米国防総省の元サイバーセキュリティ担当者によると、人工知能や機械学習の領域で中国に対する戦略的優位性を維持しようとする省の取り組みは、官僚的な浪費や緊急性の欠如によって損なわれているという。
大紀元の取材に応じた元米空軍ソフトウェア開発責任者ニコラス・チャイラン氏は、米軍を去った理由のひとつに技術変革が遅々として進まないことに抗議する目的もあったという。「米国が中国に抜かれるのを見たくない」と心情を吐露した。
チャイラン氏によれば、北京は人工知能、機械学習、ネットワーク技術で主導権を握り、世界支配に向けて進んでいる。同氏は、米国の人工知能は依然として中国を上回っているが、急速にその優位性を失いつつあると述べた。
チャイラン氏によると、米国防総省は、透明性の欠如により、契約者が安心して米軍と仕事できるように十分な努力をしておらず、その結果、グーグルなどの大手民間企業は政府との契約や開発の機会を放棄しているという。いっぽう、北京では、国境内のあらゆる企業に、選んだあらゆる方向に技術開発を行うように命令することができるため、より迅速な開発が可能になる。
また、チャイラン氏は国防総省の官僚主義を強く批判しており、将来的には中共が米国の優位性を脅かす可能性を議会で証言する予定だという。
ジョージタウン大学の新興テクノロジーセンター(CSET)は10月の報告書で、中国の人民解放軍は人工知能を使って台湾侵攻のシミュレーションを行っていると述べた。情報分析、情報戦、自律走行車のナビゲーション、目標認識などの他の軍事目的の中で、中国軍はAIで米国の軍事的優位性に対抗しようとしていることが調査で明らかになった。
「Command: Modern Operations」は、AIを使った戦争シミュレーション・ビデオゲームで、第二次世界大戦後から現代まで、そしてそれ以降のあらゆる軍事的交戦をシミュレートすることができる。戦術攻撃シナリオのほか戦略的な規模の作戦も模擬演習ができるという。
台湾国防研究院の謝沛学氏は、このシミュレーションソフトには商用版とプロ版があると述べた。民間企業だけでなく、米軍や国防企業もウォーゲームや軍事シミュレーションの分析にプロ版を使用しているという。「ウォーゲームでの人工知能の活用は今後のトレンドだ」と謝氏は語った。米軍も中国軍もAIで戦争シミュレーションを試しているが、まだまだ模索段階だと同氏は述べた。
ビッグデータはAIの研究開発の鍵であり、関連するデータが多ければ多いほど、AIはよりよく訓練される。
「米軍の最大の利点は、AIの訓練のために毎日、戦場や実戦訓練から直接大量のデータを収集していることだ」と謝氏は述べた。
「このように訓練されたAIは、実際の戦場のニーズに即したものになる」と同氏は付け加えた。さらに、北京が外国のソフトウェアに依存しているのは、戦場での経験とデータが不足しているからだと謝氏は述べた。中国軍に実際の戦地経験はない。
(つづく)
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