台湾と中国のTPP加盟申請、それぞれの勝算は

2021/09/24
更新: 2021/09/24

台湾政府は22日、日本が参加する環太平洋連携協定(TPP)への加入を正式に申請したと発表した。これに先立ち、中国は16日に同協定への加盟を正式に申請したばかりだ。

台湾の蔡英文総統が2016年に就任して以来、台湾と中国の関係は冷え込み、中国は台湾への抑圧を強めてきた。

今回、中台双方がTPPへの加盟を申請したことで、加盟に向けた支持の獲得をめぐり、双方の競争が激しくなる可能性がある。

中国による厳重な包囲網、ほとんど「孤島」と化す台湾

長年にわたり、中国は自由貿易地域戦略を推進し、その名を借りて台湾を締め出してきた。台湾の二国間または多国間自由貿易協定(FTA)への参加を全力で阻止する中国の目的は、台湾当局に「92年コンセンサス(九二共識)」を認めさせることだ。

当然ながら、今回の台湾TPP加盟への申請に対しても「一つの中国」原則に基づき、「公的な性格を持つ協定や組織への台湾参加に断固反対する」との姿勢を示している。

中国から包囲網を敷かれる台湾の自由貿易パートナー国は非常に少ない。パナマ、グアテマラ、ニカラグア、エルサルバドル、ホンジュラス(これら5カ国は台湾の対外輸出の1%未満を占める)、そしてニュージーランドやシンガポールだけだ。

しかし、台湾に対する中国の経済上での影響力は大きい。

台湾の公式データによると、2020年の台湾の輸出は、43.9%を中国(香港を含む)が占めている。また、中国(香港を含む)からの輸入は台湾の総輸入額の22.6%を占めている。

中国からの経済統一戦線に対抗するため、李登輝元政権と蔡英文現政権は相次ぎ対策を打ち出してきたが、どれも大きな成果は見られなかった。

そのため、台湾は今回のCPTPP(TPP11協定)への参加を包囲網から抜け出す「決死の戦い」と見なしており、いささか悲壮ですらある。

中国のTPP加盟の勝算は?

中国の加入申請のメリットは2つある。

1つは、中国は世界第2位の経済大国、第2位の輸入国、最大の製造国、最大の商品貿易国などの地位を持ち、その上世界130カ国以上の国にとって最大の貿易相手国でもあるため、その経済的魅力は非常に大きい。

もう1つのメリットは、CPTPP加盟国11カ国のうち7カ国(ブルネイ、シンガポール、マレーシア、ベトナム、日本、オーストラリア、ニュージーランド)は地域的な包括的経済連携(RCEP)協定にも加盟しているため、中国と自由貿易協定(FTA)を結んでいる国は多い。

来年CPTPP委員会の議長国となるシンガポールは、すでに中国の参加に対する支持を表明している。

一方、デメリットも2つある。

1つは、CPTPPが目下最高水準のFTAであるため、加盟のハードルが非常に高いことだ。CPTPPが中国のために基準を下げる可能性は低く、中国がその基準に従って是正するとなれば、それは世界貿易機関(WTO)加盟時と同様の巨大なプロジェクトとなる。

そのうえ、出来もしない約束をするトリックはすでに看破されているため、同じトリックを使うのはもはや難しい。

もう1つのデメリットは、CPTPPへの加盟には全加盟国の同意が必要となるという点だ。カナダやオーストラリア、日本などの既存の加盟国と中国の関係は悪化しているため、中国が関係を緩和させようとすれば、その「戦狼外交」を引っ込ませなければならない。しかし、「新時代の到来」「強国になった」などと吹聴する中国にとっては、それは容易なことではない。

ブルームバーグは最近、中国のCPTPP参加に関する今後のシナリオとして、4つの可能性が想定できると分析した。

(1)CPTPP加盟国による中国加入の拒否
(2)加入プロセスが開始されても、2~3年で交渉が行き詰まる
(3)中国が基準を下げるよう他国を説得
(4)中国が(国内経済の)構造改革を行った後に加入

現状では、2番目のシナリオになる可能性が最も高いと考えられる。

台湾加盟の勝算は?

台湾のCPTPP加盟のメリットも主に2つある。

1つ目は、台湾は完全な市場経済と民主主義を実行している先進国であるため、CPTPPの高い水準のルールにも適合している点。

2つ目は、現在の国際環境が台湾にとって有利という点だ。

昨年12月、台湾外交部はCPTPPの11の加盟国と非公式な協議を行っていると明かした。各国は台湾の加盟の決心と手順を明確に理解し、加盟への態度はかなり前向きだったとしている。

特に、台湾の最先端の半導体チップ製造業は、世界でも絶対的な優位性を持っており、世界のサプライチェーンにおける台湾の戦略的地位が強調されている。

また、今年の議長国である日本をはじめとする欧米は台湾を支持し、中国に抵抗する姿勢を示している。

台湾にとって不利な点は、台湾国内の政治紛争である。

CPTPP加入にあたってはいくつかの譲歩(農業や自動車産業の関税引き下げ、日本の東京電力福島第一原発事故に伴う5県産の食品の受け入れなど)が必要となるため、政治的困難を克服しなければならない。

もう1つの不利な点は、中国からの干渉である。CPTPPの11の加盟国はいずれも中国と外交関係を樹立している。中国はこの政治的優位性と自国の経済上での強みを利用して台湾の加盟阻止に乗り出し、さらなる圧力をかけるだろう。

台湾加盟における有利・不利の条件を合わせて考えても、筆者は台湾の加盟の可能性は残されていると考えている。しかし、それを実現するには、台湾当局と国民が以下の方向で努力しなければならない。

1、国内が一致団結して共通の認識を高め、中国による分裂、扇動、嫌がらせなどに抵抗すること。

2、CPTPP加盟国とのコミュニケーションを強化し、共通の価値観に基づいて日本、オーストラリア、英国、米国、欧州などとさらなる協議を進めて国際情勢を追い風にしていくこと。

要するに、「天は自ら助くる者を助く」の一言に尽きる。

(翻訳・李凌)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。