レアアース、脱中国サプライチェーン形成 中国優位性薄れる=米VOA

2022/01/03
更新: 2022/01/03

レアアースの製造に優位性をもつ中国だが、その地位は揺らぎ始めている。ここ10年間、米国とその同盟国が脱中国のサプライチェーンの構築に力を入れ、その効果が現れつつある。米国営放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が報じた。

レアアースはハイブリッド車、電気自動車、スマートフォン、カメラ、LED照明、センサーなどハイテク製品から、精密誘導ミサイルやロケット、衛星などに至るまで、さまざまな分野で使われる不可欠な鉱物資源である。

優位性を失い始めた中国

近年、世界的にレアアース鉱床の探査が活発化してきている。ヨーロッパ、南米、アジア、アフリカなどでレアアースの鉱山が相次ぎ発見され、その多くはすでに採掘が始まっている。

米国テキサス州で開発中のラウンドトップ鉱山は、米国のレアアース需要を130年分賄えるとされる。

オーストラリアの会社「USAレアアース」はこのほど、米アリゾナ州とワイオミング州でレアアースの探鉱ライセンスを取得したと発表した。アリゾナ州フェニックスの北西に位置するラパス鉱山は、米国最大のレアアース資源となる可能性がある。

いっぽう、中国は長年にわたる過度の開発により、資源は急速に枯渇している。 米国地質調査所(USGS)の調査によると、中国のレアアース埋蔵量は2016年には5500万トンあったが、20年には4400万トンに減少した。20年の世界のレアアース確認埋蔵量は1億2000万トンで、中国のシェアはおよそ50~36%に低下している。

中国地質調査局の「世界レアアース産業の構造変化および中国レアアース産業の課題」と題する論文では、世界のレアアース埋蔵量の分布に変化が生じ、「我が国のレアアース資源における優位性が徐々に低下している」と記した。

また、レアアースの分離精製には高度な技術が必要であり、中国がこれまではこの分野でリードしてきた。米国のオークリッジ国立研究所が昨年11月末のプレスリリースで、米エネルギー省のアイダホ国立研究所と共同開発した新しい技術は、コストと効率の両面で優れており、中国一人勝ちの現状を打破できると発表した。

米国の10年にわたる取り組み

2010年9月に尖閣諸島の領有権問題で日中が対立し、中国がレアアースの対日輸出を制限して、価格が一時急激に高騰した。米国をはじめとする諸外国は、この重要な資源の供給を中国に依存することの重大なリスクに気づいた。

USGSによると、05~08年にかけて、米国のレアアース金属・化合物の91%を中国から輸入した。

米国は10年から、中国に依存しないレアアースのサプライチェーン構築に取り組んできた。

近年、米国は政府出資や同盟国との提携で、中国企業から独立したレアアースのサプライチェーンを作っている。米国防総省とエネルギー省は19年から、レアアースの基礎研究、加工、生産に多額の資金を投入している。

米国防省の支援を受けてレアアースの精錬分離品のサプライヤーとして最も成功しているオーストラリアのライナス社は、西オーストラリアのマウントウェルド鉱床で採掘された鉱石をマレーシアのクアンタンにある工場に出荷し、精錬分離を行っている。同工場は中国以外の世界最大かつ最先端のレアアース分離工場である。ライナス社の株価は2年間で約7倍に上昇した。

USGSのデータによると、米国の精製レアアース製品の輸入は近年、年々減少しており、11年の総額6億9600万米ドル(約800億円)から、昨年は1億1000万米ドル(約126億円)に減った。

USGSの2020年度レポートによると、約20カ国がレアアースの採掘を進めている。中国地質調査局は今年の論文で、10年以降、世界37カ国の261社が合計429のレアアース鉱山を開発したと記述し、米国とオーストラリアの企業が「中国から独立したレアアース資源のサプライチェーンを確立しつつある」と結論付けている。

日本では13年、日本の排他的経済水域(EEZ)である小笠原諸島・南鳥島沖の深海底で、国内で消費されるレアアースの300年分に相当する高濃度のレアアースが発見された。

(翻訳編集・叶子静)