【寄稿】謎に包まれた中露首脳会談、台湾侵攻とも関係か 北朝鮮がミサイル「連打」する訳とは

2023/10/19
更新: 2023/12/02

謎に包まれた中露首脳会談

18日にロシアのプーチン大統領と中国の習近平主席が北京で会談した。さて議題は何だったのか?独裁国家が独裁者の会談の真相を公開することはあり得ないから、もとより両国政府の発表などは当てにならない。

一帯一路のフォーラムでの会談だから、一帯一路だろうなどというのは単純すぎて話になるまい。

ウクライナ戦争だとも言われるが、戦争が始まって既に1年半が経過し、その間、中露は意思疎通を重ねている。今さら、膝を突き合わせて語り合わなければならない議題があろうとも思えない。

ハマスイスラエルを攻撃して端を発した中東問題も議題になっただろうが、そもそも会談はハマスの攻撃以前から決まっていた。つまりプーチン氏がわざわざ訪中して習氏と会談することになった本来の議題ではあり得ない。

では本来の、そして本当の議題は何だったのか?その解くカギは、同日にロシアのラブロフ外相が北京から北朝鮮に行ったことから察しが付こう。つまり北朝鮮である。

そもそも、この会談が計画されたのは、北朝鮮の金正恩総書記がロシアでプーチン氏と会談した直後の9月18日に中国の王毅外相がモスクワでラブロフ外相と会談してのことである。

従って、プーチン・金会談の決定事項をプーチン氏が直に習氏に伝える目的で、この会談は設定されたのだ。

だがもともと北朝鮮と中国の間には太いパイプがあり、通常であれば中国は北朝鮮についてロシアから情報を貰う必要はない。それが今回に限ってロシアは中国に情報を伝え、ロシアはその結論を北朝鮮に伝えるという異例の形を取っている。

一体、ロシアと中国と北朝鮮は何を話し合っているのか?

露朝取引の嘘

この問いに答えるためには、そもそも9月のプーチン・金会談で何が話し合われたのか?という問いにさかのぼらなければならない。一般的にマスメディアの報道したところでは、北朝鮮がロシアに弾薬を提供し、ロシアは北朝鮮に軍事衛星の技術を供与するという取引が、ここで成立したかに言われている。

だがこれは、両国の巧みなマスコミ誘導と見た方がいい。というのも7月にロシアのショイグ国防相が平壌で金総書記と会談して、この取引は既に成立している。8月8日にロシアの輸送機が北朝鮮から軍事物資をロシアに運んだのを韓国国家情報院が確認している。

8月24日に北朝鮮は衛星の打ち上げに失敗したが、22日に北朝鮮が衛星打ち上げを予告した段階で、この衛星はロシアからの技術供与によると韓国メディアは報道していた。

それが証拠に、北朝鮮は24日の失敗直後に、「次は10月に打ち上げる」と予告している。通常、失敗すれば、その原因を究明しなければならない。原因が究明されない段階で次の発射の時期を予告することなどあり得ない。

これは、発射したロケットが北朝鮮製でないことの有力な証拠である。おそらくロケットはロシア製であり、発射にはロシアの技術者が立ち会っていたと見られる。ロシア側が「次は10月」と言ったのを北朝鮮はおうむ返しに放送したというのが真相だろう。

北朝鮮、衛星打ち上げの真相

北朝鮮は8月の発射の3か月前の5月にも衛星打ち上げを試み失敗している。この残骸を回収した米韓は、「偵察衛星として軍事利用に値する性能はまったくない」との分析を示した。

つまり北朝鮮は軍事偵察衛星だと公表しているものは、軍事偵察衛星としての性能を有していないのだ。しかもその打ち上げに失敗して3か月も経たないうちに再び打ち上げに失敗して平然として次の打ち上げは10月だと予告している。

これは、ロケット発射の目的が実は衛星打ち上げでないのではないかとの推測を可能にする。というのも北朝鮮は2012年12月12日に人工衛星の打ち上げに成功しており、衛星打ち上げ技術をとっくに取得している。軍事偵察衛星の機能を有していない程度の衛星ならば、打ち上げに2度も失敗する筈はない。

そこで注目されるのが、ロケットの飛行経路である。北朝鮮が発射する弾道ミサイルはほとんどの場合、東方向すなわち北朝鮮から日本海に向けて発射される。だが人工衛星の場合は南方向すなわち北朝鮮から東シナ海に向けて発射される。

これは2012年に打ち上げた衛星も同様であり、地球の自転に対して垂直な軌道を周回する方が地上をくまなく観測する上で便利だからである。だが周回軌道に乗せられなければ、意味がない。その一見無意味に思える南方向への発射を繰り返している真意が疑われるわけである。

そこで改めてロケットの飛行経路を確認してみると、ロケットは北朝鮮から黄海、東シナ海を経て西太平洋に落下している。ここで注目すべきは沖縄本島と宮古島の間の沖宮海峡の上空を通過している点であろう。

中国、3海峡封鎖の恐怖

沖宮海峡は中国の艦隊がしばしば通過するので、注目の軍事スポットである。中国が台湾に侵攻する際、中国は台湾海峡、バシー海峡、沖宮海峡の3海峡を同時に封鎖するのではないかと軍事筋は危惧している。

8月発射のロケットは沖宮海峡の上空を通過し、フィリピンの東約600㎞の太平洋に落下した。北朝鮮は失敗と見せかけて、実は軌道データを収集しているのではないか?

というのも地球の自転に対して垂直に弾道ミサイルを発射した場合、自転によるずれを計算しなければ正確な着弾は望めない。そのためには事前に軌道データを収集する必要がある。

もしそうなら北朝鮮は3海峡に中距離弾道ミサイルを正確に着弾させようと計画していることになろう。これで偵察衛星が成功すればこの海域の状況を綿密に把握でき、より正確な着弾が可能となろう。つまり北朝鮮は中国の台湾侵攻に協力するわけだ。

この計画は、状況から察するにロシアが立案して中国と北朝鮮に持ち掛けていると見て間違いあるまい。中国と北朝鮮は、ここのところ、重量級の会談を控えており、中朝の対立さえ噂されるが、この計画を隠蔽するための偽装工作だろう。

今般の中露首脳会談についての両国の発表でも北朝鮮については余り触れられていないが、同日にラブロフ外相が訪朝していることからみて、やはり隠蔽工作と見て間違いあるまい。

(了)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
軍事ジャーナリスト。大学卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、11年にわたり情報通信関係の将校として勤務。著作に「領土の常識」(角川新書)、「2023年 台湾封鎖」(宝島社、共著)など。 「鍛冶俊樹の公式ブログ(https://ameblo.jp/karasu0429/)」で情報発信も行う。
関連特集: 百家評論