中国では、旧正月などの祝日の際に、邪気を払う目的で、爆竹や花火を盛大に打ち上げて祝う伝統がある。ただし近年は、火災や大気汚染への懸念などから、禁止や規制導入の動きが各地で相次いでいた。しかし今年は、爆竹や花火への規制緩和に踏み切った地域も多い。
今年の旧暦の元旦(2月10日)をはさむ期間、各地で爆竹や花火で年越しと旧正月を祝う人が目立ったが、花火が引火する火災や爆発事故も相次いでいる。
ロケット花火が、男児の頭を直撃
2月12日夜8時過ぎ、河南省開封市で、ロケット型の打上げ花火が10歳の男児の後頭部に突き刺さり、さらに花火が爆発する大事故が起きた。
男児は、その場で大量の血を流して意識不明に。頭蓋骨が陥没するほどの重傷で、すぐに病院へ搬送され3度に及ぶ手術を受けたが救命には至らず、17日に死亡が確認された。
中国の医療は全額前払いが原則であるため、男児の親や家族が20万元(約400万円)以上を工面して手術を行ったが、男児は助からなかった。
それだけでなく、花火を発射した「犯人」が見つかっていないため、刑事責任の追及とかかった医療費を請求することもできないでいるのだ。
この事件は複数の中国メディアも取り上げており、中国版ティックトック「抖音」には、事件の「目撃者を探している」とする投稿が注目されている。
有力情報を提供してくれた市民には「多額の謝礼」を用意しているという。
男児の親族によると、事件の日、男児は父親と一緒に街を歩いていたところ、突然「狼嚎(オオカミの遠吠え、というロケット花火の名前)」に酷似した花火が人込みの中から飛んできて、男児の後頭部に突き刺さり、さらに爆発した。
この事件については警察に通報済みだが、花火を発射した「犯人」は今も見つかっていないという。
もちろん「狼嚎」という打ち上げ花火は、真上の空に向けて点火するものだ。「なぜ空ではなく、人に向かって放ったのか」。それが故意か事故かはまだ不明だが、男児の家族は、一刻も早い犯人逮捕を願っている。
中国各地で「爆竹や花火の事故」が多発
中国での年越しに、爆竹や花火は欠かせない。しかし残念ながらこの季節には、その爆竹や花火に関係する重大事故が、毎年必ず起きるのだ。
2月9日の大晦日「除夕」の夜、安徽省蚌埠市の花火取引市場で火災が起きた。
この事故について、中国メディアによると、そばで上げていた打上げ花火が、花火店の商品に引火したため、近くの10数の花火店にまで燃え広がった。花火は1時間以上も引火し続けた。そのため現場にやってきた消防隊は、何もできなかったという。
旧正月の初日(2月10日)広東省広州市の高層住宅15階の一室に、誰かが地上から打ち上げたロケット花火が飛び込み、火災になる事故が起きた。
(2024年2月10日、広東省広州市の高層住宅の15階の一室に、地上から花火が飛び込み、火災になる事故が起きた)
同じく旧正月の初日、貴州省黔東南ミャオ族トン族自治州でも、幼稚園の付近で遊んでいた子供3人が打ち上げた花火が引火して、なんと幼稚園が火災になる事故が起きている。
(2024年2月10日、貴州省黔東南ミャオ族トン族自治州で起きた幼稚園火災。出火原因は付近で遊んでいた子供の花火だった。SNSより)
先月30日夜も、貴州省貴陽市にある集合住宅でも、下の階から打ち上げた火花が部屋に引火し、火災になる事故が起きていた。
火災の起きた部屋の男性は、すぐさま集合住宅に設置された消火用の放水設備を使って火を消そうとした。ところが、接続するホースの金具の口径が合わず、火を消すための放水設備が全く使えなかった。
消防隊が到着してようやく鎮火した時には、出火した部屋のなかにいた男性の母親は亡くなっていた。
男性は「なぜ消火設備が使えないのに、消防検査が合格になったのか」と述べて、集合住宅の管理者や当局による安全検査の杜撰さを、涙ながらに糾弾した。
(「消火設備が使えないのに、なぜ消防検査に合格したのか」と非難する、火災被害者の遺族の男性)
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