令和7年(2025年)3月30日、中谷元防衛大臣とピート・ヘグセス米国防長官は防衛省において初めての対面会談を行い、厳しさを増す安全保障環境の中で日米同盟の抑止力・対処力強化を「切迫感を持って」進めていくことで一致した。会談は約85分間行われ、中国の軍事活動を念頭に置いた防衛協力の強化や自衛隊と米軍の指揮統制向上などについて議論を深めた。

会談で両閣僚は、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて緊密に協力することを確認した。また、アメリカによる核を含むあらゆる能力を用いた日本防衛へのコミットメントが強調された。これは防衛省が公表した会談概要に記載されている。
「それぞれの防衛力の強化、そして日米同盟の抑止力・対処力の取り組みについて切迫感を持って進めていくという決意を確認をいたしました」と中谷大臣は会談後の記者会見で述べた。一方、ヘグセス長官は「私が明確に理解したことは、日米同盟がインド太平洋の安定の礎(いしずえ)ということです」と日米関係の重要性を強調した。
両閣僚は地域情勢についても率直な意見交換を行った。特に中国の東シナ海や南シナ海における一方的な現状変更の試みに反対する立場を共有し、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。
具体的な協力強化策として、両国は自衛隊の統合作戦司令部の創設と在日米軍の統合軍司令部へのアップグレード開始を歓迎した。ヘグセス長官は在日米軍について「人員を増やし戦う司令部として再編する」と表明した。この点について、複数の米メディアがトランプ政権が在日米軍強化計画の中止を検討していると報じていたが、今回の会談でその継続が確認された形となる。
防衛装備・技術協力では、中距離空対空ミサイル(AMRAAM)の共同生産の早期開始で一致した。中谷大臣は対空ミサイル「SM6」も共同生産の対象に含めるよう打診した。
会談では防衛費の負担増も議題となった。トランプ政権内には日本に防衛費をGDP比3%まで早期に増額するよう求める声があるが、ヘグセス長官は「会談で具体的な防衛費の水準を話していない」と明かした。中谷大臣は「特定の数字は出ていない。大切なのは防衛力の中身だとの説明に理解を得られた」と強調した。一方でヘグセス長官は「日本は我々の同盟においてどのような能力が必要なのかを正しく判断すると確信している。日本は同盟国として模範的な国だが、もっとやらなければいけないと日米ともに認識している」と述べ、防衛力強化の必要性に言及した。

両閣僚は「自由で開かれたインド太平洋」実現のため、日米を中核として、豪州、韓国、フィリピンをはじめとする地域パートナーとの協力を進展させることでも一致した。
会談では普天間飛行場の返還を含む在日米軍再編の着実な実施が重要であることも確認され、在日米軍による事件・事故の再発防止のための協力も進めることで合意した。
なお、ヘグセス長官は第2次トランプ政権の主要閣僚で初めて来日した。中谷大臣とヘグセス長官は会談前日の29日には、石破茂首相とともに硫黄島での日米合同慰霊式に出席していた。
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