日本をぐるりと航海する中露艦隊…前例のない行動に危機感示す専門家「日本は本気でやってくる相手に対処できず」

2021/10/24
更新: 2021/10/24

防衛省は23日、中国とロシアの海軍駆逐艦など計10隻が、鹿児島県・佐多岬と種子島間の大隅海峡を22日に通り、東シナ海に向かったと発表した。中露艦艇が同海峡を通過するのは初とのこと。前例のない行動が立て続けに起こるなか、専門家は安全保障能力をさらに強化する努力が必要だと提言している。

中露艦隊、九州海域通過し東シナ海へ

フリゲート艦やミサイル駆逐艦からなる10隻の中露艦隊は津軽海峡を18日に通過し、伊豆諸島を経由して日本の太平洋側を航行した。

中国のミサイル駆逐艦は23日午前10時ごろ、長崎県男女群島の南南東約130キロの海域で艦載ヘリコプターの発着艦を行なったため、航空自衛隊の戦闘機を緊急発進させた。いずれも海峡の狭い公海を通過しており、領海侵入はないという。

中露艦艇10隻は鹿児島県の大隅海峡を通過して東シナ海へ西進した(防衛省)

中国国防部およびロシア国防省は23日、中国軍とロシア軍が西太平洋で17日から23日まで、「合同パトロール」を実施したと発表した。

ロシア国防省は声明のなかで、パトロール任務について「ロシアと中国の国旗を掲げて両国の海洋経済活動を保護することだ」と説明した。また、「艦艇の一団は初めて津軽海峡を通過した」とし、航行距離は1700海里(約3150キロメートル)だったと明らかにした。

これに先立ち、中露海軍の10隻は今月14日から17日まで日本海で二国間演習を行なっている。対機雷作戦や、模擬敵艦艇に対する砲撃など、20種あまりの共同訓練を行なった。

日米の連携はいまだ限定的

中露艦隊が津軽海峡を初めて通過するなどの前例のない事態が発生するなか、専門家は、日本は周辺の脅威に対応しうる安全保障能力を一層強化すべきと指摘する。

日本戦略研究フォーラムの上級研究員であるグラント・ニューシャム氏は、大紀元英字版「The Epoch Times」の取材に対し、「自衛隊は本気でやってくる相手との戦争に必要な能力をまだ備えていない」と述べた。

訓練中の米海兵隊 (Photo by Ian Hitchcock/Getty Images)

ニューシャム氏はまた、共同作戦を指揮する日米合同司令部も、日本には設置されていないと指摘。日米の連携は海上自衛隊など一部に限定されており、地上部隊の相互運用能力は乏しいと評している。台湾で何かが起こった場合の共同作戦計画もないと付け加えた。

防衛予算GDP比1%枠に対する厳しい指摘

防衛費GDP比1%枠についても、米国から厳しい指摘がある。米元国防次官補代理(戦略・戦力開発)エルブリッヂ・コルビー氏は5月、米ワシントンのシンクタンク・ハドソン研究所の会議で、少なくとも日本の防衛予算は対国内総生産(GDP)比2%にするよう説いた。

「米国の納税者は日本を守るために3%以上を費やしている。日本より脅威の遠い欧州でさえ達成している」とコルビー氏は語った。「(防衛費の増額が)日本にとって政治的に難しいと言えわれても(米世論には)受け入れられない」。

米国が新型コロナウイルス感染症対策により財政負担が増加する中、米軍の福利厚生や利益を重視すれば、「日本を見捨てる」という選択肢もありうると突きつけた。

9月、防衛省は2022年度予算の概算要求で5兆4797億円を計上した。21年度当初予算比で2.6%増となった。年末の予算編成で増額して、1%枠に達するとも予想されている。

日本は模範となるべき=専門家

西側諸国が新型コロナウイルス感染症の「後遺症」に悩まされるなか、中国共産党は「赤い革命」を台湾に輸出しようとしている。

在沖アメリカ海兵隊の元政治顧問で政治学博士のロバート・D・エルドリッヂ氏は以前、大紀元の取材に対し、「台湾の有事は日本の有事」であると強調した。そして日本の政治家はこのことをはっきりと認識すべきだと述べた。さらに中国共産党は「台湾をめぐる安全保障体制が不完全なうちに攻撃を仕掛けたいと考えているだろう」とし、向こう数年が一番危険だと警告した。

周辺国家・地域を従わせようとする中国共産党政権の行動に対し、ニューシャム氏は、日本は防衛力を強化することで、東アジアの民主主義国として非常によい模範になることができるとの考えを示した。

米国の重要な同盟国の一つである日本は、民主主義に対して貢献をすべきであり、「自衛隊と米軍がしっかり連携し、共に活動できる日米同盟は、この地域と世界に強い安定をもたらすだろう」と述べた。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。