中国の過剰生産能力と低価格商品の海外ダンピング(不当廉売)が、諸外国で高い懸念を呼び起こしている。 日韓は欧米に追随して、不当廉売関税を課している。米中貿易戦争はこれから激化する可能性があり、中国共産党(中共)は経済的孤立のジレンマに直面している。
日本政府は2月20日に、リチウム電池の正極材などに使う電解二酸化マンガンに対し、反ダンピング関税を5年間延長する政令を閣議決定した。26日に政令を公布して、課税期間を2029年2月25日まで延長する。
日本政府は2008年9月1日から、中国産電解二酸化マンガンに対し、不当廉売関税(税率:34.3~46.5%)を5年間課してきた。2013年、2018年に課税期間延長の調査を行って、課税期間を2回延長した。
日本自動車工業会(自工会)が1月31日に発表したデータによると、2023年、中国の自動車輸出台数は日本を抜いて世界一になった。 2016年に日本に首位の座を奪われて以来7年ぶりの奪還となる。
昨年、中国の自動車輸出台数は491万台で、前年より約58%増加した。 その主な理由は、中国共産党(中共)政府の支援を受ける中国EV輸出の増加にある。
昨年、中国ではEVの生産能力過剰で、EVの価格競争が激しくなった。競争は海外にも拡大している。EV用電池とEVの両方を生産する中国自動車大手BYDは、圧倒的な価格競争力で急成長を遂げている。
昨年、BYDはEVの販売台数でテスラを抜き、市場シェア20.5%で1位を占めた。テスラは12.9%で2位だった。
値下げ競争は燃料車にも波及し、中国、米国、日本、欧州の自動車会社はほぼすべて値下げ苦境に陥っている。日本の自動車会社の苦境はさらに深く、自動車輸出量は中国に追い越された。三菱自動車は中国市場から撤退することを決定した。
2月20日、韓国環境省は、2024年の電気自動車補助金制度を決めた。 改正案では、高性能EVへの補助金が増やされ、バッテリーの効率とリサイクル価値が補助金支給の主な基準となっている。
新制度では、中国製のリン酸鉄リチウム電池を使用したEVに対する補助金を大幅に削減した。中国製電池を搭載したEVに対する補助金は最大40%「減額」される。 比較的高性能な韓国製バッテリーを搭載したEVや大型乗用車には、より高い補助金が支給される。
韓国市場は、中国製バッテリーとEVに支配され続けている。 昨年、韓国で販売された電気バスのうち、中国製の電気バスは54.1%を占め、計1522台だった。中国製電気トラックも韓国市場の20%以上を占めている。 韓国の電池EV用輸入バッテリーの96.4%は中国から輸入されている。
一部業界関係者は、韓国の新たな補助金政策が、米国の「インフレ削減法」(IRA)やその他の外国の政策に沿ったものであり、中国のバッテリー企業にとってある程度不利だと考えている。
IRAは、EV購入者に最大7500ドルの補助金を提供している。ただし、バッテリーに使用される主要鉱物は、米国または米国が自由貿易協定(FTA)を締結している国から入手、加工、またはリサイクルされたものでなければならず、車両とバッテリーの最終組立て地は米国でなければならない。
韓国EVメーカーは「米国製」に向けた合弁事業を強化している。 韓国政府はまた、韓国企業の北米投資を支援するために53億米ドル(約7964億円)を提供している。
米国とEU、貿易障壁を強化
来年は、中国市場において約1千GWhの電力用電池生産能力を必要とするが、業界の現在の容量は4800GWhに達している。
イーロン・マスク氏は、貿易障壁を設けなければ、中国のEVメーカーは世界の競争相手のほとんどを潰すだろうと述べた。 昨年、テスラはライバルに対抗するために価格を下げざるを得なかったが、既存の製品は「コスト削減の自然な限界」に達している。
米国製EVのサプライチェーンから中国を切り離すために、米財務省は今年からEV用バッテリーに厳しい制限を課している。
IRAの30D条は2024年1月1日から適用されている。
中国、ロシア、北朝鮮、イランなどで生産されたバッテリーパックを使用し、米国に輸入されるクリーンエネルギー自動車(EVやクリーン燃料自動車を含む)については、消費者購入補助金が利用できなくなる。
中国、ロシア、北朝鮮、イランの外国企業によって生産されたリチウム、ニッケル、コバルト、グラファイトなどの主要鉱物が、米国に輸出されクリーンエネルギー車に使用されている場合、消費者購入補助金の対象外となる。
新しい規制では、7500ドルの消費者税額控除の対象となるEVのモデル数は、約25から13に減少した。 米財務省によると、自動車メーカーはサプライチェーンを調整しているという。
米国が中国をサプライチェーンから排除しようとしているだけでなく、欧州も貿易障壁を強化している。
今年1月、フランス政府はEVに対する補助金制度を導入した。 新しい補助金規則は、使用材料、バッテリーの種類、原産地などに基づいて、各車の「二酸化炭素排出量」を評価する。
その結果、中国製の安価なEVは除外され、中国製バッテリーを使用する多くの欧米ブランドのEVは新しい規制の影響を受けることになる。
この補助金制度は、基準を満たすEVがなかったため、6日間で打ち切られたが、来年は復活する予定である。適合したEVとバッテリーの生産がフランスへの輸入に影響を与える。
中国製EVが中共政府から巨額の国家補助金を得て、欧州での販売価格を引き下げることは、市場の不当な歪曲とみなされている。
昨年10月4日、欧州委員会は安い中国製EVに対し、反補助金調査を開始した。
企業コンサルティング会社のアリックスパートナーズはメディアに対し、2016年から2022年の間に、中共はEVとハイブリッド・エネルギー車に570億ドルの補助金を提供したと明かした。同社によると、これが中国が世界最大のEV生産国となり、日本を抜いて世界最大の自動車輸出国となった主な理由だ。
時事評論家・唐靖遠氏はエポックタイムズに対し、莫大な補助金を使って海外でのダンピングを支援するのは、中共の長年にわたる戦略だと語った。大規模なダンピングによって市場を独占し、依存関係を作り出すことで、中共は政治的な影響力を強め、より大きな経済的利益を得ることができる。
反ダンピングがエスカレート
中国の自動車メーカーは積極的に海外進出を図り、米国の貿易協定国に工場の設立で協力することで、米国の禁止措置を回避しようとしている。 BYDはタイとブラジルの工場で生産を開始する予定で、スペインなど欧州にも工場を設立する計画だ。 技術支援の名目で、EV用バッテリーメーカー・寧徳時代(CATL)はフォードと協力して米国にバッテリー工場を設立すると報じている。
最近、BYDがメキシコに工場を設立するというニュースが流れた。米国製造者連盟はバイデン政権に警告を発し、中共政府の政策と資金に支えられた安価な自動車が米国の自動車メーカーの存続を脅かすとして、中国の自動車メーカーがメキシコを通じて米国に販売するのを阻止するよう求めた。
過去1年間、中国の多くの産業は過剰生産能力、価格競争に苦しみ、積極的に海外進出しており、各国で反ダンピング調査を受けている。
今年1月2日、米商務省は中国産トラック・バス用タイヤに対する初の反ダンピング・反補助金のサンセットレビューを発表した。サンセットレビューは既存の貿易救済措置が引き続き必要かどうかを評価する調査だ。
昨年末にインドは中国製トラック・バス用空気タイヤ、ブラジルは中国製トラック用タイヤ、タイは中国製バイク用インナーチューブに対するサンセットレビューを開始した。
米国際担当財務次官・ジェイ・シャンボー氏は2月5日と6日に中国を訪問した際、中国が過剰生産能力を解消するために国際的な商品ダンピングを続ければ、米国と同盟国は行動を起こすと中国側に警告した。
唐靖遠氏は、米国が行動を起こせば、今年は世界各国が中国との経済的デカップリングを加速させるだろうと考えている。
貿易戦争の根本原因は中共にある。中共は普遍的価値を敵視し、中国を自由世界から孤立させ、急激な経済衰退をもたらしている。 中共の「内循環」は、実は外国人投資家から見放された後、自他を欺くための口実にすぎない。
中国が過剰生産能力の圧力を緩和する手段として商品を海外にダンピングしている事実は、「内循環」の破綻を証明している。中国経済が必要としている外部市場は、中共の政策や行動慣行によって損なわれいく。
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