記録的豪雨に襲われた北京 ダム放水が相次ぎ、下流地域に甚大な洪水被害=中国 河北

2023/08/02
更新: 2023/08/02

7月29日から31日にかけて、台風から派生した温帯低気圧の影響で、中国の首都圏に当たる京津冀(北京市・天津市・河北省)地域では記録的豪雨となり、各地で大規模な洪水が発生した。

北京では、市内各地で道路が冠水。所によっては凄まじい「急流」と化し、無数の車や道路標識が流された。一部の橋まで崩落して流されたほか、周辺の丘陵地では山崩れも起きた。北京市民は電気や水が断たれるなど、生活に深刻な影響を受けている。

2023年8月1日、北京市房山区での洪水。(PEDRO PARDO/AFP via Getty Images)

 

(2023年7月31日、北京市でおきた洪水)

濁流に流される「無数の車や家屋」

北京市当局は1日、この日の午前6時までに「豪雨と洪水で11人が死亡。27人が行方不明になった」と発表している。しかし、被災範囲が広大であるため、その実態および被害の全容は全く分かっていないだろう。無数の車や家屋が流される動画からして、とても「11人が死亡」ですむような光景ではない。

また、多くの河川で警戒水位を超える水位を観測したため、当局は、7月31日14時20分に懷柔水庫(懷柔ダム、北京市)の水門を開いて放水した。その後も、河北省および北京市の複数の水庫(ダム)では大量放水を行っているが、この影響により、下流に位置する多くの地域で農地や市街地が水没し、停電するなど大きな被害を受けている。

(北京周辺のダムからの放水の影響で、多くの家屋が浸水した河北省涿州市の様子)

 

(北京周辺のダムからの放水の影響で、多くの家屋が浸水した河北省涿州市の様子)

1日午後、涿州市(河北省保定市に属する県級市の一つ)に住む黄さんは大紀元の取材に対し、次のように語った。

「(上流からの)放水により市内全域が浸水した。水位が2階にまで達した集合住宅もある。農村部の被害はもっと深刻だ。電気も水道も断たれた。通信が途絶えたため、外部は被災の実態を知らない。皆どこへも逃げられない。どこへ行っても洪水で、しかも雨は降り続いている。みんな水の中にいる」

このような状況について、黄さんは「この全責任は北京(当局)にある。今までは、どんなに雨が降っても、ここまで浸水することはなかった。すべては(ダムの)放水のせいだ」と訴えた。

繰り返される「人災による被害拡大」

中国メディア「南方週末」1日付は、同日の午前中に「河北省涿州市応急管理局の職員が、7月31日の市内の水位上昇は上流(北京)からの放水が原因であることを認めた」と報じている。

北京当局は「永定河流域の上流に位置する北京市齋堂水庫が7月30日から放水を開始する、と通告していた」というが、永定河流域の洪水被害は甚大である。

なお、7月31日の河北省邯鄲市での洪水の様子を捉えた動画がホットリサーチ入りしたが、まもなく当局の規制がかかり、削除されている。

自然災害が起こるのは、確かに避けられない場合もある。しかし、世界のどの国を見渡しても、災害の状況を外部に知られまいと隠蔽し、かえって被害を何倍も拡大させてしまう国といえば、現体制の中国や北朝鮮などの独裁国家に限定される。

中国当局が、災害に関連する話題のホットリサーチを押さえつけるのは常套手段ではある。しかし、そうした中国当局による隠蔽や情報統制や招いた「人災」が、天災にも増して恐るべき被害をもたらすのも常のことだ。

2年前の2021年7月、河南洪水の一部である「鄭州水害」では、水没したトンネルに多くの車が残されて「死のトンネル」と化した。この時も、当局による「事前通知なしのダム放水」が被害を拡大させた原因の一つとされるが、責任逃れをはかる当局は、一貫して「自然災害だった」と主張している。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。