海外にある中国の友好協会、統一戦線と一致する動き=米シンクタンクCSBA

2020/08/05
更新: 2020/08/05

米シンクタンク・戦略予算評価センター(CSBA)はこのほど「欧州における中国の影響力を明らかにする」と題した報告書を発表し、その浸透工作を分析した。共同著者は在米の軍事専門家・吉原恒淑氏。報告によると、中国共産党は各地の「友好協会」を通じて欧州のエリート層に働きかけ、緊密な二国間関係を促してきたという。こうした団体は、表向きは教育や文化交流の促進を銘打っているが、実際は中国共産党の代理人として、ヨーロッパにおける党の影響力の拡大・深化を図っている。

中国の友好協会は口利き役

報告書によると、中国共産党の対外工作における前線部隊である「友好協会」は、欧州全域で中国の外交政策目標を推進するための口利きや仲介役を務めている。これらのグループは中国人のみならず、外国現地の政治・経済界の親中派エリート層で構成され、中国との緊密な関係を促進するために長い時間をかけて活動している。例えば、党の良い面を披露するため公的イベントを催したり、逆にネガティブな印象を払拭するための行動をとったりするなどして、党に有利なヨーロッパ政策を支援する。

報告の共同執筆者の吉原氏は、これらの「友好協会」の手口は共産党中央統一戦線工作部の活動と一致しているという。中国共産党の支配体制を強化し、中国の主権を誇示し、欧州での一帯一路構想の推進などを行う。

吉原氏は8月4日のオンラインセミナーで「友好協会のメンバーは中国共産党の高官と定期的に接触している」とし、また、親中派の現地有力者を集めるためのプラットフォームになっているという。「友好団体は、統一戦線部から工作の指導を受けているとの証拠もある」と説明した。

吉原氏は、彼らの活動は共産党のイデオロギーに沿っているが、ヨーロッパの自由と民主の価値および利益と対立していると指摘した。

報告書の共同執筆者であるジャック・ビアンキ氏はイタリア対中国友好協会を例に分析した。同協会の設立は中国との緊密な関係を望むのはイタリア市民の発案ではなく、「中国人民対外友好協会」が設立を後押ししていた。会長のイレーネ・ピベッティ元下院議員は、中国共産党の人権侵害疑惑を公然と擁護し、一帯一路を推奨してきた。

ビアンキ氏によれば、ピベッティ元議員は2018年、メディアのインタビューに対して、新疆ウイグル自治区における人道犯罪疑惑について「過激な措置をとることもテロ拡大の抑制にはプラスだ」と語ったという。また、「中国のアプローチは法と規制に基づくものであり、収容者の更生と教育を通じて過激主義の蔓延を防ぐことができる」と強調したという。

吉原氏は、中国共産党は欧米諸国の自由民主主義を悪用して「友好協会」などの多くのフロント組織を作り、これらの組織はまた自由と開放性を利用し、中国共産党の目的を達成していると指摘した。 例えば、言論の自由を踏み台にして、共産党のイデオロギーを推進してきた。これらの団体は欧州の価値観に反して、中国の人権侵害を擁護する立場を取っている。

吉原氏は、自由民主主義の「最も弱い点の一つは、市民社会の開放性によって、これらの団体の多くが中国共産党の見解を広く宣伝できるようになっていることだと思う」と述べた。

米マイク・ポンペオ国務長官は2月、ホワイトハウスの記者会見で、中国は米国の開放性を利用し、アメリカの自由を損ねようとしていると述べ、各州知事に警戒を促した。 ポンペオ長官は、全国知事協会と中国人民対外友好協会(CPAFFC)が共催した米中知事協力サミットを例に挙げて、CPAFFCは外国政府に影響を与えようとする中国共産党の機関であると述べた。

CSBAの報告書は、欧州と欧米全体が、一見無害に見える中国の友好協会について、改めて懸念するよう警鐘を鳴らす。また、欧米の政策立案者は、中国共産党が影響力を拡大させるための活動の目的、戦略、方法をよりよく理解し、その影響力を監視または制御するための適切な措置を講じるべきだと提言している。

(翻訳編集・佐渡道世)