パンドラ文書 中国当局、オフショア企業で海外の軍事技術取得か

2021/10/09
更新: 2021/10/09

国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した「パンドラ文書」は、中国当局と繋がりを持つ中国企業は、オフショア企業を介して、他国の軍事技術企業を密かに買収していると明らかにした。

パンドラ文書を確認した国際NPO団体「組織犯罪・汚職報道プロジェクト(OCCRP)」は5日、中国当局がウクライナの防衛関連企業に対して「略奪的な」買収を進めていた実態を報じた。記事は「この秘密の取引の背後には迷路のようなオフショア企業が存在する」と指摘し、米法律事務所「DLA Piper」のウクライナ支社も買収に関わったとした。

同記事によると、中国人富豪の王靖氏は英領バージン諸島に法人登録したSkyrizon Aircraft Holdings社と、キプロスに登録したReckonerInvestment社とArgioInvestment社のオフショア企業3社を通じて、ウクライナのモトール・シーチ(Motor Sich)社の株式の大半を保有する6社の買収を計画していた。

「この買収は、ウクライナの独占禁止法の関連審査を避けるために計画された」という。同国の法規では、特定の企業の株式25%以上を取得するには、当局の審査を受けることを定めている。

モトール・シーチ社は、ウクライナの航空用エンジンや産業用ガスタービンエンジンのメーカーで、同国の軍需企業でもある。

ウクライナ政府は2017年9月、国家安全保障上の理由で、王靖氏が率いる北京天驕航空産業投資有限公司(Skyrizon、以下はスカイリゾン)によるモトール・シーチ社の株式41%取得を阻止した。同国の裁判所は中国側に買収計画の凍結を命じた。

同国政府は今年3月、中国企業に買収されないようにモトール・シーチ社を国有化すると決定した。

また、米国のトランプ前政権は今年1月14日、中国軍とつながりがあるとして、スカイリゾン社を「軍事エンドユーザー・リスト(MEUリスト)」に追加し、米輸出品へのアクセスを制限するとした。同社は航空機エンジンなどの軍事製品の開発・生産が可能だという。

正体隠す

パンドラ文書の調査に参加した米メディア「ワイヤー・チャイナ(The Wire China)」は3日の報道で、パンドラ文書は、中国民間企業と国有企業が「変動持分事業体(VIE)」と呼ばれる仕組みを利用して、海外で融資、買収および技術移転などの活動を行っている実態を暴いたと示した。

記事によると、一部の専門家は、中国当局がオフショア金融センターでますます多くの会社を設立していることに強い懸念を示した。この動きは、中国側の海外の軍民両用技術を取得しようとする狙いを裏付けたという。

欧米諸国は中国側の買収案を国家安保上の脅威と見なして阻止しているが、「モトール・シーチ社のケースのように、オフショアのペーパー・カンパニーは中国側にとって便利なやり方である。中国当局はその正体を隠すことができる」とワイヤー・チャイナは指摘した。

米商務省の元当局者、ウィリアム・ラインシュ(William Reinsch)氏は、中国当局がこれまで長い間、オフショア企業を通して軍民両用技術を取得してきたのであれば、「これは大きな問題だ」とワイヤー・チャイナに語った。同氏は、米政府はこれらのオフショア企業の背後の所有者を調べる必要があると強調した。

銭湯オーナーから突如、富豪の仲間入りした王靖氏

中国国内でも近年、中国人富豪の王靖氏と同氏の人脈について様々な憶測が広がっている。

今年6月1日、同氏が率いる通信企業、信威科技集団股份有限公司(信威集団)は中国国内の株式市場で上場廃止となった。

同社は2016年に粉飾決算を行ったため、以後3年間、株式市場での取引を禁止された。19年7月、同社の株式の取引は再開されたが、40日間連続ストップ安となったことで、投資リスクのある株式という意味の「ST股」に指定された。

中国メディアは当時、信威集団は海外事業について嘘の報告を行い、政府機関と金融機関を騙して融資を受けただけでなく、個人投資家をも騙したと非難した。

中国メディア「券商中国」19年9月17日によれば、王靖氏は信威集団の株式約30%を中国国家開発銀行、国信証券、盛京銀行などの抵当に入れ、巨額な融資を受けた。

ポータルサイト「騰訊網」6月の報道によると、王靖氏は1990年代半ば、北京市で銭湯を経営していた。2011年、王氏は突然、信威集団の会長に就任した。その直後、同社はカンボジアでの投資計画を開始した。また、13年にクリミアの港の建設工事に投資し、15年にモトール・シーチ社の買収、16年にイスラエルの衛星企業の買収も計画するなど、積極的に投資を行った。

(翻訳編集・張哲)