中国はかねてアフガニスタンに関心を寄せている。「鉱物資源へのアクセス、(中国の)同盟国であるパキスタンがインドによる包囲の回避、そして中国自身に対するイスラム過激派の脅威の削減」が狙いであるという。ケネス・カズマン氏などの研究者は2017年、米連邦議会調査局で発表した論文で指摘している。
映画監督のブレント・E・ハフマン(Brent E. Huffman)氏は、タリバンが政権を握った今、中国共産党はアフガニスタンの資源への自由なアクセスを目指しているとみている。ハフマン氏は、カブール近郊の銅山の上にある5000年前の仏教遺跡を題材にしたドキュメンタリー『メス・アイナクを救え(Saving Mes Aynak)』を監督し、広く評価されている。
中国国有資源大手・中国冶金科工集団(MCC)は、2007年に世界有数のメス・アイナク鉱山の採掘権を1000億ドルで購入した。この鉱山は、タリバンの拠点に近く、紀元3〜7世紀に栄えた仏教都市が含まれるロガール州にある。
「過去、タリバンはメス・アイナクをロケット弾や地雷で攻撃したことがある。2018年、アフガニスタンの考古学者は車で地雷を踏み、死亡した事件が起きた」とハフマン氏は大紀元に語っている。
その遺跡で働くアフガニスタン人考古学者たちは、常にタリバンに脅かされていたという。このため、8月15日以降は命の危険を感じている。「中国はタリバンと提携して、環境、人権、文化遺産の保護に関する制限を無視し、メス・アイナク鉱山で採掘しようとしている」と同氏は言う。
ハフマン氏は、「中国がタリバンの保護下で銅山を手にすれば、貴重な世界遺産が破壊されることになる」と警告を発している。
アフガニスタンの鉱物資源の価値は、中国がサプライチェーンを支配している希土類鉱物を含めて1兆ドルと推定されている。
中国外交部の華春瑩・報道官は8月17日の記者会見で、中国共産党は 「アフガニスタンの主権と国内の全派閥の意思を十分に尊重することを基本に、タリバンとの接触と交流を維持し、アフガン問題の政治的解決を促進するために建設的な役割を果たす」と述べた。
中国共産党とタリバンの関係の未来
中国問題専門家で、インドに拠点を置くウサナス財団の上級研究員フランク・レーバーガー(Frank Lehberger)氏は、大紀元にメールで語ったところによると、タリバンと中国共産党の関係は「政略結婚」のようなものになるだろうと述べた。また、中国共産党はタリバンを緊密な戦略的パートナーシップとして描こうとしていると語った。
「中国共産党は一帯一路のために、比較的に安定なアフガニスタンを必要としている。タリバンが内戦を長引かせず、シーア派やトルクメニスタンの少数民族への虐殺行為を行わなければ、比較的安定させることができるだろう」、「(国内問題を悪化させれば)トルコやイランの武力介入を招くことになる」とレーバーガー氏は述べた。
「タリバンが拡張主義を取り、土地を奪ったり、中央アジアの近隣の親モスクワ政権(タジキスタン、ウズベキスタンなど)を不安定にさせようとしなければ……プーチンを刺激することも避けられる」と述べた。
さらに、いくつかの筋書きでは、タリバンは中国共産党の意向に合わせて屈服する可能性が高いと付け加えた。
「中国共産党の指導者が、アフガニスタン・タリバンの望む外貨をすぐに支払ったり、すべてのインフラ投資を提供している限り…そして、アフガニスタンから欧州への違法麻薬の輸出取引を妨害しない限り、タリバンは中国に対して『いい子』を演じているだろう」。
レーバーガー氏によれば、タリバンによる欧州への違法薬物の輸出は、金銭的な利益になるだけでなく、欧州の「異教徒」を弱体化させるのに役立つという。
この筋書きでは、タリバンは中国共産党が中国国内のイスラム教徒をどう扱うかを無視して、アフガニスタンの領土内や中国新疆ウイグル自治区に接する同国北東ワハーン回廊付近の国境に住むウイグル人やその他のイスラム教徒の分離独立派を追い払うことになる、とレーバーガー氏は言う。
「しかし、中国共産党はタリバンが期待している資金を時間内に提供しなかったり、中国がタリバンを喜ばせないようなことをすれば、タリバンは自分たちを養っている中国の手にすぐに噛みつくだろう」とレーバーガー氏は言う。
カリフォルニア州在住のベストセラー作家でイスラムの学者であるアフマド・ラシッド・サリム氏は、中国がタリバンと協力すると発表したことは、世界に警鐘を鳴らしていると述べた。
「中国は抑圧的な体制と人権侵害で知られている。特に、ウイグル人のイスラム教徒の強制収容、拷問、失踪のほか、ウイグル文化や遺産の抹殺に関わっている」と、サリム氏は大紀元に語った。
サリム氏によれば、タリバンによる支配体制が「中国企業による資源開発を認めている限り、タリバンは現地住民に何をしようと、支配がどれほど抑圧的であろうと、中国共産党は気にしないだろう」という。
執筆・Venus Upadhayaya
インドと南アジアの地政学を専門とするライター。情勢不安定なインドとパキスタンの国境などを報告。インドの主要メディアへの寄稿には約10年の経験がある。また、持続可能な開発、リーダーシップなどのテーマについても執筆している。
(翻訳編集・佐渡道世)
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