トランプ大統領は6日、ホワイトハウスで記者団に対し、日米安全保障条約について「アメリカは日本を守らなければならないが、日本はアメリカを防衛する義務はない」と述べ、不満を改めて示した。
トランプ大統領は北大西洋条約機構(NATO)の同盟国防衛に関する政策方針を問われた際、「日本とは非常に興味深い取り決めがある」と前置きし、「私は日本を愛しているし、アメリカは日本と素晴らしい関係を持っているが、いかなる状況下でも日本はアメリカを守る義務がない」と不平を漏らした。
トランプ大統領は、NATOの同盟国に対しても、防衛費を十分に負担しないならば「守らない」と警告しており、同盟国の防衛費負担に対する不満を一貫して表明している。今回の日本への発言が日本に対して防衛費のさらなる増加や米国製防衛装備品の調達拡大を迫る圧力となる可能性が指摘されている。
さらにトランプ大統領は、「誰がこのような取り決めをしたのか」と疑問を呈した。
1951年、アメリカと日本は旧安保条約を締結した。この条約により、アメリカは日本国内に軍事基地を維持し、日本の防衛を担うこととなった。
その後、1976年に三木武夫内閣の閣議決定で防衛費をGNP(国民総生産)の1%枠内に収める「GNP1%枠」を定めた。その後、防衛費は現実には切迫した安全保障環境の悪化がなかったことと、予算的な問題でGDPの1%を超えたことはほとんどなかったが、2022年11月、北朝鮮のミサイル実験や中国共産党の尖閣諸島への度重なる領海侵犯など厳しい安全保障環境を踏まえ、岸田文雄首相(当時)が2027年度に防衛費を2%にすることを目指すと発言した。
トランプ米大統領が国防総省の政策担当次官に指名したエルブリッジ・コルビー元国防副次官補はGDP2%の防衛費について、「中国や北朝鮮に直接脅威を受けている日本が同比率を2%にとどめるのは道理に合わない」とし「明らかに不十分」と主張。「日本はできる限り早期に防衛費を国内総生産(GDP)比で3%以上に引き上げるべきだ」と述べた。
このコルビー元国防副次官補の発言に対し、石破茂首相は5日、参議院予算委員会で「政府として必要があれば予算を計上するということで、米国にかぎらず、他国に言われて決定するものではない」と述べ、「日本の防衛費は日本が決めるものだ」と強調した。
林官房長官も5日の記者会見で、「金額やGDP比の割合ありきではなく大事なのは防衛力の中身だ」と述べている。
トランプ大統領は前回の政権時にも、この条約が「不公平」であるという認識を示し、日本に防衛費の増額を迫った経緯がある。
トランプ第一次政権時、当時の安倍晋三首相は、安全保障環境が異なり一概に比較できないとしつつ、「駐留経費の日本の負担割合は主要同盟国中で最も高い」ことに言及し、現在の駐留経費は適切に日米で分担されているとの認識を示していた。
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