元中国海軍幹部、台湾問題で習近平が最も恐れているのは「中国軍だ」

2021/07/28
更新: 2021/07/28

中国の習近平総書記が結党100年記念式典で「台湾統一」を宣言し、台湾海峡では軍事的緊張が高まっている。しかし、中国の軍事力は台湾をはるかに凌駕しているが、習近平氏は台湾への武力行使にまだ踏み込んでいない。米国に亡命した中国海軍司令部元参謀(中佐)の姚誠(ようせい)氏はこのほど、大紀元のインタビューに応じ、「習氏は、台湾はもちろん、米国や日本も恐れない。彼が恐れているのは中国軍だ」と述べた。

姚氏によると、習近平氏が権力を掌握した後、軍部の江沢民派勢力を排除した一方で、自分の地位を確保するために、それらのポストを自分の取り巻きで埋め尽くした。「軍隊を制御できなければ、政権が不安定になり、命の保障もないからだ」と同氏は語った。

「習氏は軍隊のことを心配している。彼が軍の主導権を握って以来、汚職撲滅の名で多くの将軍を逮捕したので、軍隊は彼に忠誠心を持っていない。習氏は、軍隊が台湾と戦うために武器を手に入れると、制御できなくなることを恐れている」

「習氏は今や党、政府、軍のすべての決定権を一手に握っているが、軍隊を実質的に支配するまでには至っていない」と語った。

姚氏によると、習氏が福建省に在任中、旧第31集団軍と良好な関係を築いていた。軍制改革後、旧第31集団軍は第73集団軍に改編された。習氏が今、中央軍事委員会で頼りにしているのは、この人たちである。しかし、海軍は今も江沢民元総書記の影響下にあり、習氏の掌中には収まっていないという。

姚氏は「習氏は海軍にメスを入れたいと思っても、手の施しようがないだろう。海軍の将官たちは、習氏の考えに賛同していない。これが、習氏が台湾を攻撃する決心がつかない最大の理由である。海軍は対台湾戦の主役だ」との認識を示した。

「将校たちは、習氏に公然と反抗する勇気がないだけで、実は中共の権力闘争の渦中に引き込まれている。習氏が最も恐れているのは、軍内部の反習勢力である」

太平洋における拡張ロードマップ

鄧小平政権時代、中国共産党(以下、中共)は太平洋進出について、「2010年に第一列島線を突破、2020年に第二列島線を突破、2030年に第三列島線を突破する」という3段階の戦略を立てた。

姚氏は大紀元に、「中共の海洋進出の動きは当初の予定より遅れているが、最終的には第三列島線を突破し、米国と太平洋の覇権を争い、アジア太平洋地域を支配するという方針は変わっていない」と述べた。

冷戦終結後、米国は中共などの共産主義勢力の拡大を防ぐために、「列島線封じ込め戦略」を打ち出した(スクリーンショット)

同氏によると、中共が精力的に海軍を発展させているのは、海洋進出戦略を実行するためである。中国海軍は現在、米国を上回る360隻以上の艦船を保有しているが、超大型艦の保有数では米海軍に及ばないという。

「そして、米軍は中共の企みを知っているので、第一列島線に中国軍を封じ込めるために力を尽くしている」

米国議会図書館(LC)の議会調査局(CRS)は、今年7月に中国海軍の近代化に関する調査結果を発表した。CRSは10年以上にわたり中国海軍の動きを調査しており、2019年の報告では、中国の海軍力が米国にとって冷戦終結後の初めての脅威だと警告した。

「三つの列島線」米国の対中封じ込め戦略

冷戦終結後、米国は中共をはじめとする共産主義勢力の脅威に対抗するため、東アジアと西太平洋において、いわゆる「列島線封じ込め戦略」を展開した。つまり、米国は太平洋上の多くの島や国に軍事基地を設置し、基地間につながりをもつことによって、中国軍に脅威を与えている。

第一列島線は、北はアリューシャン列島、日本列島、琉球列島から、中央は台湾島、南はフィリピン諸島まで伸びている。台湾島は、第一列島線の中央に位置する戦略的な島で、かつては「不沈空母」と呼ばれていた。

第二列島線は、北は日本の横須賀基地から、中央は米国のグアム基地、南はインドネシアとマレーシアにまで広がっている。

第三列島線は、真珠湾海軍基地をはじめとするハワイ諸島の米軍基地群を中心に構成されている。また、米インド太平洋軍(旧米太平洋軍)の本拠地であり、南には南半球のニュージーランドとオーストラリアがある。

1991年にソ連が崩壊後、第一列島線は米中対立の最前線となった。第二列島線は、第一列島線の供給基地である。第三列島線は、アジア太平洋地域の米軍の後方支援と、米本土防衛のための前哨基地としての役割を果たしている。

列島線めぐる日米中の暗闘

姚氏によると、米国は今、中国海軍がアジア太平洋地域にもたらす脅威を真剣に受け止め始めている。そして、中共は国内向けのプロパガンダで、その海洋活動が「第一列島線の封鎖を突破した」と叫んでいる。実際、自由社会は三つの列島線をめぐって水面下で中共と戦っているという。

台湾侵攻の主力とされる中国人民解放軍の第73集団軍は、7月9~10日にかけて台湾に面する福建省の沖合で、大規模な水陸両用の上陸作戦演習を行った。一方、米国、日本をはじめとする7カ国は、オーストラリア沖で軍事演習を行っていた。

姚氏によると、米中が開戦した場合、米軍は南シナ海で中共と交戦したほうが有利だと考えている。なぜなら、米空母が台湾や東シナ海などの中国沿岸部に向けて航行すると、中共による対艦ミサイル飽和攻撃の脅威にさらされるからである。したがって、中共が台湾攻撃しようとした場合、米国は第一列島線で本来の打撃能力を発揮できない可能性があるという。

「米国は第一列島線を完全に支配できていない今、中共を封じ込めるために日本の助けを借りたいと思っているかもしれない。第二と第三列島線は、米軍がまだ制御できる」と姚氏は言う。

「今、中共にとって最も緊急の打開策は、台湾を攻め落とし、米国の封鎖を破ることだ。一方、米国は、第一列島線の中心である台湾海峡の現状を維持したいと考えている」

姚氏はさらに、「台湾が陥落すれば、真っ先に矢面に立つのは日本だ。日本は今、積極的に関与し、米国と協力して台湾を守りたいと考えている」と語る。

米国の対台湾政策について、姚氏は「米国はこれまで、台湾に対し、自衛力を高めるために武器を売るだけで、中共の台湾侵攻に介入するかどうかは明確にしないという戦略的曖昧性政策をとってきた」「これは失策だ。米国は中共に、『台湾を攻撃するなら、我々はあなたを攻撃する』とはっきり言うべきだ」と指摘した。

(翻訳編集・王君宜)