2024年度(2024年4月~2025年3月)の喫茶店の倒産が急増している。帝国データバンクの調査によると、2月までに倒産件数は66件に上り、年間累計で過去最多を更新する勢いだ。
統計開始の2000年4月から2025年2月までのデータを基に、負債1千万円以上の法的整理を対象としたこの件数は、前年度(通年68件)を上回るペースで推移。2018年度の73件を超える可能性も指摘されている。倒産した店舗の8割以上が、資本金1千万円未満の中小零細店で、小規模経営の厳しさが浮き彫りとなった。
需要回復もコスト高で経営難が続く
昨年、カフェ需要は徐々に回復傾向にある。家計調査に基づく1世帯(2人以上)のコーヒー購入杯数は、2024年度で月平均1.8杯となり、コロナ禍前の水準に戻った。しかし、こうした明るい兆しがある一方で、喫茶店の倒産が相次いでいる背景に、深刻な課題がある。最も大きな原因は、コストの上昇だ。コーヒー豆、人件費、都市部のテナント料などのコストが軒並み上昇し、経営環境が悪化の一途をたどっている。
特にコーヒー豆の価格高騰が、大きな打撃となっていた。国内で広く流通するアラビカ種の価格は、円安を背景に2024年度平均で1キロ900円を超え、前年の1.4倍、2020年度比では2.5倍に跳ね上がった。
さらに、電気・ガス代やアルバイトの人件費、都市部でのテナント料の上昇も重なり、喫茶店のコスト負担はかつてないほど厳しい状況に陥っていた。
価格転嫁が進まず、競争も激化
経営をさらに圧迫しているのは、コスト増を販売価格に転嫁しづらいという現実だ。喫茶店は、客単価が低く、回転率も高いとは言えない業態である上、安価なコンビニコーヒーや、大型チェーンの積極的な出店攻勢、近隣カフェとの競争が激しさを増している。物価高で消費者の節約志向が強まる中、大幅な値上げに踏み切れず、利益確保が困難になっていた。特に中小零細店では、この状況に耐えきれず倒産に至るケースが増えている。
2023年度の喫茶店の損益状況を見ると、4割が赤字に陥り、「減益」を含む業績悪化の割合は、7割に達した。これはコロナの2020年度に次ぐ高水準で、業界の厳しさが浮き彫りとなった。
差別化が生き残りの鍵に
一方で、すべての喫茶店が、苦境に立たされているわけではない。高級コーヒーやスペシャルティコーヒーの需要を取り込み、成長する店舗も見られる。ブランド力を持つ店やオンライン販売を活用するケースでは、一定の売上を維持している例もある。
調査では、「こだわりの1杯」を打ち出し、他店やチェーンとの差別化をいかに図るかが、今後の生き残りの鍵になると指摘されている。
今後の展望
喫茶店業界は、需要回復という追い風を受けつつも、コスト高と競争激化という逆風に直面していて、特に小規模の店舗にとって、価格転嫁の難しさは深刻な課題だ。
一方、独自性や品質で勝負する店舗が光を放つ可能性もある。今後は、経営戦略の違いによって、業界内での明暗がより一層、はっきりと分かれると予想される。
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