社会問題 一般市民も被害に=中国

知らぬ間に「指名手配犯に」? 「事件捜査」を口実とした中国公安による「カネの巻き上げ」

2024/10/26
更新: 2024/10/26

遠洋捕獲

財政難にあえぐ中国の地方公安部門、彼らによる、「遠洋捕獲(中国語:釣魚執法)」と呼ばれる「濡れ衣を着せてのカネ略奪」が社会問題になっている。

被害を受けた民衆や企業は訴える場もなく、泣き寝入りするしかない。

「遠洋捕獲」とは、貧しい省の公安部門が「事件捜査」を口実に、経済が発達している他省へ赴き、権力を濫用して、個人や企業に濡れ衣を着せ金を巻き上げる浅ましいやり方だ。

例えば、一部地方の公安はあえて「落とし穴」を掘り、企業や個人がそこへ落ちるように仕向ける。いったん企業や個人の口座にブラックマネーが入れば、何らかの事件の容疑者などと、無実の罪を着せて陥れ、刑事拘留、ひいては投獄して、口座を凍結し口座内のお金を着服する。

「口座に入るお金の出所の正当性を確認することは、不可能であるため、この類のリスクを防ぐことはほとんどできない」と経済犯罪を専門とする周筱贇弁護士(中国メディア『南方週末報』の元記者・編集者)もいうほど、この被害に遭えば、泣き寝入りするしかないのだという。

中国のネット上には「遠洋捕獲」の被害者の涙の訴えも多く、「公権力乱用!」「強盗と同じ」など世論からも怒りの声が噴出している。

「遠洋捕獲」は昔から存在してきたことだが、近年は地方政府の財政難により、何としても金をつくりたい地方公安による、この類の法執行(犯罪)が増えている。

 

「ブランド時計」も「お金」も奪われた一般女性

 

中国メディアが取り上げた例の1つに「ブランド時計もお金も全て奪われた」一般女性がいた。

その不運な女性・曹さん(浙江省温州市在住)は今年2月、2022年に購入した高級腕時計「ロレックス」をフリマアプリ「閑魚(Xianyu)」に14万8千元(約315万円)で出品し、6月に売れた。

代金のうち14万元(約300万円)は買い手から曹さんの銀行口座に送金され、残りの8千元(約17万円)はアリペイを通じて曹さんに支払われた。

しかし、代金が支払われた日の夜、曹さんの銀行カードは訳もなく、凍結された。訳がわからぬまま、曹さんはさっそく翌日警察に届け出をしたら、自分が「指名手配犯」であるという衝撃的事実を知った。

訳を聞けば、「200万元(約4263万円)を騙し取られたと通報した人がいて、その騙し取られたというお金のうちの14万元が自分の銀行に送金された。だからそのお金は事件と関わるお金だ」というのだ。

口座凍結の理由を知った曹さんは、「フリマでの腕時計の取引」が正当なものであることを証明するために各種証明材料(取引のチャット履歴、動画、腕時計の購入記録など)を警察に提出するも、相手にされなかった。

曹さんは後に仕方なく14万元(約300万円)を「詐欺被害を受けた」という人に送金し、そうしてようやく「指名手配犯リスト」および「詐欺事件へ関与した容疑者リスト」から外れることができた。

曹さんの「ピンチ」はこれにて一件落着したようだが、実は、「売った腕時計は返ってこないし、売ったお金も没収された」と泣き寝入りという理不尽な悲劇となった。

 

画像(左)は女性がフリマアプリに出品した高級腕時計の商品情報。画像(右)は公安局が出す女性に対する強制措置の書類(中国のネットより)

 

曹さんの境遇について、中国メディアは、張長行弁護士(所属弁護士事務所:「安徽徽商律師事務所」)の分析を引用して、こう伝えた。「曹さんは詐欺の件を知らなかった。彼女が自分の腕時計を売って受け取ったお金は詐欺事件に関与したものと認定するのは不当だ」

関連ニュースをめぐっては、ネット上で「不当だ」とする意見が多く、「公安による『遠洋捕獲』」を疑う声が殺到している。

「これも『遠洋捕獲』の手口の1つ、防ぎようがない」

「詐欺した人のお金を没収すればいいだろう? なぜ関係ない時計を売った女性のお金を奪っていくのか?」

「モノを売るとき、お客さんに『あなたのお金はきれいですか?』と聞く人はいないだろう」

「もし詐欺師が詐欺したお金でデパートで消費したら、デパートの経営者も指名手配されるのか?」

実際、財政的に相当厳しい中西部や東北地区の一部地方では、現地警察は「遠洋捕獲」をするにあたってのノルマを課されている。

高額取引を発見すれば、「電信詐欺や暗号通貨のマネーロンダリングに関係している」といった口実でどこかの公安によって追跡され、口座を凍結される。

近年、この現象はさらに激化しており、一部の大企業だけでなく、中小企業や個人経営の企業、個人であっても、その被害者は増える一方だ。

一部地方では銀行口座を凍結された「被害者」に代わって、公安当局と「交渉」することを専門とする機関も出てきているほどだ。口座解凍後、凍結された預金の一部は「大目に見てくれた」公安当局に指定する口座への送金を要求される。

 

中国公安のイメージ画像(PEDRO PARDO/AFP via Getty Images)

 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!