11日午後、中国江西省にある川下りで著名な景勝地「武公山」で山津波が発生し、急増水した渓流でゴムボートが転覆する事故が起きた。ボートに乗っていた観光客1人が水に流されて死亡し、1人が負傷した。
遺族は「現場の水上安全救助員は、岸で見ているだけで、水に流された観光客を助けようともしなかった」として、景勝地スタッフは消極的で、適切な対応をしなかった故の事故だと訴えている。
事故で娘を亡くした王さんは中国メディアに対し、「ラフティング(川下り)開始から10分ほどした時、『上流で増水したため、できるだけ早く陸に上がるように』とのアナウンスを聞き、急いで岸へ上がった。上陸して10分も経たないうちに、水位が1メートルほど急上昇した」と明かした。
王さんより先に進んでいたその娘夫婦のボートは、急な増水のために転覆し、2人とも水中に落ちた。水泳が得意な娘婿はスタッフが差し伸べた竹竿をつかみ流されずに済んだが、娘(31歲)のほうは竹竿につかまることができず、そのまま水に飲み込まれた。
娘婿は肋骨骨折、頭蓋内出血など重傷を負ったが、九死に一生を得て、入院中だ。
補償の件について遺族は、いまも景勝地側と交渉を重ねているが、合意には至っていない。
「事故が起きたのは、景勝地側の何もしなかった従業員の責任だ」と考える遺族は、景勝地に弔いセットを持ち込んで、その場で線香をたき、泣きながら事故に対する景勝地側の責任を訴えていた。
遺族によれば、景勝地側との交渉途中、あるスタッフは、「こうなるんだったら、あの男(王さんの娘婿)も助けるんじゃなっかったよ」と漏らしていたという。
(遺族が景勝地側の責任を追及する様子)
涼しい「川下り」がまさかの「密林サバイバル」に
中国メディアによると、山津波発生時、現場では子供を含む約30人の観光客が立ち往生していた。
ラフティング中に緊急上陸した観光客たちは、山の頂上の道路を目指して「道もない密林の中」を無理やり上らなくてはならなくなり、「全員が全員、木の枝などにより体中擦り傷だらけだ」と参加者は明かす。
「人生でなかでも最もみじめな日だった」と、この日を経験した多くの観光客は口をそろえるなか、「今回の事故により、景勝地側に存在する多くの問題が露呈した」といった指摘の声が広がっている。
「山津波警報が届くのが遅すぎる、なかには避難通知を受けていない人もいる」
「事前避難ではなく、増水してから観光客を岸に上がらせたが、安全な避難路は用意されておらず、事故後の処理も散々たるものだった」
「警察への通報や救急車要請などはすべて観光客自身が手配しており、景勝地側のスタッフは全く頼りにならず、消極的だった」
夫婦が水に落ちて、女性のほうが流されていく一部始終を目撃した観光客は「前日に山でにわか雨が降ったため、事故当日に景勝地に電話をし、『ラフティングができるかどうか』について尋ねたら、『問題ない』との解答が返ってきた。ラフティング停止の通知はなかった」と明かしている。
(当時の様子)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。