自民党総裁選の4候補は20日、自民党本部で、党青年局・女性局主催の公開討論会に臨んだ。国の主要課題のひとつである北朝鮮による拉致問題の解決について、各候補者は対策を語った。このうち3氏は、日朝首脳会談の必要性を説いた。事件発覚からすでに40年以上が経つ今日、横田めぐみさんの父で、拉致被害者家族連絡会の元代表・横田滋さんが昨年他界されるなど、時間的余裕はなく、一刻も早い解決が急がれる。
高市氏は拉致問題を「最重要課題の1つ」と述べた。家族の高齢化を挙げて、時間的な猶予はないことを強調した。そして、「一対一の対談の場を作りたい」「乗り込んででもしっかりと話してくる」と述べ、北朝鮮トップの金正恩委員長との会談の実現を模索する考えを示した。加えて、拉致問題に関して国際社会への啓発が重要だとも語り、国際チャンネルを持ち多言語放送を実施する日本放送協会(NHK)による積極的な発信が必要だと述べた。
野田氏は、拉致問題が解決の糸口を見つけられないのは、日本の北朝鮮に関する情報収集能力の不足にあると指摘。直近でも9月に北朝鮮が発射した巡航ミサイルの情報も把握まで時間がかかっていると問題点を並べた。ミサイル発射の報を受けての緊急会議で、日本が米国や韓国からの情報に頼っていることを知った野田氏は、情報収集などのインテリジェンス能力の強化も拉致の解決につながるのではないか、との考えを示した。
外相時代に北朝鮮外相と会話した経験のある河野氏は、拉致問題解決について「北朝鮮という極めて特異な政治体制の国なら、首脳会談が必要だ」と述べた。そして、会談を成立させるためには米国や中国、韓国、ロシアといった周辺諸国と意見交換を行い、各国で共通認識を持てる環境作りが必要だと述べた。
岸田氏は、日朝ストックホルム合意(※1)などの取り組みに関わった経験を述べ、「結果として十分な結果を出せておらず、大いに反省する」と語った。そのうえで、岸田氏も日朝首脳会談に持ち込む必要があると主張。バイデン米国新政権における北朝鮮政策との連携も考え、解決までのシナリオを描くべきだとした。また、時間との闘いであることを十分認識し、努力を続けると強調した。
(佐渡道世)
【用語解説】
(※1)日朝ストックホルム合意
2014年5月、日本と北朝鮮の政府間で行われた協議を踏まえ、拉致被害者を含む日本人に関する再調査を行うことで確認された合意。名称は開催地のストックホルムにちなむ。北朝鮮は、拉致問題は解決済みであるとの立場を改め、拉致特別調査委員会を設置すると約束。これを受け、日本は独自制裁を一部解除するとした。2016年に北朝鮮が核実験と長距離弾道ミサイルの発射を行うと、日本は制裁を復活。北朝鮮は一方的に特別調査委員会の解体を発表した。
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