21日に開かれた米韓首脳会談は、バイデン米大統領就任後、2人目となる対面での外国首脳会談となった。各国マスコミでは米中覇権争いが加熱している中、任期末に入った文在寅政権の対外政策は、従来の親中路線から脱却し、米寄りに切り替わる契機になるとの見方がある。
対中政策については、台湾問題に触れ、米国が進める中国企業排除の無線通信ネットワーク構築協力が盛り込まれた。対北朝鮮政策では、既存合意の実施で一致した。今回の米韓共同声明では2018年に締結した「板門店・シンガポール合意」のもと、朝鮮半島の非核化と平和定着を推進していくと明記している。
米側にとって、両合意はトランプ政権が成立させたものだ。バイデン米大統領は「シンガポール合意が北朝鮮に有利になっている」と否定的な見解を示してきた。トランプ政権は当時、熾烈さを増す米中競争のなか、韓国を米側に引き寄せるために、北朝鮮の非核化および関係改善のなかで、親北である文政権の要求を受け入れたとの解釈がある。
バイデン大統領は首脳会談後の記者会見で、シンガポール会談で米国側の実務協議代表団を率いた元国務次官補代行のソン・キム氏を対北朝鮮政策特別大使に任命と発表した。このため、文在寅政権はキム米大使を通じて、米側の姿勢を反映した対北朝鮮政策に積極的になるとみられている。
米韓は技術分野で協力強化
今回の米韓共同声明は初めて「台湾海峡における平和と安定維持の重要性」を明記し、包容的かつ自由で開かれたインド太平洋地域(FOIP)の維持について記した。台湾問題は「一つの中国」原則を主張する、中国共産党の最も敏感な事案だ。今年4月の日米首脳会談における共同声明でも、香港と新疆ウイグル自治区の人権弾圧や、台湾への圧力などを明示的に取り上げた。中国は「内政干渉」と強く反発した。
インド太平洋地域に関する記述も、海洋覇権を狙う中国を牽制するものとみられる。さらに、米韓は技術分野での協力強化も約束し、5G、6Gなど無線通信ネットワーク構造開発協力、オープン・ラン(Open RAN)技術、半導体およびEV電池分野でも協力することで合意した。特にオープン・ランは、華為技術による中国5Gが世界市場で優位に立つなか、米国が確率したい技術と考えられている。
米ヘリテージ財団のブルース・クリングナー先任研究員は今回を機に、米韓が共同価値を目標にし、合意に至った議題が多かった点を肯定的に評価した。いっぽう、対北朝鮮政策と地域安保問題では政策的な意見の食い違いを指摘。「文大統領は中国に対する立場で、菅義偉首相が日米首脳会談で設定した高い基準には及ばなかった」と述べた。
米ランド研究所のブルース・ベネット先任研究員は、中国をめぐる諸問題が米韓共同声明に記されたことについて、「韓国は確かに中国から遠ざかり、米国側に傾いている」と分析した。
(編集・潤水)
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