社会問題 中国の若者の間で流行っている「瘋遊び」ブーム。

【動画あり】中国のコンサート会場に「精神病患者」たち現れる?

2024/10/19
更新: 2024/10/19

「頭がおかしくなった」「精神病患者」「狂人」を中国語では「瘋(ふう)」という。いま、中国の若者の間で「瘋遊」ブームが突然起きた。

その実態というのは、下の動画の通り。若者たちが精神病患者が着る入院着を着て、野外でおかしな動きをとったり、変わったダンスをしたりして、とにかく団体で楽しむというものだ。

その効果としては、「ストレス発散できて、仕事で消耗したメンタルを治癒できる」と当人たちはいう。

 

(「瘋遊び」中の中国の若者たち)

 

コンサート会場でも

今月12日夜、中国上海で開かれた同国の人気ユニット「鳳凰(ほうおう)伝奇」のコンサート会場にも、「精神病患者」たちが現れて、話題になった。

熱狂的なファンでもある女性4人は、後にネットユーザーから「600号」というあだ名を勝手につけられて、呼ばれている。

なお、そのあだ名の由来は、上海の著名精神病院「上海市精神衛生中心」の住所が「苑平南路600号」だからだ。

「なぜそんな服装で会場に来たのか?」という質問に対し、「600号」のうちの1人はこう答えている。

「私たちはあえてこの服を選びました。自分たちのアイドルに対する憧れの気持ちを示したいことと、自分たちのクレイジーな一面を見せたかったし、人ごみの中で目立ちたかったから」

「4人は会場に入った時から周りから注目され、たくさん写真を撮られた」という。

 

(コンサート会場の様子)

 

「確かに精神病院の服は、自分たちの今の精神的状態とぴったりだから、着たい気持ちわかる」

「そのようなクレイジーは、内なる感情をよりよく発散でき、うつの解消に役立つかもしれない」

といった理解の声が寄せられているいっぽうで、病院着の女性たちに対する反発の声も上がっている。

「精神病患者が着る入院着姿で公共の場であるコンサート会場に来るのは無礼であり、また会場の演出の雰囲気にも主催側が望まない影響を与える」と感じる人もいるようだ。

 

現代中国の社会を映し出す「鏡」

経済低迷が続くなか、失業率はうなぎ登り、若者はかつてないほどの就職・生活の巨大なプレッシャーに晒されている。苦しい現状に希望を持てない明日への不安、ぎりぎりの精神状態が長く続くなかで、自ら死を選ぶ若者も近年急増している。

確かに、今日の中国社会はあまりに憂鬱である。「瘋人(瘋遊び)」は今にも崩れそうなメンタルを立て直すための、若者たちの必死さが生み出した「自己防衛」かもしれない。

公共の場であえて精神科の服を着て、芝生に寝っ転がり、時にはジャンプしたり転がったりして、とにかくあらゆる奇妙な動きや表情をして、「精神病患者」であるかのように振る舞う。もちろん、周りからの冷たい目などは一切無視。

「瘋人のように人の目など気にせず、あえて変な動きをして普段縮こまっていた自分を全開にする瘋游は、確かにメンタルに良さそう」「あまり人様に迷惑かけずに自分たちで楽しめるのもいいんじゃないか? 若者には息抜きが必要だ」といった包容的な意見も少なくない。

いっぽうで、「ほとんど狂乱状態で暴れまわり、内なる感情を解放してメンタルの安定を求める」若者の精神状態やこの異常な現象は、「現代中国の社会がいかに病んでいるかの状態を示す鏡」と考える人も少なくない。

世間の冷たい目はともかく、幸い、「瘋人(瘋遊して)になってから、メンタル状態がものすごく良くなった!」という「患者」も多いようだ。それがせめての、救い。

 

「瘋遊び」中の中国の若者たち(GAN JING WORLDの動画のスクリーンショット)

 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!