パリオリンピックの女子卓球シングルスの決勝戦は、中国の二人の選手の間で行われた。陳夢が孫穎莎(そんえいしゃ)を破った後、中国のファンからはブーイングが起き、コーチ陣も明らかに不機嫌な様子であった。この珍しい光景が外部からの関心を引き、ファンの行動と中国共産党によるスポーツ界への影響が議論の的となった。
陳夢の勝利とファンの不適切な行動、CCTVの解説者は沈黙を保つ
8月3日に行われたパリオリンピックの女子卓球シングルス決勝で、前回の東京オリンピックの金メダリストである陳夢が世界チャンピオンの孫穎莎を4-2で破り、再びオリンピックの金メダルを獲得した。
中国人としての誇りを感じるべき試合であったにもかかわらず、現場の雰囲気は非常に不快であった。
観客席では孫穎莎に対する声援が聞かれる一方で、陳夢の勝利に、コーチたちの顔には喜びが見られなかった。また、ある中国のファンが陳夢に中指を立てるという不愉快な出来事も発生した。陳夢が表彰台に登る際には、中国のファンからは孫穎莎の名前が連呼された。
この試合の中国中央テレビの解説者たちの偏向は明らかであった。孫穎莎が得点するたびに解説者たちは興奮を隠せず声を高めたが、陳夢が得点した際にはそのトーンは明らかに抑えられていた。陳夢が連続得点を挙げた際には、解説者たちは一時的に沈黙してしまった。
鳳凰体育の報道によれば、観客席で、一部観客の行動は「友好国も驚く」ほどであった。特に、中国の二人の選手が対戦する試合で、観客の多くが片方の選手だけを熱烈に支持し、もう片方を完全に無視する様子には理解し難いと感じられた。
一部の評論家は、中国共産党の官僚やファンが孫穎莎のグランドスラム達成の瞬間を目撃することを期待しており、陳夢の勝利が彼らの用意していた祝賀計画を台無しにしたとの見方を示している。
孫穎莎の「金メダル獲得」の広告が試合前に放映される
ソーシャルメディア上で、孫穎莎が出場したパリオリンピックの女子卓球シングルス決勝と樊振東が出場した男子卓球シングルス決勝の前夜に、伊利公司(中国の大手乳業企業)が北京で
「孫穎莎女子シングルス金メダル獲得」
「樊振東男子シングルス金メダル獲得」
といった広告を出していたことがユーザーによって指摘された。
官営メディアがファン文化を批判したが 中国共産党のスポーツ界の内情
中国のファンが偏向した応援をすることについて、新京報や澎湃新聞などの国内メディアは、スポーツにおけるファン文化の負の影響を批判している。これらの報道によると、ファンが競技をまるでアイドルを追いかけるイベントのように扱い、中国共産党体育総局などの、機関の支持を得ているとされている。
しかし、アメリカの飛天大学の副教授である章天亮(しょうてんりょう)氏は、実際にはファン文化よりも資本の動きが背後にあると指摘している。たとえば、伊利会社が広告を事前に公開したことは、孫穎莎の優勝が既に決まっていたと伊利公司が知っていたことを示唆しており、伊利会社の説明は、説得力を欠いていると彼は述べている。
章氏はまた、陳夢が優勝した後にコーチ陣が不機嫌であったことに触れ、陳夢に試合を譲るよう事前に指示されていたが、陳夢がそれを拒否した可能性が高いとも指摘している。これは中国共産党がスポーツ界において暗躍しており、チャンピオンが誰になるかは上層部の意向によって決まることを示唆している。
試合を譲る行為は以前からあり、日本で有名な女子卓球選手小山ちれ(中国名:何智麗、かちれい)も、中国代表選手の時、中国の上層部から同じ中国選手に勝利を譲るよう要求されたが、無視して勝利した。結局、世界ランキング1位であったにもかかわらずソウルオリンピック中国代表から漏れ、現役を引退して、最終的に日本に移住して日本の卓球チームに参加した。
章氏は陳夢のこの優勝は、小山ちれの事例が再び起こったと考えられると述べている。
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