日米豪印戦略対話加盟国がサプライチェーンの回復力強化を推進

2021/04/15
更新: 2021/04/15

サプライチェーンの回復力の強化および重要な技術要素の中国依存の軽減に向けて、インド太平洋地域の提携諸国が協力を図っている。

2021年3月12日、通称「Quad(クアッド)」として知られる日米豪印戦略対話(4か国戦略対話)に参加するオーストラリア、インド、日本、米国は仮想形式で初の首脳会談を開催し、重要・新興技術などの分野における協力を目的として作業部会(WG)を設立すると発表した。首脳会談後に発表された共同声明によると、作業部会は各国の革新技術の開発の推進を焦点に当てて構成されることになる。

サプライチェーンの回復力に関しては、これ以前にも2つのイニシアチブがすでに発表されている。日豪印が2020年に開始した「サプライチェーン・レジリエンス・イニシアチブ(SCRI)」およびサプライチェーン回復力の強化を目的として2021年2月24日にジョー・バイデン米大統領が署名した大統領令である。

ロイター通信が報じたところでは、2020年9月、日豪印の3か国の経済関連省庁が「自由、公正、包括的、非差別的、透明、予測可能で安定した貿易と投資環境」の確立を目的としてサプライチェーン・レジリエンス・イニシアチブを立ち上げた。 新型コロナウイルス感染症パンデミックにより、サプライチェーンの脆弱性に対処する必要性が浮き彫りとなった。中国を含む複数諸国で国土封鎖が発生したことに伴い、医療機器から技術要素に至る複数の分野で生産が停止し、製品流通が寸断された。

ジャパンタイムズ紙が伝えたところでは、サプライチェーン・レジリエンス・イニシアチブの発表に伴い、日本政府は中国から日本または他地域への生産移管を支援する補助金を用意し、2020年10月には菅義偉政権が日本企業のサプライチェーンの東南アジアへの分散を後押しすると発表した。

2021年3月9日付けでインドのザ・デイリー・ガーディアン(The Daily Guardian)紙の「News Plus」セクションに掲載された貿易アナリストのラジェッシュ・メータ(Rajesh Mehta)とディクシャ・ミッタル(Diksha Mittal)共著の記事には、インドは同イニシアチブの枠組内で投資を誘致し、革新技術の製造拠点になることを目指している。

フォード・モーター(Ford Motor Company)社などの米国メーカーが半導体チップ不足に直面している状況を受け、国内の半導体業界に3兆7,000億円相当(370億米ドル)の支援を行う方針を明らかにした米国のバイデン大統領は、「安全で信頼性の高いサプライチェーンを確立する必要がある」と述べている。

この翌日、米国当局は台湾の半導体メーカーと会合し、両国の緊密な協力体制、並びに「米台貿易関係の重要性および世界のサプライチェーン確立における両国の重要な役割」について協議している。

電子機器製造に不可欠な希土類(レアアース)の主要供給国である中国政府は、その立場を利用して貿易相手国に圧力をかけてきた。たとえば、2010年、日本海域で不法漁業を営んでいた中国漁業者を拘束した日本に対し、中国は希土類の輸出を制限するという報復措置を取った。 ロンドンに所在するクリブストーン・ストラテジック・マクロ(Cribstone Strategic Macro)のマイケル・ハリス(Mike Harris)創設者はFORUMに対して、現在半導体不足に陥っているのは、諸国が重要な供給を中国に過度に依存してきたためであると説明している。

「米国は以前から、地政学的理由により中国依存を最小限に抑えるという目標を掲げていた」と説明した同創設者は、サプライチェーン多様化に向けて諸国が協力を図ることは理に適っていると付け加えている。 

(Indo-Pacific Defence Forum)