フィリピン独立記念日である12日、同国の複数の市民団体は千人超の支持者を集め、中国大使館前でデモ抗議を行った。「中国は出ていけ」「中国の傀儡政権を終わらせろ」などのスローガンを掲げ、今年3月から西フィリピン海に停泊している中国船の退去を求めた。
今年3月以来、南シナ海・南沙諸島の領有権問題をめぐり、フィリピンと中国の関係が緊張している。フィリピン政府は同国が領有権を主張するウィットサン礁(Whitsun Reef)周辺に集結した約220隻の中国漁船を、自国排他的経済水域( EEZ)から直ちに撤退させるよう要求している。
過去3カ月間、フィリピン当局は外交的な抗議活動を続けてきたが、5月12日時点でもなお、約287隻の中国海上民兵船が散在しているという。
千人以上のデモ参加者は「フィリピンは我々のものだ、中国は出ていけ!」と叫び、「打倒帝国主義」「中国出ていけ」「ドゥテルテ(政権)終われ」「中国の傀儡政権を終わらせろ」などのスローガンを掲げて抗議した。
反ドゥテルテ政党で構成される複数政党制の民主主義連立である「1Sambayan」の代表者で元フィリピン下院のネリ・コルメナレス(Neri Colmenares)議員は台湾の中央社に対して、「今日はフィリピンの独立記念日だが、皮肉なことに、実際に西フィリピン海やフィリピン経済、そして大統領までをも支配しているのは中国だ。このような状況下で、どうして独立していると言えるのか?」と訴えた。
同氏はまた、自分の率いる「1Sambayan」は野党陣営を団結させ大統領候補と副大統領候補を擁立し、来年の選挙でロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領の政治王朝を打ち破りたいと述べた。
「もし来年の選挙で別のドゥテルテ(現大統領の長女を指す)が勝利すれば、今後6年間、中国は西フィリピン海と私たちの政治、経済を占領し続けると多くの人が信じている」と付け加えた。
フィリピン憲法では、大統領の任期は6年で、再選はできない。現在、現大統領の長女であるサラ・ドゥテルテ(Sara Duterte)氏の支持率が最も高く、次期大統領の最有力候補となっている。
同じく抗議行動に参加したフィリピンの「ミルクティー同盟」の共同代表であるジノ(Gino)氏は、「我々はアジア全体(中国、香港、ミャンマー)が重大な人権侵害を受け、人々が生計や生命を失っているのを目の当たりにしてきた。今日ここにいるのは、西フィリピン海の主権を擁護すると同時に、アジアや世界中の権威主義に対抗するためでもある」と述べた。
西フィリピン海とは、南シナ海でフィリピンが主権を主張している部分で、その範囲はおよそフィリピンの200カイリ排他的経済水域内である。
フィリピンと中国の南シナ海をめぐる紛争に対し、ドゥテルテ大統領は先月のテレビ演説の中で、フィリピンの船は西フィリピン海で「1インチたりとも後退しない」と語っていた。しかし、以前は「マニラは北京にたくさんの感謝をしなければならない」などと矛盾する発言をしていた。
同大統領は5月、南シナ海の領有権を巡る中国の主張を否定した2016年の仲裁裁判所の判決について、「ただの紙切れにすぎない」と述べた。南シナ海問題を巡る中国との緊張緩和を狙ったとみられ、物議を醸した。
フィリピン独立記念日の前日、同国の元参謀総長や元高官らが共同声明を発した。フィリピン国民に向けて、同盟国と協力して中国の脅威に抵抗し、西フィリピン海でフィリピンの権利を守るよう呼びかけた。
元参謀総長のロドルフォ・ビアゾン氏は、「我々は日本やオーストラリアのような同盟国が必要だ」とし、マニラ当局は人々を混乱させるシグナルを発している。(中国の)さらなる挑発行為を招きかねない」と指摘した。
フィリピン情報通信技術省の元次官のエリセオ・リオ(Eliseo Rio)氏は退役将官で構成される国益擁護団体(ANI)を代表して、「西フィリピン海の豊富な資源はフィリピン経済に大いなる利益をもたらすが、中国は現在、我々からそれを奪い取っている」と述べた。
(大紀元日本ウェブ編集部)
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