一帯一路の融資約3兆円相当が再交渉中 新興国の債務危機が中国に降りかかる可能性

2020/12/17
更新: 2020/12/17

中国の広域経済圏構想「一帯一路」のインフラ計画のために融資を受けた12カ国は現在、中国と債務契約の再交渉をしている。これらの国が結んだ計18件の契約は総額280億ドル(約2兆8855億円)に及ぶ。専門家は、中国が債務を免除できなければ、新興国市場の債務危機の中心地になりかねないと指摘した。

一帯一路に参加するアフリカの新興国は、新型コロナウイルス(中共ウイルス)の世界的流行により長い不況に陥るとみられている。このため、中国の債権を返済することがますます難しくなっている。

米ニューヨーク拠点の経済政策コンサルタント会社、ロジウム・グループ(Rhodium Group)の調査によると、中国の貸し手はしばしば協調性を欠き、債務の再交渉のための救済条件が不透明なため、交渉妥結には数カ月に及ぶ可能性があるという。

ロジウムによると、アフリカでは4月、主要20カ国の経済大国グループが合意した債務支払猶予イニシアチブ(DSSI)の下で、十数カ国が中国と債務の支払いを凍結するための交渉を行っている。しかし、交渉の多くは非公開であるため、中国が債務再編でより良い条件を勝ち取るのではないか、と現地の債権者の不満が高まっているという。

ロジウムによれば、これまで中国は融資の再交渉の半数以上を支払い期限の延期で妥結してきた。このため、今回も中国の銀行は債務帳消しではなく、返済期限を遅らせたり、ローンの期限延長を提案するとみている。

英「フィナンシャル・タイムズ」の取材に答えたシンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)の上級研究員ジョナサン・ヒルマン(Jonathan Hillman)氏は、一帯一路関連のインフラ計画は双方向的で、中国も経済損失を被るリスクを抱えていると指摘する。

ヒルマン氏は、中国共産党が国内と世界にその勢力を拡大する目的でインフラ計画を広げたのは誤ったモデルだとした。「もし中国が債務免除や再交渉に応じなければ、中国は新興国市場の債務危機の中心地(the center of a debt crisis)になりかねない」という。

中国共産党は一帯一路の表向きの説明として、港湾や重要施設の建設を通じて、中国や東南アジア、南アジア、中東、北アフリカ、欧州各国との貿易ルートの橋渡しをすると宣伝していた。しかし、経済的には国内の過剰生産を緩和したり、中国の政治的影響力を拡大する狙いがある。

一帯一路の主要な融資元は中国国務院が直接管理している中国の国家開発銀行と輸出入銀行である。その海外の開発融資規模は、世界最大の多国間金融機関である世界銀行に匹敵する。

しかし、その規模は著しく鈍化している。海外の開発融資を調査するボストン大学の研究によると、両行の融資は、2016年に750億ドル(約7兆7296億円)のピークに達してから、2019年にはわずか40億ドル(約4123億円)にまで低下した。

中国は一帯一路を通じて、新興国の財政規模を度外視し、高金利で条件不透明な融資契約を結ばせている。借金が返済できなければ、天然資源か、港湾などの戦略インフラの権利を中国に明け渡すという手法だ。現地の政治家に贈賄するなど腐敗を横行させ、「債務の罠」と欧米メディアは呼んだ。

インド洋の要衝に位置するスリランカは2017年、中国からの巨額融資を返済できず、南部のハンバントタ港を中国国有企業・招商局港口に99年間貸し出すことを決めた。この例は「債務の罠」の典型例として知られている。

2020年10月11日、ラジャパクサ大統領は中国の楊潔チ政治局委員と会談し、一帯一路プロジェクトの協力強化に合意した。対中依存の加速を危惧して、アジアを歴訪したポンペオ米国務長官は10月28日、中国共産党がスリランカで「略奪者」のように活動していると批判した。

(翻訳編集・佐渡道世)