中国規制当局、米EV大手のテスラに聞き取り調査 市民「不公平な取り締まり」

2021/02/10
更新: 2021/02/10

中国の規制当局5省庁はこのほど、米電気自動車(EV)大手、テスラに対して共同で聞き取り調査を行い、「中国国内の法令を厳守し」、内部管理を強化するよう要求したことがわかった。同社は「政府の指導を受け入れる」とした。一方、中国市民から当局の調査は同社への嫌がらせだと指摘する声が上がっている。

中国国家市場監督管理総局は8日夜、ウェブサイト上でテスラへの調査を公表した。これによると、同局、共産党中央サイバーセキュリティ・情報化委員会弁公室、工業および情報化省など5つの省庁は、テスラのバッテリーパックが炎上した問題や内部ソフトウェアのアップデート(OTA)などに関して、テスラの北京支社と上海支社の責任者を呼び出し、聞き取り調査を行った。

1月19日、上海市の地下駐車場でテスラの「モデル3」が発火した。同社が発表した声明は、この火事による負傷者や死亡者がいなかったとした。また、同社は調査で、車両の底の部分が他の物体にぶつかったことが原因だとした。テスラは、炎上したモデル3は中国本土で製造されたものかについて言及しなかった。

また1月末、テスラのモデル3を購入した江西省南昌市の市民は、専用充電設備で充電した後、車が正常に起動できなくなったと訴えた。同社は、中国電力配送会社である国家電網の電流が強過ぎることが原因で、自動車自体の故障ではないと説明した。国家電網の南昌支社はテスラ側の説明を否定した。

中国メディアは、電力会社に責任を転嫁したとテスラを批判し、昨年、中国国内で同社の電気自動車の故障件数は少なくとも10件あると指摘した。国家市場監督管理総局は昨年10月23日の通知で、安全上の欠陥があるとして、テスラの北京支社はモデルSとモデルXの計2万9193台をリコールしたと明した。

中国当局の聞き取りについて、同社は「政府の指導を受け入れる」とした。

テスラは米中貿易戦がエスカレートする2019年に中国市場に進出し、数十億ドルを投じ上海で生産工場を設立した。同社は1月初め、昨年の納車台数が49万9550台で、目標の50万台をわずかに下回ったと公表した。

中国は世界最大のEV市場である。当局は過去十数年、EVとNEV(新エネルギー車)産業振興政策を次々と打ち出した。中国EV市場に詳しい専門家、朱玉龍氏が2018年に発表した分析記事では、17年までに、中央政府と地方政府がEV・NEVメーカーに支給した補助金規模は、1290億元(約2兆1000億円)に達した。近年、政府の補助金を不正受給するために、EV・NEVメーカーの粉飾決算や劣悪な品質を含めて様々な問題が発覚した。

中国人ネットユーザーの一部は当局のテスラに対する取り締まりについて、不公平だと指摘した。

「他のEVメーカーに聞き取りをしたのか?(テスラ車のように)発火したこともあった。これらのメーカーは責任転嫁していないかもしれないが、問題を全く解決していない」

「テスラの技術が先進的で、車の性能が良く、価格も高くない。国内のNEV車関連の既得権益集団がシェアを奪われたので、(当局が)いろんな理由を付けて難儀をかけていると思う。テスラの車に欠陥があったとしても、国内の偽物のNEV車と比べて品質は良い。政府は偽物のNEV車を作った会社の聞き取りはしたことがない」

(翻訳編集・張哲)