ミャンマーで28日発生したマグニチュード7.7の大地震により、タイの首都バンコクで中国企業が建設中だった33階建てのビルが崩壊し、今のところ少なくとも11人の死亡が確認され、数十人が下敷きになっている。
震源地から約1千キロも離れていたにもかかわらず倒壊したことや、それがバンコクで唯一崩壊したビルとなったことなどから、中国企業による手抜き工事への疑念が強まっている。

事故後、タイ当局は調査委員会を設置し、タイのペートンターン首相は「全建築物の安全性を徹底調査する」と声明を発表。「バンコクではこのビルだけが倒壊した、他の建物に深刻な被害はない」とペートンターン首相は指摘し、倒壊したビルの施工に問題があった可能性を示唆している。

倒壊したビルは建設中(屋上部分はすでに完成)のタイ国家審計署の新庁舎で、中国国有企業「中国鉄路工程総公司(CREC)」傘下の「中鉄十局」が施工を担当。同社は当初、「無梁楼板」という特殊な構造技術を誇示していたが、地震の揺れに耐えられず崩壊した。タイ・メディアによると、建設費は約6300万ドル(約95億円)に上る。

不審な動き、中国人4人が書類持ち出し未遂で逮捕
ビルの崩壊現場はバンコク市政府によって「災害管理区域」に指定され、許可なく立ち入ることは禁じられた。しかし29日、4人の中国人男性が無断で侵入し、32件の書類を持ち出そうとしたところを逮捕された。
現地警察によると、逮捕された中国人らは現場に関係する建設会社の従業員であり、押収された書類には建築請負契約書、設計図面、施工指示書などが含まれていた。

中国の「おから工事」、海外でも人命を脅かす
今回の崩壊事故は、中国国内で頻発している「おから工事(手抜き施工)」が海外にも波及していることを浮き彫りにした。中国では、コスト削減と工期短縮を優先し、安全基準を無視した工事が横行。結果として短期間で建物が崩壊し、多くの市民が犠牲となっている。
今回のタイのビル崩壊の「事件」は、中国企業のずさんな施工と隠蔽体質が国際的な批判を浴びるきっかけとなりそうだ。

ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。