海上における日英防衛関係の強化

2021/08/03
更新: 2021/08/03

英国空母「クイーン・エリザベス(HMS Queen Elizabeth)」を中核として複数の駆逐艦などで構成された「英国空母打撃群21(CSG21)」が、中国と日米同盟が影響力を争う海域を抜けて2021年9月に日本に寄港する。

英国は2021年7月に同空母打撃群の寄港後に英国の哨戒艦2隻をインド太平洋地域に恒久的に展開する方針を発表した。

たとえ強制手段に訴えてでも本土と統一する必要があると中国が主張する自治国家の台湾への脅迫行為を含め、ここ数ヵ月の間、地域の領土獲得に野心を燃やす中国に対して警戒を高めている日本と英国との安保関係の深化を象徴するように注目を集める同空母打撃群の日本寄港が確定した。

ベン・ウォレス(Ben Wallace)英国防相と岸信夫防衛相により防衛省で開催された「日英防衛相会談」後の共同記者会見で、ウォレス国防相は、「英国空母打撃群の日本初寄港の後、英国は年末に向けて哨戒艦2隻を同地域に恒久的に展開する方針である」と発表した。

現在のところ、東京に所在する在日英国大使館は、英国が展開する海軍艦船の事実上の母港となる港湾についての言及は避けている。

岸防衛相の発表よると、同空母打撃群の日本寄港の際にクイーン・エリザベス空母と他の駆逐艦などは、日本における複数の海上自衛隊基地と米国海軍基地に分散寄港することが決まっている。 長年にわたり米国との同盟関係を維持してきた日本は、米軍の船舶や航空機、そして数千人に上る海兵隊隊員を含め最大規模の米軍が駐屯している国である。

本格的な初航海でF-35Bステルス戦闘機を搭載したクイーン・エリザベス空母は、在日米海軍司令部が置かれている米海軍横須賀基地に寄港する。同基地は米軍が前方展開している唯一の米国空母「ロナルド・レーガン」の事実上の母港でもある。

クイーン・エリザベス空母には英国海軍の駆逐艦2隻、フリゲート2隻、支援艦2隻の他、米国海軍とオランダ海軍の艦船が同行している。

中国と東南アジア諸国数ヵ国が一部の領有権を争う南シナ海を経由して日本に向かう同空母打撃群は、インド、シンガポール、韓国にも寄港する予定である。

軍事司令官の代表団と共に訪日したウォレス国防相は、避難支援やテロ対策などの任務を専門とする英国海兵隊部隊「沿岸即応部隊」を最終的には展開する方針も明らかにした。

これはインド太平洋地域に対する英国の関与計画が拡大していることを示すもう1つの兆候である。 同国防相の発言によると、英国海軍最大の軍艦による日本寄港は一部に、日本と目標を共有する英国の「重心をインド太平洋地域に置く」という意図を顕著に示すものである。

同国防相は共同記者会見で、「日英は両国共に法治に基づく国際秩序を支持し、その推進に取り組んでいる」と述べている。 中国が南シナ海の紛争海域や日本が実効支配する尖閣諸島の領有権主張を高めていることで、日本もオーストラリア、フランス、東南アジア諸国などの他諸国との安保関係を拡大および深化する構えである。

インド太平洋地域で発生している共通の問題に取り組む上で英国は重要な提携国であると述べた岸防衛相は、「東シナ海と南シナ海における力を背景とした一方的な現状変更の試みに断固として対抗するという両国の共通の立場を確認した」と話している。

ウォレス国防相は「自国を脅かす敵対国から身を守ることが難しい諸国を防衛する」ことは、志を同じくする日英の義務であると述べている。 ウォレス国防相と岸防衛相の発表によると、エンジンシステムとサブシステムに焦点を当てることで、日本の次世代FX戦闘機開発協力に関する議論をより迅速に進めることでも両国は合意している。  

(Indo-Pacific Defence Forum)