米国でTikTokを規制する法案が議論されるなか、TikTokは7日朝、アプリのユーザーに対し、所在地の議員事務所に電話をかけて規制法案への反対を表明するよう求めるプッシュ通知を送った。現地メディアによると、一部の事務所では電話応対に支障が生じたという。米議員は、アプリが世論を操作する能力を備えていると警告を発している。
「すぐに行動を起こしてください」「TikTokの閉鎖に反対する声を挙げてください」ーー。米国のTikTokユーザーのスマートフォンに、このようなメッセージ(プッシュ通知)が届いた。メッセージには郵便番号を入力する枠があり、入力すると地域の議員事務所の連絡先が表示されるようになっていた。
米CBSの報道によると、米国各地の議員事務所には電話が殺到した。下院対中共特別委員会のラジャ・クリシュナムーティ下院議員(イリノイ・民主)は、連邦議員や連邦議会の定義さえわからない児童からも多数の電話が入ったという。
米国議会では、中国共産党の影響力が問題視され、党との関係を切り離すよう求める法案が議論されている。これにTikTokが反発して、大規模なプッシュ通知キャンペーンを行った格好だ。
クリシュナムーティ議員とマイク・ギャラガー議員は、TikTokの行為について「中国共産党がアメリカ国民を標的とし、偽情報を広め、プロパガンダを推進することができる」と批判。中国共産党がTikTokを通じて米国世論を操作する能力が明らかになったと指摘した。
いっぽうTikTokは、プッシュ通知は18歳以上のユーザーに限定して送信したと主張している。
TikTokは米国内でおよそ1億7千万人のユーザーを抱え、中国共産党との不透明な関係から、共和・民主の両党から国家安全保障上の脅威であるとしばしば指摘されてきた。
日本では、TikTokや中国通信機器大手・華為といった中国を含む海外企業に対する規制が遅れているとの指摘がある。
3年前、日本の大手メッセージアプリ「LINE」は中国の提携先企業から情報が閲覧できる状態だったことが発覚。その後も韓国企業を通じた数十万人の利用者情報の漏えいも明らかになった。総務省は今月、LINEヤフーに対して、経営体制の見直し検討を求める行政指導を行った。
情報戦に詳しい軍事ジャーナリストの鍛冶俊樹氏は取材に対し、「政府の反応は鈍い。LINEの件もそうだが、そもそもリスクを認識できていないのではないか」と警鐘を鳴らした。
「TikTokはかねてから中国の資本が入っており、情報漏れの問題や、中国(共産党)の情報工作に使われていると指摘されてきた。米国では華為などが規制されているが、日本は全く鈍い。外国の情報機関の情報工作が、政治レベルに入っていて、問題にしないような空気が作られているような気がしてならない」
さらに、「米国にはFBIなどの連邦組織があり、議会筋にも働きかけるが、日本にはそのような機関がない」と指摘。先日閣議決定された「重要経済安保情報法案」によって「段々と対応できるようになるのかもしれない」との観測を示した。
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