るため、一得一失しなければならない」とデュポン氏は述べた。

資料によると「ある程度の経済的分離は不可避だ。しかし、開かれた貿易システムと民主主義的な価値観、自由、制度の完全性を維持するためには、デカップリングが必要である」とした。

(ANIEL Y. TENG/翻訳編集・佐渡道世)