【重大】中国大使館、日本の地方議員に圧力 内政干渉で「国外追放になりうる」=専門家

2021/07/16
更新: 2021/07/16

近年、日本国内では中国の人権侵害問題に対する関心が高まりを見せ、それを非難する意見書が複数の地方議会で採択されている。これについて、中国大使館は地方議会や議員に対して電話や文書で圧力をかけていることが、大紀元の調べでわかった。専門家は、外交官が地方議会の決定を覆すべく脅迫的な手段を取ることは内政干渉にあたり、国外追放処分の対象になりうるとの考えを示した。

埼玉県議会では今年の7月、対中人権問題非難の意見書が可決されると、議会事務局に「意見書は誰が作成したのか」「賛成討論した鈴木正人議員は何期か」と、中国大使館の参事官から高圧的な内容の電話がかかってきた。

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千葉市議会では令和元年12月、香港の人権状況を改善するよう求める決議案の採択が行われる直前に、中国大使館より電話があった。同市の桜井崇議員は、「明らかに恫喝だ。日本は民主主義国であり、中国大使館の対応はこっけいだ」と語った。

こうした地方議会の決定に対して、外交の代表機関である大使館から抗議があることは、国際法上どのような意味になるのか。

国際政治を専門とする福井大学・島田洋一教授は、「大使館員が単に『説明』するなら法に触れないかもしれない。しかし、議員の地元の企業に圧力を掛けるような話をしたり、地元の企業に対して、議員にプレッシャーを掛けて反中的言動をしないようにしろ、などと働きかければ、内政干渉だ。『好ましからざる人物』(ペルソナ・ノングラータ)として国外追放処分の対象になる」と大紀元の取材に答えた。

地方議員に対して中国外交官が地方議会に抗議を行なったのは、今回が初めてではない。前・鎌倉市議会議員で現在は神戸市会議員の上畠寛弘氏に対しては、過去2度、名指しで申し入れがあったという。

2015年、鎌倉市議会では法輪功やウイグル人に対する中国共産党政権の人権弾圧を非難する意見書、および台湾の国際民間航空組織(ICAO)の加盟に支援を求める意見書が可決した。これに対して、翌年、中国大使館参事官から議会に電話があった。

「議員は中国に来たことがあるのか、ないならば少数民族が幸せに生活している様子を見に、中国に来て欲しい」。訪中を促すものだった。さらに「第三者である鎌倉市議会から、台湾について言われる筋合いはない」とも述べたという。

当時鎌倉市議会で議長を務めていた中沢克之氏は大紀元の取材に対し、「(中国大使館から電話があった旨について)市の職員から報告があった。中国大使館に送りつけたのは鎌倉が初めてだったと思う」と話した。そのうえで、中沢氏は議会事務局に対し、中国大使館からの問い合わせに対応しないよう指示した。それ以降、中国大使館から電話がかかってくることはなかったという。

上畠氏は警察に届け出を出した。警察は「(誘われても)中国に行かないほうがいい」と助言した。

上畠氏に対する圧力は、その後、同氏が神戸市会議員になった後も起きた。2020年4月、神戸市議会が台湾の世界保健機関(WHO)の加盟を支持する意見書を可決した時、中国の大阪総領事館の副総領事から、神戸市市長室に対して電話があった。「(上畠議員の)ツイッターを見た。意見書は内政干渉であり、『一つの中国』原則に反する」との申し入れだった。

上畠議員は、中国が外交官を通じて一地方議会の意見書に抗議するとは「まさに大国とは程遠い、はりぼての国だということの最たる証拠」と述べた。議員は、「こちらには正義と自由がある。どのような脅迫を受けたとしても負けることはない」と語った。

静岡大学教授「明らかに内政干渉」

中国の在外公館によるこれらの動きについて、静岡大学の楊海英教授は、「明らかな内政干渉である」と断じた。

そして、日本の地方議会が中国国内の人権問題を取り上げることについて、楊教授は、人権問題も宗教問題も、国境を越えた普遍的な価値の問題であるため、日本の地方議会が中国の国内問題を議論することは内政干渉ではないとの見解を示した。

そのうえで、「(中国大使館は)1990年代後半は法輪功、そして今はウイグルやモンゴル、香港を支援しないように圧力をかけている。これはおかしい」と述べた。「中国共産党はいつも、外国による治外法権は植民地支配であると主張してきた。しかし自分たちでそれを行っているではないか」。

中国大使館の圧力について、外務省の対応を求める声もある。上畠議員は、「地方議会に対する不当な介入だ。外務省は情報共有を行うなどして、対応してほしい」と語った。

外務省は大紀元の取材に対して、個別の案件に関する回答は控えるとしながらも、「情報を踏まえて中国との関係にしっかり対処したい」と述べた。また、中国人権問題については、首相官邸や外務省、また国際的な会議の場でも繰り返し言明しており、「懸念すべき事案」と捉えていることを強調した。

(佐渡道世、王文亮)