中国、「反外国制裁法」香港導入に急ブレーキ 学者「外資撤退を懸念」

2021/08/21
更新: 2021/08/21

中国の立法機関である全国人民代表大会(全人代)常務委員会は20日、外国からの制裁に対抗する中国の「反外国制裁法」を香港にも適用する採決を見送った。中国当局は、経済的リスクを考慮し、緊急に採決を中止したとの見方が多い。

中国の国営メディアは17日、香港での「反外国制裁法」の実施について、20日の会議で審議すると発表した。

突然の法案棚上げに対し、会議に出席した香港全人代の譚耀宗副議長は、香港メディアに対し、「委員長会議では、当面、採決を行わず、関連事項の検討を続けることにした」と述べた。

学者「外資の撤退を恐れて」

中国の政治学者、陳道銀氏は、米政府系放送ラジオ・フリー・アジア(RFA)に対し、「常務委員会による突然の採決停止は異例のことだ。これは最高指導部の判断であり、中国の最近の経済状況との関連も考えられる」との見解を示した。

「突如の採決棚上げは、より切迫した状況を示している。中国当局が香港を完全に掌握するためには、法案の導入が政治的に急務である。しかし、客観的、経済的な観点からは、現時点では実現不可能だ。なぜなら、香港は国際金融センターとして、外国投資に脅威を与えてはいけないからだ」と陳氏は語った。

また、香港の時事評論家である劉紹鋭氏は、RFAに対し、「中国政府が最近導入したいくつかの規制強化策は、外国人投資家にとって懸念材料である。反外国制裁法の施行は、意図した抑止効果以上のダメージを与え、外国人投資家の大規模な撤退を招く可能性がある」と指摘した。

劉氏は「反外国制裁法が施行されれば、外国人投資家は中国市場かそれ以外の市場かの選択を迫られ、恐怖心がわくことになる。そのため、北京は現実的な利益を考慮し、当分の間、採決を保留した」と述べた。

香港の金融業界、反制裁法の導入に不安

米国をはじめとする欧米諸国は最近、香港やウイグル問題をめぐって、中国政府関係者に制裁を科している。その対抗措置として、中国当局は今年6月10日、「反外国制裁法」を成立させた。同法は、対中制裁の決定や実施に関与した個人や組織に対し、ビザ発給拒否や国外追放、中国国内の財産差し押さえなどの措置を規定している。

「一国二制度」の原則に基づき、中国本土の法律は香港では適用されないが、本土の法律は、香港の憲法に当たる基本法の付属文書3に記載されている場合、香港で実施されることがある。反外国制裁法が実施された場合、香港で事業を展開する国際金融機関は、米国と中国のどちらかを選択するよう迫られる可能性がある。

AFP通信は12日、香港の銀行業界関係者の話として、そういう選択に直面した場合、銀行は米国の制裁に従うだろうと報じた。それは、米ドルを使用できることは「銀行にとってあまりにも重要だから」という。

また、香港金融業従業員総連合会の郭嘉栄会長も、香港大紀元の番組「珍言真語」のインタビューの中で、外国の銀行だけでなく、香港の中国系銀行も米ドルを失うことを恐れて、米国の制裁に従わなければならないと述べた。

(文・趙鳳華/翻訳・王君宜)