オピニオン 主流メディアは堕落し、SNSが速報性と議論の場に

メディアが審判に直面している理由

2024/11/22
更新: 2024/11/23

論評

人民による人民のためのニュース

誰も知らなかった「jason@Bitcoin4Freedom」が、アメリカ選挙に関する社説をX(旧Twitter)に投稿したところ、その投稿はこれまでに1億1400万回以上閲覧された。このように、一般の人がエッセイや動画、ミームを作成し、それが大きな公共的影響を及ぼす例が多数存在する。2024年現在、一般市民がソーシャルメディアでニュースを生み出すことが、日常茶飯事となっており、イーロン・マスク氏はこれを「人民による人民のためのニュース」と表現した。

累積的な声

Xのコミュニケーション能力は驚異的だ。現在、政治家や著名人は発表を行う際、記者会見を開く必要がほとんどなく、ソーシャルメディア上で簡単に情報を発信している。

さらに、ソーシャルメディア、特にXは、アイデアの自由な交換と無制限の批判が可能な場として機能している。これは、ある種の「真実を見極める精神」によって、勝者が決まるライブ感あふれる競争だと言える。マスク氏はこのプロセスを「累積的な声」と呼んでいる。

一方で、従来のメディアはこうした自由かっ達な議論の場を失い、「デッドゾーン」と化している。たとえば、気候変動やジェンダー政策といった論争を呼ぶテーマでは、従来のメディアは限られた範囲内での議論にとどまり、「オーバートンの窓」に閉じ込められていることが多い。その結果、難しい質問は禁止され、あるいは完全に無視される傾向がある。

ポッドキャスト(インターネットを通じて音声や動画のコンテンツを配信するメディア形式)

既存のメディアのほとんどは、渇望や探究心を満たすことができないため、人々はより良い情報源を求めてソーシャルメディアに移行している。これが、ポッドキャスト司会者のジョー・ローガン氏やタッカー・カールソン氏が膨大な視聴者数を獲得している理由であり、近年ではXがイギリス、ドイツ、カナダでニュースアプリの1位になった理由でもある。現在では、アメリカ人の半数が、少なくとも一部のニュースをソーシャルメディアから得ている。その背景には、企業メディアが思索に欠けていることが一因とされている。

速報性

また、従来のメディアは、現在進行中または直近で発生した出来事を迅速に報道する能力を失っている。たとえば、トランプ氏の集会での銃撃事件やイランのイスラエル攻撃といった突発的な大事件では、X上で分刻みの速報が展開されたが、従来のメディアは数時間遅れで情報を提供するにとどまり、すでにX利用者が知っている内容を繰り返す形となった。この点で、Xは従来のメディアにとって「アマゾンがシアーズ(老舗百貨店)に取って代わる」ような存在だといえる。

従来メディアの衰退

こうした従来メディアの衰退は深刻だ。アメリカでは2005年以降、3千の新聞が廃刊し、広告収入は2005年の490億ドルから2022年には100億ドルにまで減少した。カナダでは、トロント・スターを発行するNordstarが2023年に多くの新聞を閉鎖し、600人以上を解雇した。また、CorusやGlobal Newsはスタッフの25%を削減し、株価も急落している。

一方、年間12億ドルの税金で運営されるカナダ放送協会(CBC)は、プライムタイム視聴者の2.1%しか獲得できていない。カナダ納税者連盟は「カナダ人の97.9%がCBCを見ていない」と皮肉交じりに述べている。CNNやCTVニュースのようなテレビネットワークも、67~71歳の視聴者層を巡って争っているが、この層の視聴者数は時間とともに減少している。

アメリカ人はニュースメディアを信頼していない

10月、ワシントン・ポスト紙は「アメリカ人はニュースメディアを信頼していない」と報じた。この内容は一部で衝撃的と受け取られたが、多くの人にとっては既知の事実だった。ギャラップの調査によれば、アメリカ人のうち新聞やテレビ、ラジオに「非常に信頼を置いている」と答えたのはわずか7%で、「全く信頼していない」と答えたのは39%に上った。

11月5日は、メディアにとって審判の日ともいえるだろう。ソーシャルメディア利用者によるミームの力(インターネットやSNSを通じて拡散される画像、動画、テキストなどのコンテンツが持つ影響力)で、多くの従来メディアは打ち負かされ、屈辱を味わった。マスク氏は「Xが勝利し、主流メディアが敗北した!」と投稿した。

「ハンプティ・ダンプティ 生卵が落ちて割れたら戻せない」の物語のように、一度崩壊したものは元に戻せない。これらの変化は、情報の受け手と送り手にとって新たな時代の幕開けを意味している。在来の型にはまっていては、ニュースは伝わらないということだ。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
サスカチュワン州レジャイナの弁護士です