米国 【米国思想リーダー】

文化大革命の経験者「米国も同じ方向へ向かっている」=シー・バン・フリート氏インタビュー(1/2)

2021/12/14
更新: 2021/12/14

人種差別の根源はアメリカの社会構造に起因するとする「批判的人種理論」(Critical Race Theory)が全米で波紋を呼んでいる。白人は生まれた時から抑圧者であり、黒人は被害者であるという考えが広がり、ブラック・ライブズ・マターBLM)運動に拍車をかけた。中国の文化大革命を経験し、26歳で渡米したシー・バン・フリートさんは、過激化するBLM活動家やアンティファを「まるで紅衛兵だ」と表現する。人種問題を巡り、ますます分断が進むアメリカに対して、フリートさんは「中国と同じ方向へ向かっている」と警鐘を鳴らす。

全米の学校で教えられる「批判的人種理論」

今年6月、フリートさんは米バージニア州ラウドン郡教育委員会の会合で発言し、注目を浴びた。

「学校は子供たちに社会正義の戦士となり、国の歴史を憎悪するよう教育している」「中国共産党も同じ批判的人種理論を利用して国民を分断した…批判的人種理論のルーツは文化的マルクス主義だ。そんなものを学校で教えるべきではない」

会場の保護者たちから拍手が沸き起こった。

フリートさんは10年前くらいから、左傾化するアメリカを憂慮してきた。特に、数年前から始まった「キャンセル・カルチャー」や、教育現場で導入されている「批判的人種理論」に対しては、強い懸念を抱いている。毛沢東がこれらを積極的に利用して、文化大革命を発動したからだ。

「(どちらも)生まれた時点で罪を犯しているという考えだ。生まれながら白人は抑圧者であり、黒人は被抑圧者という理論だ…基本的に皆の運命は決まっていて、抑圧されている人は、常に被害者で有り続ける。これは文化大革命と全く同じ考えだ」

階級闘争は貧しい時代の中国とロシアで広がった。左派が富豪や地主らを糾弾し、革命運動を推進した。一方、「批判的人種理論」は、アメリカ仕様だとフリートさんは言う。先進国のアメリカで、階級闘争は適用できないからだ。

中国で起きた「階級闘争」と、アメリカの「人種問題」はどう似ているのか。

「どちらも、最も効果的に人を分断できる。これはマルクス主義の教科書に載っている分断の方法だ」

「(左派は)人々を分断するために、人種だけでなく、もっと多くの階級が必要だと思っている。今ではジェンダー、セクシュアリティ、インターセクショナリティーなどもある。これらは全て文化的マルクス主義に根差した、人々を分断するためのツールだ。毛沢東がこれを利用していたが、今は左派が利用している」

紅衛兵を彷彿とさせるアンティファとBLM

各地で暴動を繰り広げた紅衛兵は、主に若い学生たちだった。彼らは毛沢東のスローガン「造反に理あり」(造反有理)を唱え、伝統的な文化物や歴史的遺物を破壊し、大勢の知識人を吊し上げた。

「通り全体が破壊されたもので溢れ、家主が泣いているのを見た…また特定の髪形やファッションが批判の対象となり、紅衛兵が若い女の子の髪を切っていた。今でいうキャンセルカルチャーだ。完全に狂っていた」

なぜ、学生たちはそこまで暴力的になってしまったのか。彼らは責任を問われない事を知っているからこそ、何でもやってしまうとフリートさんは言う。

「彼らはどんな結果にも責任を負わない…アンティファやBLMを見ると、紅衛兵を思い出す。彼らも、自分たちは何をやってもいいと思っているからだ」

毛沢東は、「革命は人々を晩餐に招くことではない」「暴力だ」と言った。毛沢東のお墨付きがあるため、誰も紅衛兵を止めることはできなかった。彼らは法執行機関と裁判制度を解体し、自分たちでルールを作った。多くの教師や知識人が闘争集会に引きずり出され、糾弾された。

「殴り殺された人もいた…でも、紅衛兵たちは今日まで、何の責任にも問われていない。彼らの犯罪は起訴されていない。亡くなった人たちは、家族以外には忘れ去られ、無駄死にしたのだ」

(つづく)