中国政治 【十字路口】

「ピンクの歌」大ヒット…中国当局風刺ソング深読 コウモリ、ハクビシンも登場(1/3)

2021/10/24
更新: 2021/10/24

マレーシアの男性歌手、Namewee黄明志)の曲「ピンクの歌(英語:fragile、中国語:玻璃心)」は、わずか1週間で1300万回の再生を突破し、世界中に人気を博した。歌詞も映像も中国共産党政権を皮肉った内容となっている。過激な言葉を一切使わず、政権の横暴さを非難している。

「ピンクの歌」は、Nameweeとオーストラリアの女性歌手‧Kimberley Chen(陳芳語)のコラボレーションによるもの。プロモーションビデオ(PV)は、ピンクを基調としたPOPなデザインで、ひょうきんなパンダやクマの着ぐるみが登場する。

中国共産党に詳しい中央党校の元教授‧蔡霞氏も、ツイッターで「いいね!」した。台湾の駐米代表(大使に相当) である蕭美琴氏も、「中国では禁止されているものの、台湾のYouTube音楽チャートではトップになりました。斬新な歌詞ですね」とコメントしている。

PVの冒頭には、「ガラスみたいに壊れやすい心のピンクちゃんは鑑賞注意!」と但し書きされている。それほど、辛辣な意味が込められている。中国共産党を真っ向から非難したこの曲は、すぐさま中国の主要なオンラインプラットフォームから削除された。

大紀元のコメンテーター唐浩氏は自身の番組「十字路口」で、なぜこのPOPソングが大ヒットしたのか、どのように中国共産党を揶揄したのかについて解説した。

なぜ人気なのか

「ピンクの歌」はどうして人気を博しているのか。唐浩氏は、中国共産党に対する国内外の心情を代弁しているからだと指摘する。

中国共産党は最近、台湾への威嚇を強化している。1日最大56機の軍用機を送り込んで台湾の領空を乱したり、多くのインターネット工作員や小粉紅(しょうふんこう※)を動員して、インターネット上の台湾支持者を攻撃したりしている。

政権からは「台湾統一」が強調され、「祖国を裏切った者には良い結果はない」と脅迫している。これらは、台湾や海外の人々の中国共産党に対する憤りや不満を深めた。

「ピンクの歌」を手がけた歌手のNameweeはマレーシア出身だ。台湾に6年間留学し、その後、中国や香港で俳優としてのキャリアを積んだ。このため、台湾や中国、香港の社会的相違や、中国共産党政権の専制的な圧力について知っている。

女性ボーカルのKimberley Chenは、中国系オーストラリア人だ。中国と台湾に渡って歌手活動を行い、台北に定住している。

この2人の歌手は、中国共産党が台湾に与えている長年の脅威と嫌がらせ、横暴と迫害に直面したときの自由社会の人々の気持ちや中国共産党の弊害を、身をもって知っている。

また、この曲は中国共産党を暴露‧批判しているが、歌詞の中には罵詈雑言や不快な言葉は一つもない。多くの事実を並べて歌詞を作り、中国共産党の偽善や暴虐さをコミカルに揶揄している。

君は私が「君のものだ」

逃げるな「家に帰れ」

少しも欠けてはいけない

みんなが君を勝たせる「理不尽だよ」

この歌詞の背景は、中国共産党が主張する「祖先の残した領土は一寸たりとも失われてはならない」「中国は一寸たりとも欠けてはならない」という言葉を暗示している。ここは、中国共産党が台湾に対する中華民国の主権を一方的に否定し、台湾を強制的に併合しようとしていることを非難している。

君はピンク色した純粋な心を持ってる

子犬、猫、コウモリ、ハクビシンを好む

「コウモリ」や「ハクビシン」について、中国国内から世界に広がったウイルスに関連する動物だ。中国政府は、コウモリはウイルスの宿主だと説明している。ハクビシンは、2003年のSARS発生後に中国共産党が主張したウイルスの宿主である。

コウモリについては、武漢実験室の実験動物だったとされる。しかし、当局は、実験室からウイルスが流出した可能性を否定しており、動物たちが疫病流行の「スケープゴート」にされていることを揶揄している。

私のものを二度と盗まないで

跪けと言われても、ごめんなさい…私にはできない

「盗む」は、中国共産党による世界中から技術や知的財産を盗むことを皮肉っているとみられる。さらに「跪く」という言葉は、台湾を含む世界の芸能人らに、共産党の要求する立場を表明することを強要し続けていることへの非難と思われる。

(つづく)

用語解説

※小粉紅 中国で1990年代以降に生まれ、共産党のイデオロギーに染まる若い民族主義者のこと。共産党のスローガンを国内外に拡散している。小は若い、幼い、粉紅はピンクの意味。PVの中のピンク色は、小粉紅らの憤怒しやすい心情を揶揄している。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
唐浩
台湾の大手財経誌の研究員兼上級記者を経て、米国でテレビニュース番組プロデューサー、新聞社編集長などを歴任。現在は自身の動画番組「世界十字路口」「唐浩視界」で中国を含む国際時事を解説する。米政府系放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)、台湾の政経最前線などにも評論家として出演。古詩や唐詩を主に扱う詩人でもあり、詩集「唐浩詩集」を出版した。旅行が好きで、日本の京都や奈良も訪れる。 新興プラットフォーム「乾淨世界(Ganjing World)」個人ページに多数動画掲載。