米連邦地裁は3月6日、トランプ政権がアメリカ国際開発庁(USAID)の契約社員を解雇できるとの判断を下した。
カール・ニコルズ連邦地裁判事は、原告側が「解雇が回復不能な損害にあたる」との主張を証明できなかったと指摘。また、この訴訟は「契約上の争い」にあたり、連邦裁判所には審理する権限がない可能性が高いと述べた。
2月18日、パーソナル・サービス・コントラクター協会(PSC)はトランプ政権を提訴。政府が議会の承認を得ずにUSAIDの海外援助および国際開発資金を凍結したのは権限を逸脱していると主張した。
政府側は、USAIDの契約や助成金の90%以上を取り消す計画を発表している。
PSCは、契約の打ち切りにより、海外のインフラに深刻な影響が出ている。電気や医療サービスを失った契約社員もいると指摘し、またアメリカ政府が契約費用を支払わなくなったため、一部の職員は住居の退去を迫られていると訴えた。
政権側は、USAIDの食糧・医薬品支援プログラムには例外措置を適用すると発表しているが、原告側は「十分な説明や対応が行われず、職員の削減によって支援契約や資金配分業務が機能不全に陥っている」と主張している。
「元に戻すのは不可能」原告側弁護士が訴え
PSC側の弁護士キャロリン・シャピロ氏は、3月5日の審理で「この損害は後から補償金を支払ったり、USAIDを再編成したりすることで回復できるものではない」と述べた。
さらに、「一度壊れたものを元に戻すのは不可能だ」ということを例えて、「1千の機関を一斉に解体し、その後『やっぱり元に戻そう』と言っても、それは不可能だ」と訴えた。
政権側「USAIDの非効率を見直すのは正当な権限」
一方、政権側は裁判資料の中で、1月30日にUSAIDの長官代行に任命されたマルコ・ルビオ氏には、USAIDの資金の優先順位を見直す権限があると主張。その調査結果から、「深刻な非効率が判明した」として、契約解除の正当性を示した。
また、政権側は、契約に関する争いは連邦裁判所ではなく「民間契約審査委員会(CBCA)」で審理されるべきだと反論している。
トランプ大統領、就任初日に90日間の海外援助停止を命令
この訴訟は、トランプ大統領が就任初日に、対外援助を90日間一時停止し、プログラムがアメリカの利益に合致しているかどうかを見直すことを認めて大統領令に署名した。その後に起きている。
トランプ氏はまた、USAIDの解体や国務省との統合の可能性にも言及しており、共和党議員の多くも「USAIDの支援プログラムの多くは無駄であり、進歩的な政治アジェンダを推進している」と批判している。
一方、民主党議員は、USAIDが国務省の傘下に入ることで独立性を失うことを懸念。USAIDは国家安全保障上の重要機関であり、議会の承認なしに解体する権限はトランプ大統領にはないと主張している。
USAID1600人を解雇 海外職員に帰国命令
政権側は2月23日、「重要な任務を担う職員、主要幹部、特別指定プログラム担当者」を除くUSAID職員を全員、休職とした。
また、海外派遣されている職員には帰国を命令し、アメリカ内の職員約1600人を解雇した。
PSCの訴訟は、 USAID改革の措置をめぐってトランプ政権に現在異議を唱えている4件の訴訟のうちの1つである。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。