最近、アメリカの株式市場は連続して下落し、3月11日以降数日間にわたり、下がり続けている。現在のダウ工業平均株価は、トランプ氏が政権に就く前の昨年12月の最高値と比較して約10%の下落を記録している。
ナスダック指数は約15%下落し、S&P500指数も比較的良好ながら8〜9%の下げを見せている。多くの経済専門家は、アメリカ経済が非常に危険な状態にあり、特に連邦政府の債務比率が高すぎることやトランプ大統領の関税措置が経済に深刻な影響を及ぼしていると警告している。
一方で、「左派系機関が集団でトランプ政権をボイコットしている」という陰謀論的な見解も存在する。また、「トランプ氏が意図的に経済を低迷させ、FRBに利下げを迫っている」との分析もある。実際の状況について専門家の見解を探るべきである。
左派系機関や金融グループがトランプ政権への対抗行動の可能性
テレビプロデューサー李軍氏は、新唐人テレビの『菁英論壇』番組で次のように語った。今年2月以降、株式市場は芳しくなく、全体的に下降傾向が顕著である。特に3月11日には、S&P500が1日で2.7%、ナスダックが4%、ダウが2%下落し、2025年に入ってから最も厳しい日となった。
現在、トランプ氏は株式市場の下落を主にバイデン政権による悪化した経済政策の影響と指摘し、自らの減税政策や市場規制緩和、関税政策によって将来的にはアメリカ経済が回復すると強調している。
李軍氏によれば、アメリカ財務長官ベッセント氏は現在の経済政策の転換期を「薬物依存からの脱却の解毒過程」に例えている。つまり、大規模な政府支出に依存した経済から民間主導の成長モデルへ移行する際には、一時的な調整や痛みが伴う可能性があるということである。特にバイデン政権下では、大統領選挙前まで巨額の公共支出によって成長を実現したため、市場や経済が政府資金への依存症を示してしまった。
サウスカロライナ大学エイケン校商学部教授謝田氏は『菁英論壇』で次のように述べた。今後の経済成長や景気後退、金利調整など先行き不透明な状況ではウォール街が最も懸念する点は不確実性である。また関税措置が実施されるかどうか、その影響や外国政府による報復措置もウォール街の見通しに影響を与えるため、市場参加者が懸念する主な要素としてこれらが挙げられる。
ブラックロックグループなど左派系機関が支配する財団やソロス関連金融グループによる集団的な空売り行動が問題となっている。このことから今回の市場変動には経済的要因だけでなく政治的要素も絡んでおり、トランプ政権への示威行動とみなされる。
例えばビル・ゲイツ氏はイーロン・マスク氏の企業を長期間空売りしており、マスク氏から「なぜ自分を空売りするのか」と直接問い詰められたこともある。一般的にはゲイツ氏のような億万長者で慈善活動家が市場操作を行うことは考えにくい。
しかし彼自身もそのような行動をとっている。このため今回ウォール街で発生した変動は左派系機関や金融グループによる連携した抵抗や空売り行動によるものと推測される。
謝田氏は「ウォール街が本当に心配しているとは思わない」と述べた。政治的要素を除けば特段心配する必要はなく、市場が7%、9%、10%程度上下することは大した問題ではない。最近アメリカ株式市場には過熱感が見られたため、一度調整されることはむしろ好ましいことである。
11日に大幅下落した後、12日には回復したため深刻な問題とは言えない。本当に重要なのは連邦政府債務問題と関税問題であり、今後の展開こそアメリカ経済への影響を左右する鍵となる。
アメリカ経済が直面する最大の危機
ベテランジャーナリスト郭君氏は『菁英論壇』で、ウォールストリートジャーナルが報じた内容を引用し、ビジネス界がトランプ政権に明確な方向性を求めていると指摘した。ビジネス界が懸念しているのは貿易戦争や関税戦争そのものではなく、それに伴う不確実性である。
トランプ氏の関税政策は変動が激しく、突然の発動や延期が続き、これがビジネス界や投資界にとって最大の課題となっている。トランプ政権内でも意見が分かれており、商務長官は数か月から半年後には政策が安定し、経済も再び軌道に乗ると述べる一方、財務長官は経済回復には2年かかるとしている。このため、ビジネス界は戸惑いを感じている。トランプ氏は数日前、大企業CEOとの会議に出席し、人々を安心させようと努めた。
郭君氏はアメリカ経済が直面する最大の危機として、連邦政府が破産の瀬戸際にあることを警告している。
昨年の連邦政府赤字は1兆8千億ドルに達し、これはカナダの年間GDPに匹敵し、世界第8位の規模である。現在のアメリカ債総額は35兆ドルで、その利払いだけで年間1兆1千億ドルに上る。つまり、連邦政府総支出約7兆ドルのうち1兆ドル以上が利息に消えているのである。
昨年の連邦政府収入は4兆9千億ドルであり、赤字は1兆8千億ドルであった。このため、政府赤字率という指標が経済において極めて重要となる。この指標は政府赤字がGDP全体に占める割合を示し、昨年のアメリカでは6.4%であった。
多くの経済学者は、この赤字率が7.5%を超えることを危険ライン(レッドライン)と見なし、それを超えるとアメリカ経済は下降スパイラルに陥り、大不況に突入する恐れがあると警告している。
2024年の数字として言及されているものは実際には2023会計年度(前年10月から翌年9月まで)を指す。最新データによれば今回の会計年度最初の4か月(昨年10月から今年1月まで)で米連邦政府赤字は8400億ドルに達した。このペースが続けば年間赤字は2兆5千億ドルを超え、赤字率は7.5%のレッドラインを越え、8%に達する可能性もある。
トランプ氏は企業や個人への減税で経済を刺激しつつ、増大する連邦債務に対応するため債務返済や利払いを進める必要がある。そのため関税を課したり、マスク氏などによる政府支出監査を通じて支出削減を目指している。
この背景から、一部では今回の株価下落がトランプ氏と関連付けられている。株価下落はFRBへの圧力を高め、それが金利引き下げにつながる可能性がある。金利水準は連邦債務コストに直接影響するものである。
製造業のアメリカ本土への回帰
謝田氏は『菁英論壇』で次のように述べる。多くの人が誤解しているが、ペンシルベニア大学ウォートン校の金融教授ジェレミー・シーゲル氏の発言は関税戦争に反対するものではない。実際、彼は関税そのものには反対しておらず、関税戦争が必ずしもアメリカ経済を悪化させるとは限らないと述べる。
彼の見解によれば、現在ロシアとウクライナの間で停戦協定は成立しておらず、アメリカとカナダの間の関税が変動し、一時停止や延期が続いている。このような不確実性がアメリカ経済に問題を引き起こし、経済の不安定さを生んでいる。
謝田氏によれば、各国の関税戦争への反応は様々である。例えばカナダやメキシコは、口では報復措置やアメリカへの電力供給停止を示唆するかもしれないが、最終的には合意に至るだろう。西側自由社会としてこれらの国々は冷静に判断し、一時的な感情の高まりを経た後には必ず合意に達する、合意せざるを得ない。
本当の関税戦争は中国共産党(中共)を対象としており、関税問題だけでなくフェンタニルやウイルス、地政学的な課題も絡んでいる。
謝田氏はさらに、アメリカは元々製造業大国であったが、二度の世界大戦後にグローバリズムや国際化政策を進め、「マーシャルプラン」でヨーロッパを支援した結果、多くの製造業がヨーロッパ、日本や、アジア四小龍(韓国、台湾、シンガポール、香港)を経て中国へと移動したと述べる。したがって製造業は次の段階としてさらに別の地域へと移動する可能性がある。
現在考えられる移動先は東南アジアとアメリカ国内への回帰の二つである。今になってアメリカではアルミや鉄鋼の生産がほとんど行われず、中国製のアルミ合金やブラジル製の鋼材に依存している。しかしトランプ政権はこの問題を認識し、中国との将来的な紛争に備えて必要な重要物資はすべて国内で生産すべきだと考える。また台湾製の半導体チップについても同様で、この流れは今まさに進行中である。
郭君氏は『菁英論壇』でトランプ氏は実用主義者であり功利主義者とも言えると述べている。彼は各国がアメリカから利益を奪っていると考え、この状況を終わらせたいと願っている。その目標は明確であり、やり方も直接的かつ単純、それが関税戦争である。この戦争によって貿易バランスを取ることと製造業を国内に戻すことの二つの目的を達成しようとしている。
トランプ氏は企業CEOとの会談で、多くの製造業者がメキシコやカナダに工場を設立し、アメリカ国内には設立していない現状を指摘する。これらの企業は実質的に中国企業であり、中国人オーナーが関与している。彼らがメキシコやカナダに工場を建設する理由はアメリカ市場への輸出拡大と市場占有を狙っているからであり、トランプ氏はこの状況を容認できない。
しかし今日までアメリカがこの状況に至った理由は、生産コストだけでは説明できない側面もある。生産コストは関税引き上げなどで解決可能だが、それ以外にも多くの制約要因が存在する。例えば政府の規制や地方・州政府による様々な制限、土地利用計画、公害問題、労働者問題などが製造業者のアメリカ国内進出を妨げてきたのである。
郭君氏によれば製造業の回帰は単なる税制措置では解決できない課題である。しかしトランプ政権の政策方向は正しいと見なされている。重要なのはこの大きな変化にどれほどの時間がかかるか、そしてトランプ氏が任期内に十分な時間を確保できるかどうかである。
アメリカは着実に良い方向へと進んでいる
謝田氏は『菁英論壇』で次のように述べた。「アメリカ経済の見通しは非常に明るく、極めて良好である。インフレや連邦政府の債務比率の高さ、関税問題などの課題はあるが、それでもアメリカは良い方向に発展している」
現在、マスク氏のDOGE政府効率化部門は、約1兆5千億ドル削減しており、最終的な目標は2兆ドルである。各部門での人員削減によって政府の規模が縮小し、赤字も減少している。赤字が減れば、アメリカの債務はこれ以上増加せず、徐々に減少に向かう。
もう一つの焦点は関税問題である。トランプ氏の現在の関税措置はカナダやメキシコに対して軽い圧力に過ぎず、脅しに近いものであった。そのため、両国は従わざるを得なかった。本格的な戦いを挑んだのは中国に対してである。特に、4月2日から始まる真の相互対等な関税問題が重要であり、この問題も解決に向かう。
さらに重要な点として、マスク氏らが節約した1兆5千億ドル(仮に1兆ドルとしても)を考えるべきである。アメリカには3億人以上の人口と1億世帯以上の家庭がある。この資金を腐敗や不正な官僚機構から取り戻し、国民に還元すれば強い支持を得て多くの問題が解決する。
例えば、この2兆ドルのうち1兆ドルを税金還付に充てれば、各家庭は1万ドルを受け取ることになる。仮に5千億ドルの場合でも、一家庭あたり5千ドルである。一般家庭にとって5千ドルや1万ドルの増加はすぐに消費につながり、この資金は消費市場に流入し、即座にGDPを押し上げる効果をもたらす。
現在の状況を踏まえると、インフレ率はすでに低下し始めており、金利も下がりつつある。今後さらにインフレが進めば、FRB議長パウエル氏も利下げを拒む理由がなくなる。米連邦政府の支出削減と機構の簡素化が進む中で消費者の手元資金が増え、インフレ率と金利が低下すれば経済は確実に回復する。したがって、経済状況は近い将来大きく改善される。
謝田氏は「我々は今非常に重要な過渡期にあり、多くの問題はバイデン政権時代から引き継がれたものである。例えば卵価格の高騰はバイデン政権下で数百万羽の鶏が殺処分されたことに起因している。このような問題は解決するまでに数か月かかる。しかし状況が安定すればアメリカ経済が成長しない理由はない」と述べた。
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