知っておきたい「闇バイト」の実態 首謀者特定のカギは?

2024/11/19
更新: 2024/11/19

首都圏で多くの逮捕者が出ているものの、後を絶たない「闇バイト」。

SNS上で高額報酬を謳う闇バイトの募集が行われ、応募者はテレグラムでのやり取りに誘導される。その後、犯罪行為の指示や詳細がテレグラムを通じて伝えられ、実行役として利用されるケースが多発している。

闇バイトの勧誘や指示は、高い匿名性とセキュリティを特徴とし、メッセージの暗号化や自動削除機能を備えているメッセージアプリ「テレグラム」や「シグナル」が活用されるケースが多い。犯罪組織は連絡内容の追跡を困難にし、証拠を残さない手段として活用している。

闇バイトの募集はSNSだけでなく、大手求人サイトでも、「配送」「宅配」「ハンドキャリー」などの一見正当に見える職種名を使用して募集を行っていたことが分かっている。

闇バイトの問題は海外にも波及しており、外国人を巻き込む形で新たな展開を見せている。

北海道では、ベトナム国籍の男性らがサケの密漁に関与し、逮捕されました。容疑者の1人は、SNSでベトナム語の求人を見つけたと供述しており、闇バイトが外国人労働者をターゲットにしていることが明らかになっている。

また、「海外でかけ子 リゾートバイト感覚で」といった勧誘文句が使われるなど、海外での犯罪行為への参加を促す闇バイトの募集も確認されている。闇バイトの勧誘が国境を越えて行われていることから、国際的な犯罪ネットワークの存在が示唆されている。

バイト感覚で加担も 結局「捨て駒」

「ホワイト案件」と合法的な求人を装い、応募後に指示役らに身分証明書や家族の情報などを送ってしまうケースが少なくなく、自分や家族に危害が加えられるのを恐れ、抜け出せなくなるケースが後を絶たない。 

また、約束された報酬が支払われず、逮捕されるまで使い捨てにされる事例が報告されている。 

2024年5月、福岡県在住の17歳の女子高校生が特殊詐欺の「受け子」として逮捕されました。彼女は金融庁職員を装い、大阪府吹田市の80代女性宅を訪問し、キャッシュカードを盗み、現金50万円を騙し取った疑いで逮捕された。

女子高校生がスマートフォンから実際に応募した闇バイトの登録画面では、入力する項目には顔写真付きの身分証や親の携帯番号など、多くの個人情報が求められていた。警察によると、女子高校生は犯罪グループから報酬を貰えず、調べに対し「個人情報を取られて、親に迷惑かけたくなかった」と供述したという。

デジタルフォレンジックが首謀者特定のカギ?

闇バイト強盗事件の捜査において、最も重要な証拠は実行役のスマートフォンである。

スマホには指示役とのやり取りの記録が残されている可能性が高く、実行役が指示役に送信した顔写真や運転免許証のデータが残っている可能性がある。

警察当局は、これらの犯罪の解明において「デジタルフォレンジック」の技術を活用している。デジタルフォレンジックとは、電子機器からデータを抽出・解析し、犯罪の証拠を収集する技術。

押収したスマートフォンやパソコンから削除されたメッセージや通話履歴を復元し、犯行の指示内容や関係者の特定を行う。

具体的には、特殊なスクリーニングアプリでデータ復元、AIを使用してパスワード候補を抽出、アプリ内のメモリー自動削除機能のロックを解除するなどだ。

エンドツーエンドの暗号化やメッセージの自動消去機能を備えた「シグナル」や「テレグラム」でも、警察はこれらのアプリの使用履歴や端末内の他のデータを組み合わせることで、犯行の全容解明につながる可能性がある。

デジタルフォレンジックの技術は日々進化しており、犯罪の手口が高度化・複雑化する中で、その重要性は増している。

警察庁や与党が取り締まり

こうした事態を受け、警察庁は18日、都道府県警察の本部長らを集めた全国警察本部長会議を東京都内で開いた。露木康浩長官は、首都圏を中心に相次ぐ「闇バイト」による強盗事件について「国民の体感治安が著しく悪化している。極めて由々しき事態で、一刻も早く首謀者を逮捕しなければならない」と述べた。

警察庁はSNS上でも「闇バイト」への応募を促す投稿が増加し、これに応じた人々が犯罪に加担する事例が相次いでいることを受け、強い警告を発した。

警察庁は14日、X(旧ツイッター)上で「アルバイトではなく、紛れもなく犯罪行為です」「犯罪者グループは、約束の報酬を元から支払うつもりはなく、あなたは使い捨て要員です」と強い言葉で警告する文書を投稿した。

募集をかけている側に対しても、 「警察は必ず捕まえる。逃げることはできない」と強く警告した。

首都圏を中心に、いわゆる「闇バイト」による強盗事件が相次いでいる。8日、警察庁は闇バイトに応募した人に保護を呼びかける動画を公開した先月中旬から今月7日までの約3週間において、応募者やその家族を保護したケースが全国で46件に上ったと発表した。

闇バイトをめぐる問題について、与党も動きを見ている。

自民党は、SNSを通じた闇バイト強盗事件の多発を受け、党内の組織再編を行い、闇バイト対策を本格的に検討する方針を固めた。党政調の治安・テロ対策調査会を「治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会」に改組し、トップに高市早苗前経済安全保障担当相を充てる方向で調整を進めている。

高市氏が選ばれた理由は、経済安全保障担当相時代にサイバーセキュリティ対策を担当した経験があり、この問題に適任であると判断したため。

自民党はこれまでも、SNSを通じてつながり、実行役が入れ替わる「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」の実態解明や取り締まり強化を公約に掲げてきた。今回の組織再編はその具体化の一環とみられる。

求職者は注意!

「高額バイト」「即日入金」「書類を受け取るだけ」など、一見好条件に見える求人情報には注意が必要です。匿名性の高いアプリケーションでの連絡が求められる場合は、犯罪に関わる危険性が高いです。

怪しいと感じたら、一人で判断せずに家族や警察に相談することが重要です。

闇バイトに申し込んでしまった場合や家族の情報を取られて抜け出せないという人、情報を見つけた場合は以下の窓口に相談・通報することができます。

●警察相談ダイヤル:#9110

●最寄りの警察署

●都道府県警察本部の少年相談窓口:専門知識を持つ相談員や少年補導職員が、適切な助言や指導を行っている。

●インターネット・ホットラインセンター申し込んでしまったとか