カナダ野党、中国による資源企業の買収は安全保障上のリスク… 政権に見直し求める

2022/01/17
更新: 2022/01/17

カナダ野党の保守党は13日、中国の国有企業・紫金鉱業集団がカナダの資源企業ネオ・リチウムを買収したことについて、国家安全保障上の見直しをトルドー首相率いる与党・自由党に求めた。同国では買収が国家安全保障を脅かす可能性がある場合45日以内に審査を開始することになっているが、自由党はこれを見送った。

保守党のガーナー議員らは自由党政権あての声明のなかで、紫金鉱業集団による買収は「国内の鉱物資源の安定供給という戦略的利益のさらなる弱体化を招く」と断じ、同社がカナダ投資法に基づく国家安全保障の審査対象にならなかった理由を示すよう求めた。

声明は、カナダ経済に打撃を及ぼしている半導体不足を例に挙げ「鉱物の不足は、サプライチェーンに悪影響を及ぼす」とも指摘した。

カナダの投資法によれば、外国企業による国内企業の買収はすべて政府による安全保障審査を受ける。国家の安全を脅かす可能性があるとみなされれば詳細な審査を受け、買収停止になることもある。しかし、今回のネオ・リチウム買収案は当局の審査が行われず、中国企業の株式取得が成立した。

中国福建省に本社を置く紫金鉱業集団は昨年10月、ネオ・リチウムの全株式を約9億6000万カナダドル(約883億円)で買収する契約を締結したと発表。ネオ・リチウムは約757万トンの炭酸リチウムが埋蔵されるアルゼンチンのトレス・ケブラダス塩湖の開発権を持つ。

中国では電気自動車(EV)の販売が好調だとされる。EV人気に合わせて、ネオ・リチウムの買収により需要を満たす考えだとガーナー氏は中国側の狙いを指摘する。

トルドー首相は、昨年12月シャンパーニュ・イノベーション科学・産業大臣宛の委任状で重要鉱物の確保を重要な目標とし「鉱物加工、セル製造、ゼロエミッション車の部品・組立製造」への投資誘致に努めるよう記した。

紫金鉱業集団は、セルビア東部の都市ボルの鉱山で大規模な採掘事業を進めてきたが、環境基準を守らなかったとして昨年4月、同政府から国内の銅鉱山での一部の操業を一時停止するよう命じられている。

米国をはじめ国際関係担当。