南米パラグアイのマリオ・アブド・ベニテス大統領は20日、インドから200万回分の中共ウイルス(新型コロナウイルス)ワクチンを購入したことを明らかにした。感染が拡大する同国に対して、中国は台湾との国交断絶の見返りにワクチンを提供すると迫っていた。大統領はいかなる脅迫も受け入れられないと表明した。
パンデミックの開始以降、パラグアイでは感染者25万5000人、死者5470人(4月22日現在)と報告されている。3月に入ってから毎日の新規感染者が、これまでの1000人前後から急増し、連日して2000人を超えている。感染者の増加は脆弱な医療システムを圧迫し、政府はワクチンの確保を急いでいる。
パラグアイ外相はこのほど、中国企業から中国製ワクチンの提供を条件に、中華民国(台湾)との国交断絶をほのめかしたことを明らかにした。「呼吸困難の苦しみに耐えなければならないなら、(同盟国の)兄弟のような友情は何の意味もない」と同盟国の米台はすぐに対処すべきだと要求した。
台湾は現在、ワクチンを国内向けに提供しており、輸出はしていない。
パラグアイは現在、台湾と唯一、国交のある南米国家だ。台湾は同国に対して半世紀にわたって、数千軒の住宅の建設、医療保健システムの向上、貧困層への奨学金の支給などを通じて支援を行ってきた。
近年、中国は米国の裏庭とされる中南米で外交攻勢を拡大している。エルサルバドル、パナマ、ドミニカ共和国は2017~18年にかけて、相次ぎ台湾と国交断絶し、中国と国交関係を結んだ。現在、台湾と国交関係があるのは15カ国となっている。
中国はワクチンの確保を急ぐパラグアイの窮地を国交樹立の契機だと捉えている。
在パラグアイの中国人企業家の唐凱千氏は、「国交関係がなくても、中国メーカーはワクチンを輸出してくれる」と述べた。「ただ、パラグアイ政府は第一歩を踏み出さなければならない」と自ら国交樹立の意思を中国政府に伝えるべきだと促した。
こうしたなか、パラグアイに本部を置く南米サッカー連盟は先日、ワクチンメーカーの中国科興(シノバック)からワクチン5万回分が寄付されたと発表した。
パラグアイの議会からも同盟関係の見直しが必要だとの声が上がっている。
バイデン政権はパラグアイの中国との接近に危機感を抱いている。ブリンケン国務長官は先月、ベニテス大統領との電話会談で、「引き続き台湾を含む同盟国と協力し、パンデミックに打ち勝ってほしい」と強くけん制した。
台湾の呉釗燮外相は22日、答弁で「中国製ワクチンはWHO(世界保健機関)の認証を受けていない」と指摘。また、「ある中国人は、アルゼンチン経由でパラグアイに中国製ワクチン1400万回分を提供すると約束したそうだ。しかし、アルゼンチンには中国が提供を約束した300万回分すら届いていない」と中国との約束が空約束になる恐れがあると警告した。
いっぽう、ベニテス大統領は台湾との外交関係を維持すべきだと考えている。台湾との国交樹立は1950年代、大統領の父親の尽力で実現された。
パラグアイは現在、台湾の協力を得て、インドからさらに10万回分を入手した。また、ワクチンの公平な配分を目指す国際的な枠組み「COVAX」からは4月末にワクチンを提供されるという。同大統領はワクチンの確保が順調に進んでいるとの考えを示した。
(翻訳編集・李沐恩)
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