なぜ中国共産党は日本の着物を許さないのか

2024/11/05
更新: 2024/11/05

中国本土では、和服を着ることが他人からの罵倒、脅迫、中傷などの言葉による攻撃を招くだけでなく、公安当局に「騒乱罪」の罪名で連行され、拘留されることさえある。これは作り話ではなく、長年、存在する現実だ。

2024年10月14日、海南省三亜市のビーチで再び和服の「騒動」が起きた。和服を着て写真を撮っていた女性は、男性から大声で非難され、「愛国心がない」と言われた。

2024年10月1日には、湖北省襄陽市の街頭で和服を着た2人の女性がライブ配信をしていた際、通行人から「愛国心がない」と非難された。「和服を着て街を歩いていると、襲われる心配はないのですか?」と脅す人もおり、さらに公安が呼ばれ、彼女たちは連行された。

それだけでなく、8月27日に湖南省長沙市で和服を着て街を歩いていた際に同様に非難された動画がネット上で掘り起こされ、「転々と犯行を重ねる」と呼ばれた。

2024年4月27日にも、重慶市のある博物館の外で和服を着た2人の女性がダンスをし、動画を撮影していたところ、市民グループから言葉による攻撃を受けた。市民たちは彼女たちを取り囲み、「逃げるな、スパイだ、早く警察に通報しろ」と叫び、つかみあいも起きた。最終的に、2人の女性と撮影を手伝っていた1人の男性が公安に連行された。

2023年12月25日、貴州省貴陽市の中心部で和服を着て歩いていた女性が、別の女性から乱暴に非難され、「漢奸(売国奴)」と罵られ、その場で和服を脱ぐよう要求された。翌日、和服を着ていた女性はネット上で公開謝罪を強いられた。

2023年3月20日、南京市の鶏鳴寺景区で、男性観光客から白い和服を着た女性が景区の桜の木の下で写真を撮っているという苦情が寄せられた。この男性以外にも、多くの人が警察や12345(市民サービスホットライン)に通報した。あるネットユーザーがその女性を動画に撮り、「風紀を乱す」と非難した。

実際、中国国内で最も注目を集めたのは2022年8月10日に起きた同様の事件だ。ある女性が日本のアニメキャラクターのコスプレをしようと、蘇州市で最も有名な「日本街」で和服を着て写真を撮っていたところ、すぐに公安(ネットでは補助警察と伝えられている)に派出所に連行され、和服、靴下、下駄を没収された。数日後、彼女はネット上で公開謝罪を強いられた。

これは中国本土で和服を着たことで「騒乱罪」に問われた最初の事例のようだ。その後、「警察権力は恣意的であってはならず、騒乱罪を濫用してはならない」という警告の声が絶えない。

和服を着ることに規制

これらの声を封じるため、中国共産党(中共)は事件発生の翌年、2005年に初めて公布され17年間施行されてきた「治安管理処罰法」の大幅改正を提案した。

その第34条には、前例のない以下の条項が含まれていた—「公共の場所で、または他人に強制して公共の場所で、中華民族の精神を損なう、中華民族の感情を傷つける服装やシンボルを着用または身につけた」人は拘留または罰金に処される。

これに対し、清華大学法学院の労東燕教授は国家権力が市民個人の日常的な服装の領域に直接介入するとして過度な介入行為であるとし、反対している。

労教授は、条項の中にある「中華民族の精神を損なう、中華民族の感情を傷つける」という表現は極めて曖昧であり、処罰の範囲が恣意的に拡大され、権力の濫用現象が起こる可能性があると指摘した。

ただ和服が中共の目の上のたんこぶとなっているにもかかわらず、他の日本的要素は和服ほどの排斥や攻撃を受けていないようだ。

蘇州市の和服事件の後、労教授は次のように問いかけた。

「もしこのような行為が騒乱罪と認定されるなら、日本車を運転したり、日本製品を買ったり、日本の映画や小説を見たり、日本の音楽を聴いたり、日本に旅行したり、日本のアニメキャラクターの画像を使ったりすることで、中国全土でどれだけの人が法律違反の疑いがあることになるのか?」

2023年には、貴陽市での和服騒動が起きた後、あるネットユーザーは「なぜ外交部の前で抗議しないのか、日本との断交を強く要求すべきだ」と問いかけた。

反日を扇動

中共の操作と扇動の下で起こった「反日」行動もある。例えば、2005年と2012年に、中国本土で大規模な反日デモが発生した。削除された記事によると、2005年には、日本の教科書検定問題と国連安全保障理事会常任理事国入りの申請に対して、北京市、上海、広州、深セン市など多くの大都市で数千人から1万人以上が参加するデモが行われた。

上海では、デモ参加者が日本車や日本料理店を破壊する暴力行為も発生した。2012年の「尖閣諸島事件」後、これらの大都市では「規模、継続時間、暴力の程度がいずれも2005年を上回るデモや抗議活動」が再び発生した。日本車のオーナーがデモ参加者にU字ロックで頭蓋骨を殴打されるという極端な暴力事件もこの時に起きた。

しかし、「反日の民族主義感情の中に、中国社会の激しい矛盾に対する不満が混ざっている」ため、例えば「城管(都市管理官)3千人くれれば、必ず尖閣諸島を取り戻す。汚職官僚500人くれれば、小日本を必ず食いつぶす」というスローガンが掲げられ、抗議が「小都市や県級市にまで広がり始めた」ため、中共は「反日」が不注意で「反共」に変わることを恐れ、すぐに抗議活動を中止させ、同様の行動が中国本土で再び起こることを許さなくなった。

これは、「反日」が常に中共の操作と制御下にあったことを示している。つまり、政権の安定に影響を与えてはならず、そして権力者の経済に損害を与えてはならないということだ。蘇州市の「日本街」は、地方政府が蘇州に進出した日本企業のために特別に造ったものだということを知っておく必要がある。

削除された記事ではこう問いかけていた。「小東京」と呼ばれる通りでさえ和服を着ることができないなら、ここで営業している飲食店や蘇州全体の日本企業はまだ安心感を持てるだろうか? 興味深いことに、現実を見る限り、答えは肯定的なようだ。その理由は、おそらく次のデータと関係がある。

人々を騙す中国共産党

2021年までに、日本は蘇州市にとって3番目に大きな外資の源となり、蘇州の日本企業は2973社に達し、使用されている136.4億ドルの日本資本は江蘇省の53.9%を占めている。

中共にとって、これらの「外界に漏れない」多額の資金を安全に保つことは、自らの「財布」を守ることに等しいと言える。必要であれば、和服などの「日本的要素」を大々的に宣伝することさえ問題にしないだろう。

今年3月21日、江蘇省無錫市では盛大な「国際桜祭り週間および中日桜林友好林建設37周年記念イベント」を開催した。大会は桜の木の中で行われ、舞台上では和服を着た芸術家が楽器を演奏し、舞台下には日本の政界・財界人士がプログラムを観覧していた。

つまり、中共はどうやら和服が中国本土に現れることを禁止しているのではなく、一般の人々が個人的な理由で和服を着る権利を剥奪しようとしているようだ。まず、中共が煽動する民間の「反日」感情はまだ続けなければならない。結局のところ、日本は最初から中共が一般市民のために特別に作り出した敵だった。

中共が政権を奪取した後、様々な策略を通じて、共産特権階級以外の人々をすべて無産階級に変え、従わない者に対しては「暴力で打ちのめし、経済を破綻させ、名誉を地に落とし」抑え込んだ。

どれだけ多くの人々が胸に怒りと憎しみを抱えながらも、それを発散する場所がないかは想像に難くない。中共がなぜ数十年にわたって絶えず敵を作り出し続けているのか、その最も重要な理由は内部の問題や対立を外部に転嫁するためだ。

「日本を憎む」ことが1989年の「六四天安門事件」後に中共が煽動し始めた民族主義感情だとすれば、それ以前に毛沢東が歴代の暴力運動を通じて作り上げた「大衆が大衆と闘う」国家管理モデルは、中共によって今日まで継続して使用してきた。

長年にわたり、中国人は憎しみを植え付けられると同時に、恐怖も植え付けられてきた。社会で立脚点を得るために、多くの人々が頭を絞って権力の保護の傘の下に潜り込もうとしていた。

中共はこの点を見抜き、一部の人々に限定的な権力を与え、別の一部の人々を管理・抑圧している。日本を憎み、和服を好まない人々には、権力を与え、その後、和服を着る人々に自らの意見を押し付けた。彼らは不満を思うままに発散する自信を持つようになった。一般市民同士が対立関係に陥ると、対立を煽る中共は権力の高みでより安定した地位を得ることができる。

中国共産党が和服を容認しない理由

次に、中共が和服を容認しないのは、国民に中華伝統文化の奥深さを本当に理解させたくないからでもある。

ネット記事「日本文化の中にどれだけ中国人が忘れてしまったものがあるか」の中で、著者は「呉服と呼ぶ、江蘇省と浙江省一帯の漢服を改良した」日本の和服を含め、中国の春秋時代と漢代に由来する日本の下駄、足袋など、古代中国から来た一連の「日本的要素」を紹介している。

また何千年もの間、帝(みかど)の即位式から、奈良や京都をはじめとするいくつかの古代から続く都や建物、茶道、華道、書道、伝統的な歌や​​踊り、食べ物や飲み物に至るまで、中国から継承されてきたと述べている。

もしこの記事が中国本土で見られるようになれば、中国人の民族感情はそれほど極端になることもなく、むしろ中華伝統文化への憧れと誇りの感情が湧き上がるかもしれない。しかし残念なことに、これはまさに中共が最も警戒していることでもある。

共産主義は暴力を崇拝し、古代の帝王や将相や才子佳人は中共の宣伝の下で「封建の毒」となった。伝統文化で推奨される仁、義、礼、智、信や温、良、恭、倹、譲などの高貴な徳行は、すべて中共によってあらゆる手段で否定、批判、あるいはその真の意味を歪められきた。

中華五千年の道教が人々に教えたのは、どのように徳を修め善を行い、民を利し世を済うかであり、それによって人が天人合一の理想境地に達することである。一方、中共の目的は人々を絶えず道徳の底線を突破するよう誘惑し、欲望の深淵へと導き、最終的に人の生命の根本を破壊することだった。中華民族はもともと神を信じる民族だったが、中共は無神論と進化論で中国人を洗脳し、反神・仏教弾圧運動を何度も頂点に押し上げてきた。

このような中共が、本当に国民に日本文化の中の中華伝統要素を理解させることができるだろか? もしできるのなら、上記のネット記事も中国本土でアクセス不能にはならなかったはずだろう。中共は伝統文化がこれほど日本に生き生きと続いていることを妬み、それをどんなに歪め、抑圧し、抹殺しようとしても、中国人が機会に恵まれれば依然としてこの文化の存在と継続を感じ取れることを恐れている。

そのため、今日の中国人が日本人にならって古代中国に由来する伝統衣装を着ることで、中共は針のむしろに座るような不安を感じ、それを除去しようと躍起になっている。明らかに、強大な伝統文化の前で、中共は全く自信がもてないのだ。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
顔丹