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トランプ政権の送還命令に歯止め 米控訴裁が政権の申し立て却下

2025/03/27
更新: 2025/03/27

米コロンビア特別区連邦控訴裁判所は、トランプ大統領が発出した強制送還命令の差し止めを一時的に解除しようとする政権側の申し立てを却下した。問題となっているのは、敵性外国人法(Alien Enemies Act)を根拠に、ベネズエラのギャングに関与していると疑われる人々の国外退去を可能にする大統領令である。

控訴裁の3人の裁判官のうち、カレン・ヘンダーソン判事とパトリシア・ミレット判事が差し止め継続を支持。ジャスティン・ウォーカー判事はこれに反対し、政権寄りの立場を示した。

ミレット判事は、「裁判所がこの段階で介入すべき法的根拠はなく、原告たちをすぐに送還すれば、法的救済を受ける機会そのものが失われかねない」と述べ、政府の主張に強い懸念を示した。また、「政府は憲法に定められた適正手続きの原則を軽視している」と指摘した。

一方、ウォーカー判事は反対意見の中で、「政権は国家安全保障をめぐる外交交渉を進めている最中であり、下級審の命令がこれに深刻な影響を及ぼす恐れがある」と主張した。

口頭弁論では、司法省の弁護士が「今回の差し止め命令は、大統領の外交・安全保障上の権限に対する前例のない干渉である」と訴えた。政権側は、原告らが訴えるべき法的手段として「人身保護請求(ハビアス・コーパス)」が適切であるとも主張したが、ミレット判事はこれに異を唱えた。

ヘンダーソン判事は、「政府が被る不利益は、送還される原告側の不利益に比べて軽い」とし、差し止めの必要性を認めたうえで、「敵性外国人法が司法審査の対象外とする政府の主張は誤っている」と述べた。

今回の訴訟は、政権による強制送還措置の対象とされている5人の外国人が起こしたもので、一部の原告は「ギャングとは無関係で、むしろ被害者だ」と主張している。今月、連邦地裁はこの訴訟を集団訴訟と認定し、対象を同様の立場にあるすべての被収容者に拡大している。

トランプ大統領は、連邦裁判所による広範な差し止め命令に対し、以前から強く反発しており、有利な判決を求めて裁判地を選ぶ「ジャッジ・ショッピング」への批判も繰り返している。

一方、ミレット判事は「人身保護請求は、拘束の法的正当性を争う場合に用いる手続きであり、国にとどまる権利や行政手続による審査を求める場合には適切ではない」とし、原告側の訴訟形式に問題はないとする立場を示した。

また、原告がワシントンD.C.で提訴したことについても、「ワシントンD.C.は、被告であるアメリカ政府の機関や職員が所在する司法管轄区域である」と述べ、訴訟地の選定に正当な理由があると結論づけた。

ワシントン特派員 サム・ドーマンは、エポックタイムズの裁判と政治を担当するワシントン特派員です。X で @EpochofDorman をフォローできます。